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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第1期 自分の方が偉いので元上司の最強女剣士を召喚することにしました
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第9話 新しい仲間を召喚したい!①

 アリスがアレマ領の領主になってから2ヵ月近くの歳月が流れた。

 「領主のアリスがお菓子に困っている」という情報は、アリスの知らないところで領土全体に広がっており、来る日も来る日も領民からわずかばかりのお菓子を差し出されるようになった。


「ありがとうございますっ!

 お菓子を食べるの、私の生きがいですから……!」


 お菓子が入ってくるようになったので、アリスはあまりサイドビジネスに手を出すことなく、領主の館2階にある書斎にこもることが増えていった。

 調べているのは、半月ほど前にシーショアの街で出会った「ネオ・アレマ解放戦線」についてだ。


「結構、ヤバいことやってる……」


「アリスが……、じゃないの?」


 洗濯物を取り込んだビリーが、たまたま書斎の前を通りかかり、アリスの独り言に反応した。


「私だって、ヤバいことやってますよ。

 でも、この解放戦線さん、いろいろ悪事をしてます……」


「へぇ……。ちょっと貸して」


 アリスがビリーに手渡したのは、「領主グレアードの執務日誌」だった。

 書斎に眠っていたたくさんの本の中から、アリスがようやく見つけ出したものだった。

 5年前、グレアードが領主だった頃、ほぼ毎日のように「ネオ・アレマ解放戦線」が領内のどこかの街で破壊行為を繰り返していた、と記されている。


「この前会った時も、結構強そうな剣を持っていたけど、見るからに強そうな武器を持ってるじゃん」


 グレアードは、文章の横に彼らの姿を、重い出せる限り自筆のイラストで載せている。

 そこには、先日のアイロンエッジもさることながら、より殺傷能力の高い短めのナイフなど、出会うだけで恐怖に感じる武器がいくつも出ているのだった。


「怖いです……。

 また彼らが本気を出して来たら、バルゲート以上に恐ろしい存在になりそうです」


「じゃあ……、アジトを突き止めるしかない?」


「今は……、よしておきます」


 アリスは、ビリーから目を離して天井にため息を吹きつけた。


「どうしてだよ、アリス。

 ここで『ネオ・アレマ解放戦線』を潰せば、今までのバカ領主の評価が一気に爆上げすると思うけどな……」


 ビリーの言葉に、アリスは右の人差し指で自分を指差した。


「おバカ認定されなくなったら、私は私じゃなくなると思います。

 ただのつまらない女の子になると思います」



「まぁ、それが正論だけどな……」



 ビリーが相当に言葉を強めたものの、アリスはそれを否定しなかった。

 逆にビリーが「そこ突っ込めよ」と言いそうになるほどだった。


「それに……、今の私には、解放戦線さんを倒せるような力はありません」


「『剣の女王』を出せるじゃん。

 どんな奴も相手にならないあの力があれば、簡単に倒せそうな気がするけど……」


「ソードマスターは、今の時代の人じゃないって、少なくともこの前会った人にはバレてますよ。

 私が召喚したソードマスターが消えたら、また普通に悪さをすると思います」


「そうだよな……。

 ただでさえ、トライブを召喚できる時間だってあるわけだし……」



 今のところ、アリスのスキルではトライブを3分間しか召喚できない。

 その間に「ネオ・アレマ解放戦線」の全ての兵士や、それを支配しているような存在を倒しきることは、いくらトライブであっても難しいのだった。

 全滅させなければ、無防備になったアリスたちで戦うしかない。

 トライブが剣士故の、辛い現実だった。



「というわけで、私は……、魔術で攻撃する戦士を召喚したいんです。

 だから、できるならキングブレイジオンを……」


「またそこにいくわけ?

 別の人が召喚してるんだから、アリスには無理なんだって」


 コスプレ用のかつらをビリーに捨てられて、はや10日。

 それでも、アリスは思い出すたびにキングブレイジオンになりきろうとしているのだった。


「てか、アリス。

 僕、前にも言ったじゃん。

 召喚に使われる魔力には、召喚される存在の意思が関わってくるって」


「言ってました……。三点セットだったか、そういうあたりで……」


「だろ。

 トライブは、アリスと一緒に過ごしてきたこともあって、アリスの声にちゃんと応えている。

 でも、キングブレイジオンのような全く赤の他人だったら、そうはいかないと思うんだ」


 アリスは「はぁ……」と小声で返す。

 「オメガピース」で、アリスが友達だと思っていた存在が、あの日立て続けに「アリスの追放」を支持したことを思い出さずにはいられなかった。


「あの……、ビリー……、いいですか……」


「どうしたんだよ、急に暗い表情になっちゃって。

 僕の言葉で、お先真っ暗にでもなったのかい」


「いや……、お先真っ暗になったわけじゃないんです。

 私にも、炎の魔術を使える知り合いがいるんです……」


「それって、アリスのお姉さん?」


 アリスは、ビリーに向かって息を飲み込んだ。

 ジルの名前を出したことがないのに、何故か気付かれているのだった。


「なんで分かったんですか……?」


「ほら、キングブレイジオンに話しかけたじゃん。

 お姉ちゃんと勝負して欲しい、とか何とか……。

 あれで僕、アリスの姉が炎の魔術師なんだってすぐ分かったよ」



――お姉ちゃんと力勝負して欲しい……!



「あー、たしかにあの時言っちゃってますね、私……」


「つまり、トライブ以上に血のつながっている姉を呼べば、キングブレイジオンと同じくらいの炎を放てる」


 ビリーが、そこまで言い切るとアリスの目を見つめる。

 その表情が、アリスにはどこか憎らしく思えた。


「お姉ちゃんは……、私を『オメガピース』から追放した張本人ですよ……!

 たぶん……、私のことを自分の妹って認めたくないから……、同じ組織にいた私を引き離したと思います」


「それは分かるよ……。アリスがバカな妹に育ったんだから。

 でも、血がつながっている以上、アリスを完全に見放すことはないと思うけど……」


「たしかに、そうだけど……。

 お姉ちゃんと私、使える魔術の数だって、威力だって、全然違うから……、見劣りしちゃ……」



 ビリーが「それはおかしくない?」と言いたそうな表情を浮かべたところで、アリスは言葉を止めた。


「アリスさ、自分を信じられなくなったら、本当のバカだからね。

 今までのような、私はバカな人間として生きていくとか、そういう前向きな姿こそ、アリスじゃないのかな」


「そうかも……。

 ちょっと、辛い思い出が蘇って来ちゃって……、つい……」


 アリスが素直に答えると、ビリーの表情も元に戻った。


「だから、もし『ネオ・アレマ解放戦線』を倒したいならさ……、

 アリスがそのお姉ちゃんを召喚できるように努力すればいいじゃん。

 キングブレイジオンを、あの青年から奪うよりは、ずっとはっきりとした召喚のイメージができると思う」


「分かりました。

 詠唱とか考えてみます……」



 気が付くとアリスは、グレアードの作った執務日誌を閉じていた。

 することをビリーに教えられた今、そこから逃げる訳にもいかなかった。

 だが、そこにビリーからさらなるアドバイスが入る。


「ところで、アリス。

 後々の領主のために残す『領主アリスの執務日誌』、ちゃんと書いた?」


「ギクッ……」


 アリスの息が上がるのを合図に、ビリーは執務日誌が置かれている書棚の一番端、本がまばらなところに手を伸ばした。

 背表紙にはアリスのサインが描かれており、明らかにアリスの日誌だと分かるものだった。

 とても毎日1ページずつ増えていったような枚数ではない、薄っぺらい日誌を、ビリーは声に出して読んだ。


「『4月26日。テラスおばさんからおいしいクッキーをもらった。あー、幸せ、幸せ……』。

 ……って、こんな文章見たら、ただ食べるだけの領主ってバレバレだよ!」


「自分を信じて、って、ビリー、さっき言ってましたよねー」


 アリスの鋭いツッコミに、ビリーは言葉を返せず、アリスに聞こえないようにため息をつくしかなかった。

アリスは、第9話のタイトル通り新しい仲間を召喚できるのでしょうか?


応援よろしくお願いします!

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