第3話
アメリアに与えられた部屋は旦那様の部屋から最も遠い場所に設けられている。
普通なら部屋の外に見張の使用人をつけるべきなのだろうが、アメリアの部屋にはそんな者はいない。今回は逆に好都合だった。
目指すは旦那様の部屋の一階上の部屋。
巡回の使用人の行動パターンもよめているため部屋にたどり着くのは容易かった。
アメリアはベランダから下の階の旦那様の部屋に飛び移る。ドレスの動きにくさとこの体の筋力のなさに驚きながらも旦那様の部屋のベランダへと音もなく着地した。
午前中の間に窓の鍵を開けておいたので少し開け、中の声を息を殺して盗み聞いた。旦那様はこの時間奥様と晩酌を楽しんでいる。
事前に使用人が用意するワインを高級酒にすり替えておいたので今日はいつもより饒舌になっているはずだ。
アメリアの思惑通り、なにやら奥様との会話がいつもより弾んでいる。
「どうやら今日もマリーがあれにお仕置きしてあげたそうですわよ」
あれとはアメリアの事なのだろう。
(私の話をしている。タイミングも良かったみたい)
「はっはっ!好きにさせておけ!孤児のくせに伯爵家の娘より目立とうとするから悪いのだ!」
もちろんアメリアは好きで目立っているわけではない。
3年も歳が離れているというのにマリーの出来が悪すぎるのが原因だ。
アメリアが過去の知識を持ってるからってのもあるけれど、それを抜きにしてもマリーは覚えが悪すぎる娘だった。
「あんな汚れた娘にも利用価値はある」
「ええ、もう少しの辛抱ですわ。あと3年も経てばあの娘を隣国の公爵家、変態たぬき親父の所にコレクションとして嫁いで貰えるのですから。」
隣国の、、公爵家、?
(あの何人もの幼女を嫁として買っているという噂は本当だったのか)
「我々は多額の金を貰え、邪魔な奴は消え失せる。あいつを買った金額の倍以上は請求してやろう。ふふふ」
「あのたぬき親父信じられない事にマリーを狙っていましたものね。隣国といえど公爵家、断るにも立場がある。本当にいい買い物をしましたわ。」
「もちろんだ!あんな変態に可愛い1人娘を嫁いでなるものか!!!あの愚王には孤児がお似合いだよ」
はははははははっ
旦那様と奥様の笑い声が遠ざかる。
(なるほどね)
アメリアは元のルートを辿り自室へと戻っていた。