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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第2期 爆誕!無敵の王室騎士団(ロイヤルナイツ)
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第19話 領主に待っていた史上最悪のアトラクション③

「いま、なんかソイさんに話しかけたの……?」


 試しにアリスがソイと一緒にアレジマザウルスに乗って、飛べたらイベントでもやる。

 遅れてソイのもとにやって来たビリーには、聞こえなかったようだ。


「えっと……、なんか私も空を飛べるみたいです……!」


「えええええ?」


 ビリーが、突然困惑した表情に変わった。


「う……、羨ましいよ。

 僕だって、アレジマザウルスに乗りたいんだからさ……!」


 アリスは、ビリーの声には全く耳を傾けず、舌を出してからソイの手を掴んだ。


「乗りましょう。

 イベントの命運が懸かってます」


 ソイが一度ビリーに振り向き、こっちもやや困惑したような表情を見せるものの、結局はアリスに丸め込まれてしまった。


 ソイが、アレジマザウルスに語り掛ける。


「いいよね、ここの領主様を背中に乗せても」


『キュイ~……』


 小さく叫ぶアレジマザウルスの声に、アリスは体が震え上がった。


「何これ~! か~わいい~!

 ソイさん、これメスなんですか? オスなんですか?」


「オスですけど……、意外と声は女っぽいんです」


「へぇ……。ますます乗りたくなります!」


 アリスはアレジマザウルスの翼に手をかけようとした。

 するとソイは、アリスの手を引っ張り、動きを止めた。


「ごめんなさい。

 アレジマザウルスは、私が先に乗らないと、勝手に暴れ出しちゃうんです」


「暴れ出す……?

 あぁ、そっかー。ソイさん、アレジマザウルスの飼い主ですものね」


 アリスがそう言っているうちに、ソイが先に翼からよじ登ってアレジマザウルスの背中に座った、

 それから身を乗り出して、アリスに手を伸ばす。

 アリスの手がソイの手と結ばれた瞬間、ソイが息を飲み込んだ。


「ちょっと待ってください、領主様……。

 私、領主様を持ち上げられなくないですか?」



「ヤバい……!」


 アリスは、ソイの言葉に真っ青になった。

 毎日ご飯やお菓子を食べ続けているその体が、同じ身長の女子に比べると限りなく重いことを、今更になって思い出してしまった。


「領主になってから、体重なんて計ったことないんだった……」


「そんな重いんですね……。

 なんか領主様を乗せて、アレジマザウルス、本当に耐えられるんでしょうかね……」


 ソイは手を伸ばすのをやめ、アリスに自力で登ってくるよう告げた。

 アリスは小さくうなずき、ソイの登った翼に手を掛け、ジャンプして翼に膝を乗せた。



『ウウウウ~!』



「いま、なんか苦しそうな声を出した……?」


 アリスの耳に、悲鳴にも近いようなアレジマザウルスの鳴き声が響いた。

 ソイの表情も、先程以上に浮かない様子だ。

 それを分かった上で、アリスはソイの後ろに座った。


「じゃあ、空に行きましょう!」


 ソイが何も言えない中、アリスがアレジマザウルスに勝手に指示を出した。

 だが、翼を何度か羽ばたかせたアレジマザウルスは、かすかに浮かんだものの、2mほど浮かんだところで力尽き、強い衝撃とともに着地してしまった。



『ギュイイイイイ……』



「あ……、やっぱり無理でしたか……」


 ようやく現実を思い知ったアリスの顔に、ソイのため息が冷たく吹きかかる。


「アレジマザウルスが言ってますよ。

 領主様が人間じゃないくらいに重すぎるって……」



「私の体重、人間じゃない……。

 なんか、動物に言われるとグサッと来る……」


 アリスはよろけながらアレジマザウルスの背中から降り、最初に衝撃を与えてしまった背中を軽く撫でた。

 ため息をつくような心の余裕もなかった。

 そこにビリーが、何事もなかったのような表情でアリスに駆け寄る。


「やっぱりね。

 アリス、重いから、ダイエットしないといけないって、僕は何度も言ってきたのに……」


「傷口に塩を塗るようなこと言わないで下さいよ、ビリー!

 体重は、食べ続けてきた証拠なんですからぁ!」


 その言葉に、ビリーではなくソイが笑ってしまった。

 ソイは腕を組みながら、考えるしぐさを見せていた。


「ソ……、ソイさん……。

 私がやっちゃったから、今回の飛行企画、なしってことですか……?」


「いや、体重制限をつけましょうよ。

 さっきのは、領主様が重すぎました」


「えええええ? い……、いいんですか」


「だって、機械にも重量オーバーとかあるんですから……。

 例えば、50kg超えてるとか、そういう子供はちょっと私と一緒だと厳しいと思いますよ」


「ですね……」


 ソイの口から「体重」という言葉が出てきた時、アリスの表情が曇った。

 だが、アリスの背後で人のざわめき声が聞こえ、アリスは思わず首を横に振り、後ろを振り向いた。


「げ……。もう人が集まり始めてる……!」


 アレジマザウルスがアレマ上空を飛んだことで、予定していた時間よりも1時間以上前から、領主の館に人々が集まってきてしまったのだ。

 もはや、ソイの提案を呑むしかなかった。


「分かりました。体重制限つきで、飛行体験を入れますね」



 ソイと綿密に打ち合わせを行って、お披露目用のボックスまで用意したにもかかわらず、この時すでに多くの人にアレジマザウルスを丸見えにさせてしまっていた。

 アリスたちは仕方なく、このままステージまでアレジマザウルスを連れていくことにした。



~~~~~~~~



「大変長らくお待たせいたしました!

 領主の館プレゼンツ、アレジマザウルスがアレマにやって来たイベントを、開会いたします!」


 この日もまともな台本を完成させられなかったため、ビリーがアドリブで開会を告げた。


『キュイ~ッ!』


 アレジマザウルスは、アリスに向けた目とは裏腹に、集まった人々に対しフレンドリーな表情を浮かべていた。

 集まった人々も、ほぼ手の届く場所に降り立ったアレジマザウルスをその目に焼き付けている。


――すっごくきれいな青だし、強そうな翼を見せてる……!


――この前の、ボロボロな恐竜ショーとは全く違う……!


――一度くらい触りたーい!


 多くの人々が口々に言う中で、ビリーの隣に立つソイがアレジマザウルスの説明を始める。

 まだ、企画を知らない人々は、説明中もざわつく一方だった。

 だが、その説明が終わるか終わらないかのうちに、アレジマザウルスの翼が下に垂れた。


「あ、『ここから上がってください』って、アレジマザウルスが言ってるような気が……」


 アレジマザウルスには、イベントの段取りが分かっているようだ。

 ビリーもそれに気付き、右手をアレジマザウルスに向けて真っ直ぐ伸ばした。


「それでは、今回はこのイベントに集まった子供たちのために、特別な企画を考えました!

 アレジマザウルスに乗って、このアレマの空を1周してみましょう!

 まずは……、この企画を僕たちに提案してくれたお友達をお呼びします!

 ミッドハンドからやって来た、エアちゃん! どうぞ~!」


 エアとも一切打ち合わせをしていなかったが、エアがその場で立ち上がり、ピンク色の髪を風になびかせた。

 多くの観客がエアの喜んだ表情に手を叩いている。


――あの子が、空を飛びたいって言ったんだ。すごい。


――アレマじゃ絶対無理なのに、夢がある子供だよ……。



 エアは、ソイに背中を押されるようにアレジマザウルスの足元に向かい、アリスの時と同じようにソイが先に背中に飛び乗った。

 そして、ソイの手がエアの手と結ばれた時、ビリーは原稿に書き足した「大事なこと」を観客に告げた。



「このアレジマザウルス、重いと空を飛べません。

 本当に申し訳ないんですが、体重が50kgまでの子供さんに限らせてください」



 その時、アレジマザウルスのほうを流れる空気が凍り付くのを、アリスは感じた。

 ソイの手を掴んだはずのエアの手が力なく解かれ、エアがその場に崩れ落ちた。


「私、53kgだから、乗れない……。

 ひどーい……!」


 エアが泣き出した瞬間、その「基準」を決めてしまったソイが慌てふためいた。

 ソイ自身がエアと面識がなかっただけに、これは完全にアリスたち側のミスだった。


 そこに、アリスが体を震わせながらステージの中央に立ち、大声で告げた。


「これじゃあまりにもかわいそうです!

 53kgまでにします! すいません!」


 アリスの声がステージに響いたとき、客席は笑っていた。

 エアもいつの間にか、再びソイの手を握りしめ、涙を流したままアレジマザウルスに背に乗ったのだった。

次回、アレジマザウルスに乗れないはずの領主に、最悪のスリルが待つ。

応援よろしくお願いします!

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