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琥珀の才能Blooming!  作者: 仮名無し
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第1話 こはく、車で学校にいく

 ……やばい。

 新学期早々始業式に遅刻してしまう。



「お母さん起きてよ。学校に遅刻しちゃう」


「え?今日から新学期?!それなら何で昨日早く寝なかったのよ!」


「いいからとにかく急いで車で送ってよ」



 このマンションにいる公立学区に通う庶民の子供らと違って、あたしは私立だから小学校までちょっと遠い。

 ちゃんと早起きすればバスに間に合うのだが、あたしは朝にめっぽう弱い人間なのだ。

 お母さんも朝は苦手でご機嫌斜めだ。ちなみにお父さんは大体お昼ぐらいまで寝ているらしい。



「お母さんはタクシーの運転手じゃないのっ。今日から3年生なんだから、もうちょっとしっかりしてよね!」

 

 そう怒ってはいるものの、車で送ってくれるのはいつものことだ。



 ウチの学校は車通学禁止だ。

 学校周辺に車がたくさん停まって近隣市民から苦情が来るのを防止している。

 だからウチらは車で来たことが学校にバレないように、学校から200メートル手前ぐらいの裏道で降ろしてもらうことにしている。




 そろそろいつもの裏道に差し掛かろうとしたとき、お母さんが顔をしかめた。


「あれあのコ、賤田せんだクンじゃない」


 賤田は2年の時同じクラスだったヤツで、学校のすぐ近くの団地に住んでいる。


「あぁほんとだ」


「賤田クンも気の毒ね、こんな団地に住んで」



 賤田自体はフツーのヤツなのだが、賤田の母親はちょっとヤバい。

 アコムとかアイフルでよくお金を借りていて、この前よその親にまでお金を借りようとして問題になった。



「こんな団地に住んでおいてよくウチの学校に来れるわねぇ。大人しく学区に通っておけばいいのに見栄っ張りよ」


「でもコイツのほうが学校に近いし、いっそのことあたしもここに住みたいわ」


「嫌よ!こんな団地。ウチはマンションなの!団地より格が上なの!」


 お母さんは貧乏人に強気だ。



「でも悔しいわ…ウチも賃貸だから。お父さんの稼ぎが悪いから分譲とか一戸建てには住めないの」


 ウチは有名高級住宅街にある3LDKの超老朽賃貸物件に住んでいる。

 お母さんはよその親から「どこに住んでいるの?」と聞かれると意気揚々に地名は答えるけれど、頑なに学校の人を家に招こうとしない。



「この前だって、猪八戒がアンタとろくに仲も良くないのにわざわざ家に呼んで、新築の一戸建てを見せびらかしてきたじゃない。賃貸だと恥かくのよ」


 猪八戒は2年生の時に同じクラスだった横内という女子のことである。

 小太りでブサイクだから、あたし達は家の中限定で彼女を猪八戒と呼んでいる。

 猪八戒の父親は公認会計士でウチよりずっと金持ちだ。



「あーあ。あんな貧乏な男と結婚したのが間違いだったわ。もともとワタシは京都の良い家柄で、農民の家のお父さんとは違うの。すっごくモテモテで男も選びたい放題だったのに…。あんな男にまんまと引っ掛かって大変よ」


 どうやらお母さんはゴルフの会員権を持っているお父さんのことをお金持ちだと勘違いしてうっかり結婚してしまったらしい。

 でもホントは全然お金持ちじゃなくて、結婚式も安くてダサい会場で済まされてしまったことをお母さんは未だにガッカリしている。



「なら離婚すればいいじゃないっ」


「無理よ。アンタは手間が掛かるんだから、働けないじゃない。結婚する時にあの家とは縁を切ってもうジジババもいないし、他にアンタの面倒見る人なんていないの!」


 お母さん曰く、「ジジババ」がいる家庭では「ジジババ」に子供の面倒を押しつけてランチやネイルに行けるけど、ウチは父方にも母方にも利用価値のある「ジジババ」がいないのでお母さんは大変苦労しているらしい。



「あ、ここで降りるわ。行ってきます」


「今日からクラス替わるんでしょ。新しい奴らに舐められないように頑張るのよ!ファイトこはく!」


「全員蹴散らすから任せてよっ!」



 タバコ臭い車内から解放されたあたしは、花粉まみれの春風で肺をしっかり換気しておく。

今日は雲一つない。桜も可愛らしく素敵な春だ。


毎日16時10分頃投稿予定です

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