表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第1期 自分の方が偉いので元上司の最強女剣士を召喚することにしました
29/240

第6話 潜入!バルゲートの首都④

 アリスは、両手にお菓子の袋を持った状態のまま、腕をバルゲート兵に掴まれて、アリスがバルゲアに入った場所まで連れて行かれた。

 バルゲート兵はアリスの袋やバッグを取り上げ、アリスをその場に立たせたまま、護衛のところに向かった。


『ウィズ。この女に見覚えはあるか』


『ある。行商でこの街にやって来たって言ってた』


『この女に、不審な動きはなかったか』


『最初来たときはスプレー缶を持っていたけど、それが野菜にすり替わる、奇妙な真似をした』


 完全に筒抜けになっている会話に、アリスは息を飲み込むしかなかった。

 会話の内容が完全に事実なだけに、アリスは遠くから言い返すこともできない。


『で、こいつはバルゲート本国の人間か。それともよそ者か』


『よそ者って言ってた。

 アレマ領と言いかけて、よそ者と言ったはず』


「ああああああ!

 そこまで聞かれてたあああああ!」


 アリスは、護衛たちに聞こえないくらいの声で、真っ青になった。

 この数時間でアリスがやったことが、否応なしに思い出される。


『ということは、この女が、スワール領特産品のチョコレートを密かに持ち出そうとしているのは確定か』


 二人が同時にうなずくと、バルゲート兵がアリスの前まで戻ってきた。


「どうやら、チョコレートの没収だけでは済まないようだな」


「えっ、そもそも没収ですか……。

 行商の売上金で買ったのに……!」


「その証拠になるものはあるのか。まさか、店から盗んだとかじゃないよな」


 バルゲート兵の口調が、徐々に強くなる。

 アリスは「盗んでません」と言いたかったが、あれだけの量の箱をどう持てばいいのかだけに夢中になり、レシートを受け取ることを忘れていた。

 だが、バルゲート兵はすぐにアリスの盗みを断定しない様子だ。


「おそらく、あのお店だということは間違いない。

 店に確認してくる」



「どうしょう……」


 アリスは、それ以上のことを詮索される可能性に怯え始めた。

 店にあるロッジ食品の商品を買い占めた時点で、店の人には個数まで記憶に残っている。

 そして、アリスがいま手元に持っているのが13箱。7箱は召喚でビリーに渡している。


 その事実は、10分も経たないうちにバルゲート兵が掴んでしまった。


「20箱も持ち出そうとしたのか。

 店が仕入れたロッジ食品のチョコレート、全部らしいな」


「は……、はい……。おいしくて……」


「おいしくて……、か。

 そんな単純な動機でないことも、もうお見通しだ」


「ふぇ……」


 アリスは、動機という言葉を聞いた瞬間、右手で口を塞いだ。


「買収できなかった仕返し、って言ったじゃないか」



 終わった……。


 アリスは、その場で崩れ落ちそうになった。

 言うまでもなく、7箱召喚で持ち出したことも、店から聞いたのだろう。

 店が召喚用にとバッグを用意したのだから。


「とりあえず、お前の容疑は固まった。

 あのチョコレート、7箱を召喚でバルゲート外に持ち出し!

 そして、バルゲートと取引関係のあるロッジ食品の買収計画を企てた!

 間違いないな」


「はい……。すいません……」


「すいません、で済むならルールはいらない。

 召喚術の悪用という禁じ手を使ったお前には、獣刑という罰を受けてもらうしかないようだ」


 すると、バルゲート兵が右手を真っ直ぐ伸ばし、告げた。

 このバルゲート兵も、召喚術が使えるようだ。



「天を舞い、幾千もの生命を従える輝緑(きりょく)の翼よ。

 聖なる都を守る力を、我らに授けたまえ。

 そして、邪悪なる力を滅ぼす風の先に、未来を(とも)せ」


「召喚……。しかも、空を飛ぶものが現れそう……」


 アリスは、バルゲート兵に続いて召喚を始めようとしたが、そこで一瞬だけ手が止まった。

 剣士にとって、地面から離れているものを相手にすることは、かなり苦戦を強いられる。

 それが、歴戦で敵を圧倒してきたトライブであっても。


 対するバルゲート兵は、ためらうアリスを全く気にすることなく、最後の祈り(ラスト・スペル)を告げた。


「召喚! エメラルドスカイハンター!」


 アリスの目の前ではなく、頭上から召喚の証である青白い光が舞い降りた。

 大きな翼を広げたシルエットが、はるか上空に現れる。

 それがはっきり見えたとき、アリスは息を飲み込んだ。


「大きいし……、強そう……」


 夜空に向かって、輝く緑色の胴体を見せたエメラルドスカイハンターが、空からかすかに羽ばたいただけで、地上に鋭い風が吹きつける。

 目を開けるのもやっとだ。

 そこに、バルゲート兵がアリスに向かって叫ぶ。


「さぁ、罪人よ。

 召喚術が使えるんだよな。

 この鳥を倒せるだけの刺客を、送り届けるがよい」


 そう強く言われたアリスは、うなずくしかなかった。


「やるかしかないですね……」


 アリスは、手をゆっくりと空に向ける。



「不可能を斬り裂く風を呼び、未来へと導く光を纏う、剣の女王よ。

 我が大地の命運を、いまその腕に託す。

 その魂が許すなら、我が声に応え、凛々しくも勇ましき一撃を下せ。

 そして、この地にもたらせ! (けが)れなき、正義の輝きを!」


 アリスの目の前で、青白い光が浮かび上がる。

 エメラルドスカイハンターの翼が奏でる風がその光を揺らすが、アリスの祈りは風で消えることはなかった。

 召喚できなければ、間違いなく死ぬ。

 アリスは、最後の祈りを叫んだ。


「召喚! トライブ・ランスロット!」



 青白い光の中から、金色に輝く髪がかすかに浮かび上がり、徐々に長身の女剣士が姿を現す。

 それを見たバルゲート兵が、かすかに笑う。


「なんだ。

 空を舞う獣を相手に、そっちは女剣士か……。

 あっさり勝負が付くようだな」


「それでも、私の女剣士は、戦うはずです!

 空を飛ぶ敵でさえ、いくつも倒してきました!」


 アリスがそう言い放った時、光がフェードアウトし、トライブがそこに立った。


「嫌な雰囲気ね。

 アリス。敵はどこにいるの」


「上です……」


 アリスの指差す方向に、トライブは顔を向ける。

 そこに、エメラルドスカイハンターの強い羽ばたきが二人に襲い掛かった。


「くっ……」


 トライブは腕で風を遮りながら、アルフェイオスを鞘から抜き、空に向ける。


「空を駆ける猛獣かしら?

 敵はここにいるわ。かかってらっしゃい」


 すると、上空で『フワァ~!』と鳴く声がはっきりと響いた。

 剣を向けたトライブをじっと見つめ、攻撃のタイミングを伺っているようだ。

 そこに、バルゲート兵が静かな声で言い放つ。


「やれ」


 その声を合図に、エメラルドスカイハンターの翼が強く羽ばたき、トライブの立つ大地に突風が襲い掛かった。

 アルフェイオスを真っ直ぐ構えるトライブも、やや体を後ろに反らされる。

 トライブの後ろで縛った髪が、今にもほどけそうなほどに風で激しく揺れる。

 その中を、エメラルドスカイハンターが急降下した。


 「剣の女王クイーン・オブ・ソード」vs天空を駆ける翼。

 勝負が始まる。

ドジばっかりやらかしたアリスの運命は、このバトルに託された!?


応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ