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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第1期 自分の方が偉いので元上司の最強女剣士を召喚することにしました
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第7話 じゃんけん大会に正義のヒーローがやってきた⑤

『さぁ、来い! キングブレイジオン!』


「臨むところだ!」


 アングリータイガーとキングブレイジオンは、巨大化したアングリータイガーが走り出せば、ものの3秒もかからないうちに届いてしまうほどの距離だ。

 つまり、仮にキングブレイジオンが炎の魔術を使えるにしても、普通の魔術師であれば、まず詠唱が間に合わずに攻撃されてしまう。

 だが、全く動じないキングブレイジオンの後ろ姿は、それを全く感じさせない。

 アングリータイガーの足が動くと同時に、メタルスーツから炎が湧き上がった。


「何も言わずに、炎を出した……!」


 キングブレイジオンの炎は、すぐに炎のオーラとなり、その体を包み込む。

 アリスたちの立つ路地前でさえ、気温を10℃くらい軽く上げてしまいそうな勢いだ。


 アングリータイガーの体は、その炎に臆することなくキングブレイジオンに迫る。

 だが、そこにキングブレイジオンが強く叫んだ。



「炎よ、我が怒りに共鳴せよ……」


 キングブレイジオンを包み込む炎のオーラが右手に集まり、火球へと変わっていく。

 その火球は、時間を追うごとに大きくなり、やがてアングリータイガーの体の大きさまで膨れ上がった。


勇敢なる炎フレイム・ヴァリアント発射ファイア!」


『なにぃ……!』


 キングブレイジオンの右手から、炎の渦がアングリータイガー目がけて、音を立てて放たれた。

 アングリータイガーは、キングブレイジオンの一撃をよけようと体を左に反らすが、キングブレイジオンの解き放った炎が、相手の逃げた場所に向きを変えていく。

 まるで、炎が意思を持っているかのようだ。


『グアアアアアアアアッ!』


 ボオオオオオオオッ!


 一瞬で焼き尽くす。

 そのために放たれた炎と言ってもいいほど、アングリータイガーがなすすべもなくその中で灰になった。



「すげぇ……!」


「すごい……」


 アリスたちは、目の前であっけなくついた勝負に胸をなでおろす。

 キングブレイジオンの放った炎の残像が、二人の目にまだ焼き付いていた。


 キングブレイジオンが体の向きを変え、アリスたちの視線と一直線になる。

 ついに、キングブレイジオンと会話できるチャンスがやって来た。


「キ……、キングブレイジオン……、強すぎるのにカッコよくて、私、すごく尊敬します!」


 すると、キングブレイジオンはフッと笑った。


「あっけなかったな。マックスの10分の1も出せていない。

 俺の本気は、こんなものじゃない……」


「ぜひ見たいし……、お姉ちゃんと力勝負して欲しい……!」


 アリスは会話を引き延ばそうと、元の世界で「オメガピース」から追放したジルを引き合いに出す。

 だが、キングブレイジオンは人の気配に気付き、アリスから目を離し、顔を左に向けた。

 その目線の先から、緑色の長髪を揺らした30歳前後の男性が近づいてくる。


「探したよ、キングブレイジオン。

 邪悪なる魂がどこにもいないって、突然消えるから、召喚した身としても心配したよ」


「すまなかった。

 だが、倒さなきゃいけない相手はこの通り。

 俺があっさり焼き尽くした」


「すごい……。

 キングブレイジオン、いつも強いんだから!」


 アリスは、緑髪の青年とキングブレイジオンを交互に見つめるが、青年がうなずくと、すぐにキングブレイジオンに手を向けた。

 そして、「3……、2……、1……」と声を掛け、キングブレイジオンをその場から消してしまった。


「そんなぁ……。

 キングブレイジオン、プランテラの人じゃなくて、召喚だった……」


 アリスが呆然と立ち尽くすと、緑髪の青年はアリスたちには目もくれず、来た道を引き返した。

 そこに今度は、ネクタイをした一人の男性が、中央公園の方から駆けてきた。

 ネクタイには、獣の足で引っ掻かれた跡があり、アリスが双眼鏡で見た時の記憶に頼ることなく、明らかにじゃんけん大会の司会だった。


「あの……、獣を倒したキングブレイジオンさんは……、どこに行かれましたか?」


「召喚で呼ばれたので、さっき消えました」


 アリスは、緑髪の男性が振り向かない代わりに、自分で真実を告げた。

 すると、司会は残念そうな表情を浮かべてため息をつく。


「もし、この世の人であれば、せっかくなので景品のチョコを差し上げようと思ったのですが……」


「ん……?」


 固まっていたアリスの体が、司会の言い放った言葉で突然動き出す。

 たしかに、司会の腕には紙袋があり、その中にはアリスたちが見覚えのあるチョコレートの箱が3箱ほど入っていた。


「あの……、私、召喚術が使えるんです。だから、キングブレイジオンは私がしょ……」


「スト――――ップ!」


 アリスが肝心なポイントを言いかけたところで、ビリーがアリスと司会者の間に入り、仁王立ちした。


「どうしてですか……。イケメン炎使いとチョコが手に入るんですよ……」


「参加者の召喚以上に、それやっちゃったらダメだから」


 ビリーはアリスを止めると、アリスの前に立って司会に説明した。


「あの……、司会者さん……、キングブレイジオンを呼んだのは、あの小さく見えている緑髪の青年です。

 チョコを上げるとしたらそっちです」


「ありがとう。いいことを教えてもらいました」


 司会者は緑髪の男性に何とか追いついた。

 事情を説明している声が、アリスたちの耳にかすかに聞こえる。

 そして、司会はその男性に3箱ともチョコレートをあげてしまった。


「悔しいいいいいいいいいっ!」


 アリスは、今度こそ体から力が抜けていきそうと言わんばかりに、膝をついて、それから両手をついた。

 最後の希望だったはずの、本物のじゃんけん大会の賞品も、残り全てが「ヒーローを召喚した人」に消えていったのだから。


 だが、ここでルドルフの母親がアリスの前に立ち、膝をついたアリスに目線を合わせるように、膝を曲げつつ体を前に出した。


「もし、あなたたちがルドルフを召喚しなかったら、今頃私たちは公園で大変なことになっていたかも知れない。

 召喚そのものはよくないけど、召喚したことで私たちの命が助かったと考えれば、今回は見逃しましょう」


 すると、ルドルフがじゃんけん大会で獲得したロッジ食品のチョコレートの箱を、母親が手に取った。

 それから、アリスとビリーに向かって「1個ずつどうぞ」と差し出した。


「えっ……、いいんですか……?」


 アリスは、息を飲み込んだ。

 よだれが出てきそうだ。

 あれだけイオリ草を売ったのに、バルゲート本国の事情を何も知らなかったがために、ロッジ食品のチョコレートを1箱も食べずに終わった。

 そんなアリスに訪れた、まさかの奇跡だった。


「アリス、この赤い包みのやつ、おいしいから食べてごらんよ」


「ですね……。

 たぶん、このセットは領主の館でも見たことないです」


 アリスは、ビリーに言われたチョコレートを箱から取り出し、口に入れた。

 すると、ルドルフの母親の表情が再び曇った。



「いま、領主の館って言いませんでした?」


「はい、私がアレマ領主です……。あっ!」


 アリスは、自ら墓穴を掘ってしまったことに、ここで気が付いた。

 ルドルフを路地に召喚してから、一言も自分の身分を明かしていないことに、アリスはこの時に気付いた。

 ただ、もう遅かった。


「結果として、領主が誘拐するほど、アレマ領の治安は乱れているようね。

 もう少し、マシな領土にして欲しいわ」


「はぁい……」


 ルドルフの母親にやっぱり怒られたアリスは、母親から目を反らし、キングブレイジオンが戦っていた大地に目をやった。

 そこには、キングブレイジオンが灼熱の炎を解き放っているかのような熱い空気が残っていた。

突然出てきた新ヒーロー、キングブレイジオン。

その正体は、時期に明らかになります。

今のところ他人の召喚ですが……。


第8話は新年1/10から始まります!

応援よろしくお願いします!

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