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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第1期 自分の方が偉いので元上司の最強女剣士を召喚することにしました
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第9話 新しい仲間を召喚したい!④

「ほぅ。こんな巨大なブラックファウンテンと戦うつもりですか。

 剣士で……。それも、たった3分で……」


「なんで知ってるんですか……!」


 アリスが手を空に伸ばそうとすると、「ネオ・アレマ解放戦線」の男性は軽く笑い飛ばした。

 アリスは目線だけを背後に回し、鋼鉄の体を睨みつけた。


「残念だったな。

 『ネオ・アレマ解放戦線』内で、緻密な情報共有が行われているもんでな。

 領主が女剣士を召喚することくらい、とっくの昔に分かっていた」


 ここで、鋼鉄の男性がアリスを鋭く指差す。


「だから、私たちとしても、女剣士が勝負にならないような兵器を作らざるを得ない。

 もちろん、キングブレイジオンにも対策を取っている」


「キングブレイジオンが炎だから、まさか噴水から本当に水を吐き出すとかですか」


「……あぁ、その通りだ。

 お前さえ滅ぼせばアレマ領が手に入るから、あえてここで手の内を明かした」


「つまり、私は溺死すると」



 アリスは、真面目に答えたつもりだった。

 だが、ビリーと鋼鉄の男性が一斉に吹き出して、ほぼ同時に「おいおい」と突っ込んだ。


「お前が死ぬとしたら、踏みつぶされることだ。

 ついにで、女剣士にも簡単に踏みつぶされていいのだが」


 すると、ビリーがアリスに叫ぶ。


「アリス!

 ブラックファウンテンの噴射能力はそんな高くない!

 だから、ジルを出せば、たぶんあっさり勝てそうな気がする!」


「自分もそのつもりでした……!」


 アリスの返事に慌てたのは、鋼鉄の男性だった。

 キングブレイジオンを召喚することができない、イコール魔術師を召喚できないと思い込んでいたからだ。

 アリスは、鋼鉄の男性を指差す。


「いいですか。

 私は、女剣士を呼び出すなんて、一言も言ってないですからね」


「一種の誘導尋問か……。

 それで、噴水攻撃を引き出すなんて、卑怯と言ってもいい!」


「分かりました。

 そんな卑怯者の領主が、炎の魔術師を呼びましょう」


 アリスは、手を空にかざし、ビリーと二人で考え付いた詠唱を叫んだ。



「歌姫さえも舞い躍らせる、炎の奏者よ。

 いま、我が声に応え、この地を正義の劫火(ごうか)に包み込め!」



 アリスの手には、何一つ力を感じなかった。

 トライブの時には感じられたこの段階での強い引力が、ジルの詠唱では全くない。

 声が届いていないのかは最後まで分からないが、アリスは召喚の結果を焦っていた。


「召喚! ジル・ガーデンス!」



 青白い光がアリスの前に現れたが、その中には何も映っていないか、映っていてもシルエットの薄い人間でしかなかった。

 少なくとも、その中に映っているのがジルのようには見えなかった。


「お姉ちゃんの力さえあれば……!」


 どんな強敵も、いとも簡単に焼き尽くしてきたジルの姿をイメージしながら、アリスは祈り続けるしかない。

 青白い光の中に、呼び求める者の姿が見えるまで。

 だが、その期待は、たった一つの声とともに崩れてしまった。



――嫌だ。アリスに呼ばれるなんて、恥。



「お姉ちゃああああああん」


 アリスは、ゆっくりと手を下ろした。

 呼び出す者から拒否された青白い光が、消えていく。



「何やってるんだ、領主。

 出てこなかったじゃないか!」


「そ……、それは……」


 アリスは、鋼鉄の男性の低い声に震えながら振り返った。


「呼び出すと言ったよな。炎の魔術師を……」


「あの……、正直に言うと、ケンカしたんです」


「アリス、ケンカという軽い言葉で片づけるなよ!」


 本当の事情を知っているビリーが、思わずツッコミを入れる。


「まぁ、召喚術にありがちな落とし穴だな。

 さぁ、もう足で踏みつぶされる時間だからな……」


 鋼鉄の男性が手を挙げると、ブラックファウンテンが大股で動き始め、アリスたちに近づいてきた。

 そこでアリスが大きな声で「ちょっとストップ!」と叫んだ。


「なんだ。

 今度はどういう理由でストップだ?」


「あの……。

 もう一人、炎の戦士を出してもいいですか……?」


「まさか、キングブレイジオンじゃないだろうな」


 アリスは、正解か不正解かを告げることなく、ため息をついた。

 片想い中の相手なら、姉妹の仲が完全に崩壊したジルと違って、振り向いてくれるはずだ。



「勇ましき炎を纏う、紅炎の王者よ。

 その手から繰り出される炎は、邪悪なる魂を焼き尽くすためのもの。

 いま、この声に応え、その使命を果たせ……」


 アリスの脳裏には、キングブレイジオンの涼しそうな表情が浮かんでいる。

 その姿に、アリスが一瞬でぞっこんになり、コスプレや声真似までするほどに吸い込まれていった。

 そして今、アリスの手には、少しずつキングブレイジオンの力が集まっていくように感じられた。


 時は来た。


「召喚! キングブレイジオン!」



「他人が召喚する対象を呼ぶのは、禁じ手だっ!」


 鋼鉄の男性が、アリスを怒鳴りつけた。

 だが、アリスは鋼鉄の男性の声に振り向くこともしなかった。

 アリスの目の前に現れた青白い光に、キングブレイジオンが転送されることだけを祈った。


「お願いします……」


 青白い光の中に、キングブレイジオンのようなシルエットが映った。

 全身が金属に覆われ、今にも炎を放ちそうな体が、その中にいるように見えた。

 アリスは、キングブレイジオンを召喚出来たと、はっきりと確信した。


 だが、それは早すぎた結論だった。

 中にいたシルエットが、かすかに首を横に振ったのだった。


「えっ……?」


「アリス……、やっぱりダメなんだよ。

 他人に従っているキングブレイジオンを召喚するのは……」


 徐々に小さくなっていく青白い光を前に、アリスはうなずくしかなかった。

 直後に鋼鉄の男性がかすかに笑った声を聞いて、力なく振り返った。


「横取りはダメでした……」


 すると、鋼鉄の男性が体を震わせながら、アリスの前に出た。


「……こんなバカを相手にするなんて、思わなかった。

 成功するわけない召喚を2回もやって……、やっぱり成功しなかったじゃないか。

 ただの時間稼ぎか……」


「いいえ……。

 ただ、私が自分の召喚スキルを過信しただけです」


「過信か……。

 言い訳も、そのくらいにしろ!」


 鋼鉄の男性は、ブラックファウンテンに合図を出し、ブラックファウンテンがさらに一歩、二歩とアリスたちに近づいてきた。

 今度こそアリスたちを踏みつぶそうとするような目だ。


 この状況では、アリスは震え続けるしかなかった。



「ビリー……。

 私、どうすればいいんですか……」


 アリスの服は、ほぼ真っ黒だった。

 体にも黒い気体が入っているかも知れない。

 そして、勝ち目がない相手にアリスの召喚術は無力で、踏みつぶされるしかない現実。

 頼りにしているはずのビリーから帰ってきた言葉は、この一言だった。


「運命を受け入れよう」


 アリスは、ついに目を閉じた。

 ブラックファウンテンの迫る音だけが、耳に聞こえる。

 だが、その音を突き破るように、アリスの中で一つの言葉が蘇った。



――諦めたら、何もかもおしまいなのよ!

  勝てるかも知れない相手にも、諦めた瞬間に勝てなくなる!



「ソードマスター……」


 それは、女剣士トライブが自らを奮い立たせるときに叫び、そして他の剣士に対しても事あるごとに告げてきた、一つの信念だった。

 アリス自身も、その言葉でピンチをひっくり返したこともあった。


「私には……、まだソードマスターが付いている……。

 3分でブラックファウンテンに勝てないと決まったわけじゃない……!」


 アリスはビリーの手を引っ張って、いったんブラックファウンテンから身を離した。

 そして、ブラックファウンテンが向きを変える隙に、手を高く伸ばした。


「私には……、もう一人召喚すべき人がいます!」

巨大なブラックファウンテン相手に、女剣士が立ち向かう……?


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