第16話 ビリー、男を魅せる④
――Battle2、勝者、キングブレイジオン!
ビリー・エバーラストが、得意の召喚でクリムゾンウイングを撃破しました!
勝ち名乗りを告げるアナウンスがビリーの耳に響くと同時に、ビリーはアリスのいるはずの方角を振り返った。
だが、そこに何故かアリスはいなかった。
「王室騎士団のもう一人は、呼んでいないんだな」
不意に後ろからキングブレイジオンに話しかけられ、ビリーは息を飲み込みながら振り返った。
「あぁ、そうだね……。
今日のコロッセオは、僕の一人舞台みたいな感じで……」
「ビリーの……、一人舞台……。だから、アリスがいないんだな」
「いないわけじゃないんだけど……。
僕が負けたら、アリスが領主をクビになるってことになったから、見届け人として端にいたんだけど……」
そう言いながら、ビリーはもう一度首を左右に動かした。
すると、数人のスタッフが固まっている場所の中心に、背の低いアリスの姿が見えた。
アリスは、怒られているようだった。
「キングブレイジオン。アリスはいるよ。
いつものように、バカをやらかして怒られてるみたい……」
ビリーは、キングブレイジオンをその場に待たせて、早足でアリスに近づいていった。
「しっ……、失格ってなんですか……?」
スタッフの3人がアリスをじっと見つめている中で、アリスは震え上がった。
冷静に考えれば、雇われの身がそこのオーナーを睨んでいることになるわけだが。
「アリス。
お前、さっき吹き矢を使っただろ。証拠はあるんだぞ」
一人のスタッフが、バトルフィールドの端から拾ってきたと思われる吹き矢をアリスに見せる。
「これ、アリスが使ったことで間違いないな」
実際に使ってしまったアリスは、反論の言葉が見つからない。
というより、バッグに隠していたのに何故ビリーに使わせなかったという、そもそもの疑問は残るのだが。
そこに、ビリーが会話に入ってくる。
「あの……、失格とか吹き矢とかいう言葉が聞こえてきたけど、何かあったの?」
「はい、私が……、召喚を盛り上げるために祝福の吹き矢を使いました」
「は……?」
ビリーは、アリスがさらりと言い切った一言に固まった。
呆れるどころか、ビリーは口から笑い声を発せずにはいられなかった。
「あのさぁ……。
僕がこうやって、ほぼ命がけで戦っているのに、クビが懸かったアリスは遊んでていいんだ……」
「領主クビになっても、バカはバカですも~ん」
「アリスがさ、そんな態度でこの大会を楽しんでいるんじゃ、僕、戦いたくなくなるからね!」
ビリーが強い口調になった瞬間、アリスは目線を下に落とした、
それから、下を向いたまま静かに告げた。
「私がルール変更を告げなかったら、ビリー、負けてましたよ……?
あの吹き矢は、ビリーが楽勝ムードになったから出せましたし、
ビリーがピンチの時に吹き矢を出すわけがないじゃないですか……」
「そりゃ、確かだけど……。
あぁ~、アリスはどこまでバカの細胞でできてるんだあああああああ!
こんなんで僕の負けが決まるなんて、あんまりだあああああ!」
その時、アリスを囲んでいたスタッフたちの目が、一斉にビリーに向いた。
みな、ビリーに対しては目を吊り上げていないようだ。
「ビリーの言うことも、もっともだよな……。
ビリーやクリムゾンウイングに、直接危害を加えたわけでもないのに、これで失格にするのはかわいそうだ」
「えっ……」
これには、ビリーが驚いた。
ビリーが半ば泣き叫んだことが災いしたのか、スタッフたちがアリスの不正をノーカウントにしているようだ。
「とりあえず、もう一段ハンデをきつくするだけで、とどめておこう。
そして、そのハンデを……、やった張本人に決めてもらうとしよう。いいな」
「あ……、はい……。
僕は、それでいいですけど……」
ビリーは、失格を告げられてからのあまりの展開に、何も考えずに返事をした。
だが、スタッフたちの目が再びアリスに向けられた瞬間、ビリーは思わず息を飲み込んだ。
「では、アリス。
オーナーとしての立場で、オーナー自らを締め付けるようなハンデをよろしくお願いします!」
「不正をやったアリス……というか、クビが懸かっているアリスが決めるんかよ!」
ビリーがあっけに取られている中で、アリスはビリーの表情を一目見て、それからキングブレイジオンにも目をやった。
それから、はっきりとうなずいた。
「よーし! 私、ハンデを決めちゃいましたー!
次を、ビリーの最終戦にしましょう!」
アリスが思い付きとも捉えられかねない言葉を継げると、スタッフが突然うろたえ始めた。
「ちょっと待ってください。
ビリーには、まだ3体マッチメイクされているんですよ!
それを。次で最終バトルにしちゃうということは、ビリーのハンデを軽くするってことじゃないですか」
すると、アリスはそんなツッコミを待っていたかのように、首を横に振った。
対して、ビリーには嫌な予感しか漂ってこない。
「その3体を、同時にバトルフィールドに放ってしまえば、キングブレイジオンも本気のバトルができますよ」
「うわっ! アリス、なんてエグいことを考えてるんだ!
戦うの、僕とキングブレイジオンだからね!」
いくらアリスがキングブレイジオンのパワーを信じていたとしても、この大会最高ランクと思われる敵を含む3体一斉に襲ってくるとなると、その実力は未知数だ。
だが、アリスはビリーの訴えに耳を貸す様子はない。
「面白ければ、このコロッセオがもっと楽しい場所になりますよ!
キングブレイジオンの圧勝じゃつまらないです」
「今回戦わないからって、気楽に考えて……。
まだ敵も分かっていないのにさ……」
その時、ビリーは後ろから誰かが近づいてくるような気配を感じた。
「俺はただ、出てきた敵を焼き尽くす。それだけだ」
「キングブレイジオン……。いきなり、3体まとめてだよ……。大丈夫かよ」
「それができるのが、俺だ。
ヒーローが、未知のことに怯えては、心もとないだろ」
ビリーが、これまで数多くの強敵と戦ってきたキングブレイジオンにうなずく。
アリスも、その言葉を耳にしたのか、やや離れたところからうなずいた。
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――それでは、Battle3、本日の最終戦となります。
紅炎の王者と呼ばれるキングブレイジオンが、3体の強敵の一斉攻撃に耐えられるか、注目です!
司会が高らかに叫ぶと、バトルフィールドに続く三つのゲートが同時に開き、中からそれぞれ、サングラスをかけた男が一人ずつ、計3人出てきた。
白い髪、赤い髪、そして青い髪の3人で、髪以外はほぼ同じ体格。特に武器を持っていないようだ。
「召喚か……?」
3人はどんどんビリーの前まで近づき、ビリーの前に立つや否や、一斉に手を空に伸ばした。
「召喚、ビッグアイ!」
「召喚、ビッグノーズ!」
「召喚、ビッグフッド!」
3人がほぼ同時に、それぞれの召喚する対象を叫ぶと、三つ現れた青白い光の中から、大きな目だけのモンスター、大きな鼻だけのモンスター、そして大きな足だけのモンスターと、どれも人間の一部を切り取って、口をつけただけの敵が浮かび上がった。
一つに交わることはないものの、その青白い光の中から早くも殺気のようなものを感じ始めた。
「これは、遠隔攻撃と接近攻撃、同時に襲ってくる。
連携プレーも、間違いなく考えているな……」
キングブレイジオンが、青白い光を見つめながら呟いたとき、青白い光の中から現れた3体のモンスターが同時に言い放った。
「「「我ら、セルクラスターの力、とくと受け止めるがよい……!」」」
「臨むところだ!」
キングブレイジオンとビリーがほぼ同時に叫ぶ。
アリスのクビを懸けた最終戦が、いま始まる。
次回、3体の巨大「体の一部」対キングブレイジオンの対決?
それとも……。
応援よろしくお願いします!




