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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第2期 爆誕!無敵の王室騎士団(ロイヤルナイツ)
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第17話 アリスの中間テスト大作戦⑤

「え……????」


 アリスの突然の提案に、ビリーは戸惑った。

 何故ここで突然キングブレイジオンが出てくるのか、ビリーには全く分からない。


「ほら、『アレマ気象学』のテストをやらなきゃいけなくなった理由が、私のあの提案じゃないですか。

 キングブレイジオンを、もっと風に強くしましょうって」


「えっ、扇風機とかエアコンとか言ってた段階で、それはなしってことになったんじゃ……?」


「なしになってません。

 私は、風の特性を学んでバトルに生かすために、勉強してたんですから!」


「そうだけどさ……」


 ビリーは、アリスに少しずつ腕を引っ張られて、書庫から連れ出されてしまった。

 そのまま階段の前まで引っ張られると、腕を上下に振りながらアリスの手から逃れた。


「腕を持って階段を降りるのは危ないだろ!」


「二人三脚、やったことないんですか?

 それと同じ要領で、二人三腕ですよ?」


「いやいやいや、危ないから。

 というか、そんなにアリスが勉強のために外に出たいんだったら、僕も協力するから。

 キングブレイジオン、僕の担当だし!」


「じゃあ、行きましょう」


 アリスは、微笑みながら後ろにいるビリーに振り向いて、子供のようにはしゃぎながら階段を降りていき、そのまま玄関を飛び出していった。

 ビリーも、アリスに負けないように階段を降り、外に出る。

 南の空には、ちょうどハリケーンの目のようなものが見えていたが、南から吹き付ける風が、その目を見ようとする二人の顔に直撃し、髪で目を隠した。


「うわっ、アレマンハリケーン、思ってた以上に強いな……」


「そうです。南の海で起こった上昇気流が陸に上がって、スワール領あたりまで強風をもたらすそうです」


 アリスがなんとなく本で読んだ知識をビリーに告げると、ビリーはうなずいた。


「意外と勉強してるじゃん……!

 本の上にペロペロキャンディのイラストとか描いてるだけじゃなかったんだ……」


「だって、バトルのこと、王室騎士団(ロイヤルナイツ)のこと、いろいろ考えてますもの!

 最強の戦士を、より最強にしたいですから!

 というわけで、ビリー。召喚っ!」


「えっ……?

 キングブレイジオンを召喚していいんだよね?」


 アリスは、ビリーが言うが早いか、風の吹いてくる南に向かって走り出しながら、腕で大きな丸を描いた。

 ビリーは、アリスが手に持っていたものが気になったものの、風の強さに負けないように祈りを捧げる。



「その体に纏うは、正義を貫く一途な情熱。

 その体が解き放つは、邪悪を焼き尽くす勇ましき炎。

 熱き心を授かりし紅炎の王者よ、いま汝の力を大地が欲するとき。

 いま、永久(とわ)に燃える汝の生命力(エナジー)で、この地を絶望から解き放て!」


 肌を襲う風をも感じなくさせるような激しい力を、ビリーが感じ始める。

 その力が手に集まりだしたとき、ビリーは最後の祈り(ラスト・スペル)を叫んだ。


「降臨! キングブレイジオン!」


 ビリーの声が風に立ち向かうと、その風にも怯えぬ青白い光が湧き上がった。

 その中で、オレンジ色の髪が逆立つキングブレイジオンが早くも標的を探しているように、ビリーには見えた。

 今の時点で、この後何を標的にするかはビリーにも分からないのだが。


 やがて、その青白い光の中から、紅炎の王者が姿を現す。

 ほぼ同時に、アリスの足が領主の館から200mほどのところで止まった。


「キングが焼き尽くして欲しいのは、この木にぶら下げてるこれでーす!」


「は……?」


 ビリーとキングブレイジオンが、ほぼ同時に「標的」を睨み付けた。

 ビリーのあえぎ声が、風で消えていく。


「『アレマの生態系』という、さっき書庫から適当に探してきた本です!

 キングブレイジオンが風に弱いから、あえてアレマンハリケーンが吹いているときに特訓しようと思いました」


 そこまで言い終わったとき、アリスは木に本をぶら下げ終わって、木から下りていった。

 同時に、キングブレイジオンが首を横に振った。



「俺は……、そんなものを相手にしないといけないのか?」


「えっ、キング、怒ってるの?」


 アリスが戸惑いの表情を見せる中、キングブレイジオンがビリーを一瞬だけ見て、再びアリスを睨む。


「この前のブロックの時も思っていたが、俺は正義のヒーローとして魂を授けられた。

 だから、アレマ領を守るためなら力になるが、そうでない場合は無駄な力を使いたくない」


「あ……」


 アリスは、キングブレイジオンに言われたと同時に、我に返った。

 時同じくして、アリスが吊り下げた本が、重さに絶えられなくなって地面に落ちていく。


 アリスは、「ごめんなさい」と告げるしかなかった。

 その、呟きにも近い声は、風に乗ってキングブレイジオンにも聞こえているようだ。


「あれ……?」


 標的を失ったキングブレイジオンの横から、ビリーが何か話し掛けている。

 キングブレイジオンがうなずき、すぐに金属の体から炎を湧き上がらせた。


「アリス。

 キングブレイジオンの任務、僕が変えておいたよ」


「えっ……、ええええっ……?

 そんな一瞬で、キング、力を貸してくれるんですか……?」


「そう。本にも書いてあっただろ。

 アレマンハリケーンは、クラスによってはアレマ領に甚大な被害をもたらすと。

 そして、ハリケーンは湿った空気の集まりだと。

 だから、ハリケーンの空気そのものを炎の力で乾かしていく」


 アリスは、ビリーの提案に開いた口がふさがらなかった。

 冷静に考えれば、いま起きている自然現象を人工的に消し去るということだ。

 そして、風を不得意としているはずのキングブレイジオンが、下降気流を相手に「戦う」ということだ。


 その作戦を、キングブレイジオンが早くも実行に移そうとしていた。

 右手を高く上げ、そこに炎を集めている。


「もしかしてビリーは、私以上にバカだった……?」


 自然現象を人間の力で変えられるとしたら、『アレマ気象学』などという本もいらなくなってしまう。

 人間がアレマの気象そのものを変えられてしまうのだから。


 キングブレイジオンの手に、半径5mほどの炎が集まった。

 時折強く吹き付ける風にも、その炎は形を失わない。

 これから立ち向かう相手に、キングブレイジオンは静かに告げた。


「俺は……、これ以上風に弱いなんて、言わせない……。

 俺だって、どうすればいいか、答えを見つけたんだ!」


 アリスとビリーの目が、キングブレイジオンの手に集まる中で、王者が風に向かって叫ぶ。



「炎よ、我が怒りに共鳴せよ! 勇敢なる炎フレイム・ヴァリアント発射(ファイア)!」



「あっ、()けた!」


 目に向かって炎を放とうとしていたキングブレイジオンの手が、放つ直前に角度を90度変えた。

 その目だけは、上空にあるハリケーンの目を向いているものの、あえて正面からの勝負を避けたのだ。

 そして、フレイム・ヴァリアントの炎が、なるべく風の強い場所をよけながら、ハリケーンの目の下に入り込み、風が吹いていない地点で一気に駆け上がっていった。


 意思を持った炎が、上空3000mの渦に立ち向かっていく。

 やがて、はるか上空で炎と渦が激しい音を立ててぶつかり合い、ある程度は上空の空気を乾かした。


 ように見えただけだったのは、言うまでもないが。



~~~~~~~~



「とりあえず、今日アリスが下手に『アレマ気象学』の知識を知っていたから、僕ももう少し問題を練らなきゃいけないよな……。

 テストは、少しだけ延期にするよ」


 キングブレイジオンを元の世界に戻した後、ビリーはアリスの前に立って小さくうなずいた。


「あっ。もしかして、まだテストの問題作ってないんですか?」


「作ってないよ。

 いざ問題を作ろうとしても、作る側も結構大変なんだからさ。

 それに……」


「それに……?」


 ビリーの顔が笑っている。

 アリスには、それが不気味でならなかった。


「さっきもあんなこと言っちゃったけどさ……、僕は領主としてのアリス、もう少し見ていたいんだ。

 もしかしたら、領主のアリスだって、僕、好きになれるかも知れない……」


「ん……?」


 アリスは思わず、あまり聞いていなかったと表情で訴えそうになった。

 だが、ビリーの笑った表情に、その思いは儚く消えてしまった。

自然現象を相手に戦うんじゃありません!

次の18話から恐竜イベントです。

応援よろしくお願いします。

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