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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第2期 爆誕!無敵の王室騎士団(ロイヤルナイツ)
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第19話 領主に待っていた史上最悪のアトラクション⑤

「ぎゃあああああああ! 落ちるううううう!

 そして食べられるううううう!」


 絶叫マシーンに乗った時でも言わないような金切り声とともに、アリスを乗せたアレジマザウルスが、置き忘れた食べ物に向かって急降下する。

 そして、野菜の山に降り立つと、大きな口を開けて野菜を詰め込み、また上空へと舞い上がっていく。

 アリスに降りるタイミングすら与えない。


「んぎゃああああああ!」


 当のアリスには、いつ着地して、いつ地面から飛び立ったのかも分からないほどだ。

 ジェットコースターというレベルではない。意識さえ飛ぶ。

 急降下と急上昇に、アリスの体は酔っていた。

 ただ、アレジマザウルスから振るい落とされれば、そこに待っているのは死、それもアリスの自爆死、かつイベントという多くのアレマ領民が見ている前での「恥ずかしい」死である。

 それだけは、何としても避けたい。


「でも、どうすれば……」


 再び、領主の館が豆粒くらいの大きさにしか見えない高さまで上がって、アレジマザウルスが上空を旋回する、

 救助の声は、届きそうになかった。


 その時、アリスの脳裏に一つの作戦が思い浮かんだ。



「倒せばいいじゃん……」



 だが、それにはいくつかのハードルがあった。

 まず、大前提として、いまアリスが乗ってしまっているアレジマザウルスは、ソイからの借り物であること。

 そして、仮に倒してしまったら、この高さからフリーフォールになってしまい、アリス自身にも大ケガ、または死が待っているしまうこと。


 だが、そんな懸念を考えている余裕はなかった。

 とりあえず、目まぐるしく変わる雲を目で追いながら、アリスは上空に手を伸ばした。


「不可能を斬り裂く風を呼び、未来へと導く光を纏う、誇り高き女剣士よ。

 我が大地の命運を、いまその腕に託す。

 その魂が許すなら、我が声に応え、凛々しくも勇ましき一撃を下せ。

 そして、この地にもたらせ! (けが)れなき、正義の輝きを!」


 この状況でも、何故か詠唱だけは間違えていなかった。

 アリスの祈るような叫びとともに、アレジマザウルスの背中に、青白い光が浮かび上がる。

 その光は、アレジマザウルスの動きに合わせるように、つまりアリスの50cmほど先で浮かび続けている。

 これなら、召喚が完了しても、空に放り出されるようなことはなさそうだ。


 アリスは、うなずいた。


「降臨! 剣の女王クイーン・オブ・ソード、トライブ・ランスロット!」


 青白い光の中に、女剣士のシルエットが浮かび、アレジマザウルスとともに空の上を移ろい続ける。

 そして、徐々にそのシルエットがはっきりして、アレジマザウルスの背中にトライブが立った。


「おっと……!」


 いきなり、空の上を立って移動するような姿勢になったトライブは、反射的に両足を広げ、アレジマザウルスの背中に落ち着いた。

 それから、アリスに振り向く。


「アリス……。

 なんで、召喚された瞬間、空の上にいるのよ……」


 冷静に考えれば、当然の疑問だ。

 だが、とりあえずトライブを召喚することしか考えていなかったアリスは、その答えをすぐに言えなかった。


「あ、はい……。

 この……、アレジマザウルスさんが……、ちょっと暴走し始めて……、降りられなくなって……。

 だから、クイーンに倒して欲しいのです……」


「この状況で倒せるわけないじゃない。

 倒したら、私たち、空に放り出されるわよ……」



 普段、滅多に「倒せない」という言葉を口にしないトライブでさえ、この状況は動かせない。

 アリスの耳を貫く言葉は、あまりにも冷たかった。

 だが、アリスがじたばたし始めた途端、空を飛ぶアレジマザウルスが突然声を上げた。



『ギュイイイイイ……』



「なんか、アレジマザウルスが苦しそうな声を出してる……」


 アリスは、その声が空に響くうちから眼下を見た。

 地上との距離が、徐々に近くなっている。

 つまり、アレジマザウルスが空を飛びたくても飛べない状況になっているのだった。


「アリス。

 もしかして、私を呼んだのは、この恐竜の背中を重量オーバーにさせるため……?」


「えっ……?

 あっ!!!!!」


 アリスは、トライブの声でようやく状況が飲み込めた。

 ソイとアレジマザウルスに乗って、全く飛べなかったことを思い出したのだ。


「たしかに、私とクイーンだと重量オーバーになる……!」


 ソイより軽いトライブが乗ったとしても、アリスに加えてさらに一人背に乗れば、飛ぶにはかなりの負担になるのだった。

 アリスが一切目論んでいなかったとは言え、結果としてトライブを召喚したことは間違いではなかった。

 ただし、このために「剣の女王クイーン・オブ・ソード」を呼んだという()()は残るが。



~~~~~~~~



「怖かったよおおおおお……!」


 飛べなくなったアレジマザウルスが、見慣れたソイの前に降り立った時、アリスは安堵の表情を浮かべながらアレジマザウルスの背中から飛び降り、駆け付けたビリーの胸に飛び込んだ。

 ビリーは、アリスの背中を抱きしめて、左手でアリスの背を軽く叩いた。


「アリスさ……、大変だったね……。

 いつもならバカって言いたいけど、男の子のケガで駆け付けたからこんなことになったんだから……、なんかアリスがたくましく見えたんだ」


「そんなことないです。

 横にソイさんがいたのに、ソイさん差し置いて駆けだしちゃったんですもの……」


 すると、横からソイがアリスの顔を覗き込んだ。


「領主様は、よく背中に二人乗せる作戦を考えましたね。

 あれがなければ、本当に私の前にしばらく戻ってこなかったも知れませんし……」


「すいません。最初はクイーンが剣……、おっと」


 アリスは、ソイの前では絶対に言ってはいけない言葉を言おうとして、唇の手前で止めた。

 だが、ソイは苦笑いを浮かべるものの、特に怒りだすような表情を見せなかった。


「やっぱり、これだけ暴れると、倒したくなりますよね……。

 アレジマザウルスに囲まれて生きてきた僕は、ちょっと悲しくなりますけどね……」


「ですね……」


 すると、ビリーがアリスの肩を叩いて、領主の館入口のほうに人差し指を伸ばした。

 そこには、オレンジ色の髪を逆立たせた、金属の体を持つ青年が、やることもなく寂しそうに立っていた。

 やや遅れて、ソイもその青年を指差す。


「召使い様が、キングブレイジオンの炎で、アレジマザウルスを焼き尽くすとか言ったんです。

 さすがの私も、激怒しました。

 貴重な命とともに生きている私の目の前で、二つの命が消えていくの、とても見ていられません」


「そうですね……」


 アリスも、最初はトライブの剣でアレジマザウルスを背中から突き刺す、という作戦を考えていただけあって、あまりはっきりとうなずけなかった。

 念のため、トライブに向き直ると、よりアレジマザウルスに近いところにいたトライブは、得意の剣術で一切ダメージを与えることなく解決したことを特に悪く思ってはいないように見えた。


「じゃあ、アリスもフライト体験ができたところで、イベント続けますか?

 客席はみんな喜んでいたし」


 ビリーの提案に、アリスもソイも大きくうなずいた。

 だが、アリスはその前に、ビリーの耳元で話しかけた。


王室騎士団(ロイヤルナイツ)、元に戻した方がいいですか?

 二人の戦士がいると、主役が奪われそうな気がします」


「いや、せっかくこの世界に呼んだんだから、アレジマザウルスのショー、もう少し見てもらおうよ」



 アリスがあれだけ派手に空を飛べただけあって、その後アレジマザウルスの前には、体重53kg以下の子供たちが列を作った。

 勿論、翼の裏が危険だということをいま一度伝えるとともに、乗り降りには必ずソイが立ち会うことになったが、初めてアレマ領の空を飛んだ子供たちは喜びの表情に溢れていた。

よかったよかった……(このバカ!/by ビリー)


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