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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第2期 爆誕!無敵の王室騎士団(ロイヤルナイツ)
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第14話 アリスのコロッセオひとりじめ計画⑤

『さぁ、我らブラッドフェンリルの血となれ、愚かなる人間どもよ。

 100戦無敗の力、ここに思い知るがよい……』


 トライブとキングブレイジオンの視線を一切感じないかのように、2頭のブラッドフェンリルがゆっくりと二人に近づき始める。

 正面から近づくのではなく、バトルフィールドと客席との境を大きく回り込み、様子を伺っているようだ。


 トライブがキングブレイジオンに目をやる。


「キングブレイジオン。私の考えた作戦なんだけど、私はブラッドフェンリルをあっちにおびき寄せる。

 私がもう一度飛び上がったら、二つまとめて炎で仕留める。それでいい?」


「お前は、攻撃をしないのか?」


「これだけの巨体を相手にするのは、私じゃ時間がかかるわ。

 1対1じゃない。私たちは、王室騎士団(ロイヤルナイツ)というチームなんだから」


「チーム……、か。

 たしかに、二人で戦えと領主から告げられているが……」


 キングブレイジオンが、小さく縦に振った。

 それを合図に、トライブがブラッドフェンリルの1頭に向かって走り出し、アルフェイオスを天高く上げた。

 すると、ブラッドフェンリルの目が細くなり、大股でトライブに踏み込んでいった。


『ガルルルル……!』


 体長10mもある巨大な獣が、一気にトライブに襲い掛かる。

 だが、トライブはその場で立ち止まり、迫ってくる足に命中するように、アルフェイオスを大きく振った。


『グッ……』


 トライブの一振りで、右に傾いたブラッドフェンリルを尻目に、トライブはバトルフィールドの中央に駆け始める。

 それを見た、バトルフィールドの反対側からキングブレイジオンに向かっていた、もう1頭のブラッドフェンリルが、トライブに向きを変える。


『こうなったら、まず女剣士の体を引き裂く……!』


 バトルフィールドを駆けるトライブの正面と後ろから、一斉にブラッドフェンリルが迫ってくる。

 トライブは、目と体の感覚で2頭のおおよその位置を察し、正面からのブラッドフェンリルが大股で踏み込んできそうなところで立ち止まった。

 そして、「作戦通り」アルフェイオスを空にかざした。


「バスターウイング!」


 体長10mはある巨大な獣を大きく飛び越え、トライブの体はキングブレイジオンの近くへと軌跡を描いた。

 だが、同時にトライブはキングブレイジオンを睨みつけた。


「早く炎を!」


 キングブレイジオンの右手に宿った炎が、ブラッドフェンリル2頭を飲み込むまでの大きさに達していない。

 1頭の半分ほどの炎しかない状態で、トライブから言われた通り放つことができないようだ。

 それでも、トライブの声に誘われたように、かすかにうなずき、叫んだ。



「炎よ、我が怒りに共鳴せよ!

 勇敢なる炎フレイム・ヴァリアント……、発射(ファイア)!」



 キングブレイジオンの右手から炎が解き放たれた時、2頭のブラッドフェンリルがその炎をよけるかのように、同時に飛び上がり、二人を狙おうとした。

 だが、キングブレイジオンの意思を貫いた炎が、ブラッドフェンリルの真下から垂直に駆け上がり、二つに分かれ、それぞれの腹部に命中した。


『あ……っつ……!』


 大股で飛び上がったはずのブラッドフェンリルたちが、体に火が付いた状態で二人から10mほど離れたところに、よろけながら着地する。

 それでも二人を食らいつくすという意思は衰えていない様子だ。


 その間に、キングブレイジオンの右手には、早くも次の炎が同じ大きさまで湧き上がった。



「今度こそ、とどめだ!

 勇敢なる炎フレイム・ヴァリアント……、発射(ファイア)!」



『おのれ……。炎なら、この口で食らいつくすまで……』


 キングブレイジオンの声に刺激されるように、2頭のブラッドフェンリルが、大きな口を開けながら二人に迫る。

 だが、その正面から勢いよく襲い掛かる灼熱の炎は、ダメージを負ったブラッドフェンリルがまともに消し去れるものではなかった。


 ゴオオオオオッ!


 全長10mと言われたブラッドフェンリルの体が、次の一歩を踏み出す力もなくなったかのように炎に飲み込まれ、毛1本に至るまで容赦なく焼き尽くされていく。

 キングブレイジオンが右手を伸ばしたまま、苦しむ相手を見つめていた。


「これが、俺の……」


 キングブレイジオンはそう言いかけて、隣に立つトライブに目をやった。

 それから、首を横に振って言い直す。


「これが……、俺たち王室騎士団(ロイヤルナイツ)の力だ!」


 その横で、トライブが静かに微笑んだ。


「私も入れてくれて、ありがとう」



~~~~~~~~



「アリス、いいのかよ……。

 クイーン、今日見せ場なかったぜ……」


 バトルフィールドの端で、絶えずバトルを見つめていたビリーは、アリスを心配そうな表情で見つめた。


「それはないと思います。

 いつものクイーンなら、剣士だと倒しにくいって、キングに作戦を指示したと思います」


「え……、そういうものなんだ……。『オメガピース』でも」


「そうです。

 ソードマスターとして、普段からセクションにいるみんなのことを考えてますから。クイーンは」



 アリスは、普段見ている「ソードマスター」の姿を頭の中に思い浮かべた。

 本来ならば自分で仕留めたい敵を、セクション全体のことを考え、それをより得意とする剣士に任せる。

 トライブが「オメガピース」の剣士から「頼れるリーダー」と言われる理由を、改めて気付いたのだった。


 そこに、召喚された戦士たちが戻ってきた。


「意外と弱かったわね。

 100戦無敗の超獣とは思えないほど、口以外が完全に無防備だった」


「あぁ、それは言えるな……。

 クイーンが足目掛けてダメージを与えてなければ、フレイム・ヴァリアントの発射角度も正面にしていたかも知れない……」


 キングブレイジオンが照れながらトライブに告げる中、アリスが二人の顔を交互に見つめる。


「もしかして、クイーンはそれを狙って先に動いたんですね」


「それもあるけど、偶然かも知れない。口は強そうだから、最初から避けていたわ」


「それは、クイーンの……、とキングのバトル経験の積み重ねだと思います!」


 アリスは、ビリーの苦笑いを背後に感じながら、二人の戦士に頭を下げた。

 そこに、正面からモヒカンの男性が近づいてきた。



「約束した通り、この『アレマ・コロッセオ』は解放戦線から、お前たちに譲ろう」


「あっ……!」


 アリスは、思わず手で口を押さえそうになった。

 ブラッドフェンリルとのバトルに集中し過ぎて、勝てばどうなるか頭から抜けていたのだった。


「アリス、覚えてるよね。勝った時にどうなるか……」


「……ですね」


「まぁ、領主というブランドネームもあるだろう。

 どれだけの客を集めるか、バカ領主の腕前にかかっているが、

 もし必要なら俺たち『ネオ・アレマ解放戦線』に声を掛けてもいいぞ」


 モヒカンの男性は、アリスに「アレマ・コロッセオ」のマスターキーを渡した。


「ただ、必ず奪い返しに来るからな。『ネオ・アレマ解放戦線』としては……」



 モヒカンの男性が出口に消えていった瞬間、トライブがアリスの顔を覗き込む。


「まさか……、このコロッセオがアリスのものになったってこと……?」


「そうなりますね……。

 あ、安心してください! キングとクイーンもこのコロッセオを守る戦士として使いますから!」


「つまり、ここに呼ばれているうちは、平和な世の中だから、そこまでの使命感を背負わなくていいわけね」



「あ……」


 アリスの表情は、トライブの一言で真っ青になった。

 3人がそれぞれ「やっぱりアリスはアリスだ」と言いたそうな目で、アリスを見つめていた。

複数動くバトル、久しぶりに書いて楽しかったです。

今後も、二人の共演は続きますのでお楽しみに!


応援よろしくお願いします!

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