第13話 コロッセオに舞い降りた二人の戦士⑤
――本日最後の挑戦者から、魔術を操るヒーロー、登場の予感。
召喚するのは、黒髪の青年です!
Battle18、ビリー・エバーラスト vs ラリー・グロザート!
「魔物じゃない……!」
ビリーの前に出てきたのは、明らかに脱色した灰色の髪の青年、ラリーだった。
普通の青年にしか見えない外見だったが、ビリーの目にはその青年から召喚できそうな気配を感じていた。
「ヒーローを召喚すると言ったな。
まさか、この前使い手を失った、あのヒーローじゃないだろうな」
「何故知ってるんだよ……。
この前、その使い手が倒されたことを……!」
「情報網だ。何と言っても、このアレマ領は狭いからな……。
自称ヒーローなど、どう考えても一人しかいないはずだが……」
「分かった」
ビリーは、受付でははっきりと書かなかったものの、絶対に呼ばなければならないという宿命を感じた。
その意思に誘われるように、右手を高く伸ばした。
「頼む……、僕の声を感じてくれ……」
ビリーが、コロッセオを見下ろす夜空に一言声を掛ける。
いよいよ、ビリーにとって初めてとなる存在の召喚が始まろうとしていた。
「その体に纏うは、正義を貫く一途な情熱。
その体が解き放つは、邪悪を焼き尽くす勇ましき炎。
熱き心を授かりし紅炎の王者よ、いま汝の力を大地が欲するとき。
いま、永久に燃える汝の生命力で、この地を絶望から解き放て!」
ビリーの手に、燃えるような力が集まり始める。
これまで、ビリー自身が何度も見てきた圧倒的なパワーが、その手の先ではっきりと再現され始めた。
手応えはある。あとは、振り向いてくれるかだ。
ビリーは大きく息を吸い込み、それから力強く叫んだ。
「降臨! キングブレイジオン!」
青白い光に映ったのは、キングブレイジオンの髪――オレンジ色に染まった、炎を連想させるような髪――と、その下に見せる男前の表情、そして金属で覆われた体だった。
コロッセオに集まった人が、口々に「あの炎使い」と口にし始める。
「さぁ……!」
やがて、青白い光の中から一人のヒーローが姿を見せた。
「なんか、見覚えがあるな。俺の新しい使い手か……?」
「はい……、今日からキングブレイジオンは……、僕が引き継ぎます!」
「分かった。アレマの平和は、俺に任せろ!」
キングブレイジオンが、ビリーにうなずく。
そこに、ラリーが腕を組みながらビリーとキングブレイジオンを見つめた。
「なんだ。新しい召喚術師と言っても、初めての召喚か……。
なら、信頼度が低いうちに、二度とキングブレイジオンを呼びたくなくなるような悪夢を見せてやる」
ラリーが勢いよく空に手を伸ばした。
「全てを凍てつかせ、死の世界へと誘う氷の精霊。
いま、汝の力で灼熱地獄をも無に変えろ……。
召喚! ブリザーディア!」
「氷か……。俺の一番得意とする相手……!」
ラリーの前に現れた青白い光は、高さ3mほどに膨れ上がった。
そこからは、早くも氷を連想させる水色の光がこぼれ始めている。
それを見た瞬間、キングブレイジオンがその身から炎のオーラを解き放った。
やがて、白と銀で固められたブリザーディアの体が、キングブレイジオンを見下ろした。
人の形をしているものの、スカートで覆われた足は地面から離れ、浮いている。
「ビリー、本当にキングブレイジオンを召喚できた……!」
アリスが、出口の奥に引っ込まず、バトルフィールドに体半分乗り出す形でビリーを見つめていた。
だが、そこに上からシャッターが降りてくるような音が聞こえ、アリスはトライブに腕を引かれる形で、出口に引っ込んだ。
ほぼ同時に、観客席とフィールドを隔てる壁から透明なガラスが現れ、高さ5mほどのところまで上がる。
このバトルが最後に組まれた理由と、魔術戦から観客を守らなければならない理由を、アリスは同時に知った。
「さぁ、来い! 氷の精霊!
俺が、全てを焼き尽くす!」
キングブレイジオンが力強く叫ぶと、ブリザーディアが頭の上に水色の光を集めた。
その中に見えるのは、荒れ狂う猛吹雪。キングブレイジオンの体を完全に覆いそうなサイズの光だ。
『あなたの火で、何が出来るかしら?』
ブリザーディアが軽く笑い、頭の上に湧き上がらせた光を両手で掴んだ。
そして、それを投げるように、両手から猛吹雪を解き放つ。
『極大吹雪!』
だが、紅炎の王者がそれに怯むことは、決してなかった。
キングブレイジオンの右手が、体を纏う炎を集め始め、猛吹雪に立ち向かう。
「炎よ、邪悪なる力を食い止めよ……! 燃えさかる盾……、結成!」
キングブレイジオンの右手に、猛吹雪を受け止めるほどのサイズの、炎の渦巻く盾が浮かび上がる。
そして、その盾をキングブレイジオンは猛吹雪目がけて解き放った。
その大きさ、半径2m以上。盾の形をした炎が次々と猛吹雪を飲み込み、跳ね返していく。
『もっと力を……!』
ブリザーディアが強く叫ぶものの、炎の盾がブリザーディアのすぐ手前まで吹雪を押し戻していく。
盾で急上昇したその場の温度で、キングブレイジオンの力がより一層高まる。
早くも、次の炎がその手の中で湧き上がっていた。
「炎よ、我が怒りに共鳴せよ! 勇敢なる炎!」
キングブレイジオンの勇気の証と言っていい必殺技、フレイム・ヴァリアント。
それが、今までと異なる使い手の元で、改めてこの世で再現されようとしていた。
ブリザーディアが、再び猛吹雪を放とうとしている中、キングブレイジオンは叫んだ。
「発射!」
轟音すら響くバトルフィールドに、キングブレイジオンの解き放った炎が、ブリザーディアに襲いかかる。
猛吹雪を放とうとしていたブリザーディアが横に逃げようとするも、フレイム・ヴァリアントの炎がそれを察していたかのように逃げた場所に直撃した。
『グアアアアアアッ!』
ブリザーディアが、最後は手で炎を振りほどこうとしたが、灼熱地獄の中では何も出来ず消えていった。
「これが、俺の力だ!」
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「すごいです!
本当に、キングブレイジオンを味方に出来たんですね……!」
ビリーがキングブレイジオンを連れて出口まで戻ってくると、アリスは真っ先に突っ込んだ。
「いや、それほどでも……。
相手が相手だっただけに、キングブレイジオンだと楽勝だったかも」
アリスは、念のためキングブレイジオンの目を見つめる。
キングブレイジオンも、ビリーと一緒になってうなずき、口を開いた。
「そう言えば、何度か会ってるな。
俺を召喚しますって、前に言ってたような気がする……」
「はいっ! イケメンなキング、大好きですから!」
キングブレイジオンが、アリスにフッと笑った。
それを聞くだけでも、アリスは震え上がった。
そして、その震えが原動力となり、アリスがビリー、キングブレイジオン、それにトライブを次々と見つめた。
「というわけで……、ここに私たちアレマ領の平和を守るヒーローが二人、揃いました!
しかも、かたやキング、かたやクイーンです!」
「たしかに……」
ビリーが呟くと、アリスは自信たっぷりにうなずき、それから二人の戦士を同時に見た。
「今ここに、王室騎士団を結成します!
アレマ領に、キングとクイーンの力を貸して下さい……!」
「えっ……、アリスさぁ。
ここ、バルゲートの属領なのに……、ロイヤル……?」
「細かいことを気にしすぎです、ビリー」
アリスが頭の後ろで手を組みながら笑う中、トライブとキングブレイジオンが同時に手を伸ばし、「よろしく」と声を掛けた。
召喚された関係とは言え、アレマ領主に任命された二人は、新たな道を歩き始めようという意思を見せた。
「ところで、アリス。
まだトライブを召喚できてたんだ……」
「あ……」
アリスは、ビリーに言われるまで気付かなかった。
召喚から13分経っても、まだトライブをそのまま召喚できるほど成長していたことに。
ここに、キング&クイーンの王室騎士団、誕生!
領主アリスたちとともに、その力で平和を守る戦士たち!
3月までは火・木・(日)更新です。
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