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追放兵士、領主になる  作者: セフィ
第2期 爆誕!無敵の王室騎士団(ロイヤルナイツ)
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第23話 アリスが寝ている間の出来事①

 南海岸でのバトルから数日後、アレマ領を北上したアリスたちはグロサリの家の前に立った。


「なんか、いつになく静かですね……」


「農園にでも出てるんじゃない?」


「でも、もう夕方ですよ……?」



 アリスは、電気の付いていない家を一周し、どこにも人の気配がないことを察した。

 ビリーも農園に出向いたが、そこにも誰もいなかった。


「グロサリさん、いた?」


「いないです。

 あっ……、分かりました!」


「アリス、なんか変な手掛かりを掴んだんじゃないだろうな……?」


 アリスがポンと手を叩くのを、ビリーがどこか不安そうな表情で見つめた。


「はい。これは誘拐です」


「誘拐……ってさ、普通、あんな年齢の女性を誘拐するの?」


「はい。

 アレマ領特産品のイオリ草と、それを使ったレシピをたくさん知っている貴重な人間です。

 私がだいぶ前にバルゲアで売った時も、イオリ草は人気だったから、バルゲート政府も目を付けたんです!」


「なるほどね……、ってバカ!」


 ビリーは、アリスを笑いながら見つめる。


「それだったら、普通はグロサリさんじゃなくて、収穫間近のイオリ草だったり、倉庫に入ったイオリ草だろ。

 それか、苗をバルゲートに持って行く。そうするのが普通なんじゃないの?」


「ビリー、グロサリさんには死亡保険金10万リアがかけられてるんですよ?

 十分、犯行動機になり得ると思います」


「誘拐を通り越して、グロサリさんが殺害されたことになってるんだけど!

 誰か、このバカ領主を止めて下さーい!」



 その声に反応したのか、ビリーの背後で物音が聞こえた。リアカーをドスンと置く音だ。

 その瞬間、二人とも表情が曇った。


「あら、領主さん。今日はこちらにおいでだったのね」


「あ……、はい……。

 いま私たちは夏休みで……、ちょっとアレマを冒険しに出てまして……、今日は泊めて頂けないかと……」


 アリスは、思い浮かんだ言葉ですぐ返そうとするが、うまく言葉がまとまらない。

 だが、幸いにしてグロサリを使ってフィクションを作った部分は聞かれていなかったようで、1分経ってもグロサリが二人を不審な目で見ることはなかった。

 そしてグロサリが、手に持っていた野菜を倉庫へと持って行くと、アリスは安堵の表情を浮かべた。


「ビリー、助かったぁ……。

 もう、二度とイオリ草を食べられなくなるかと思った……」


「僕もだよ……。

 まさか、アリスが勝手に変な刑事もののストーリーを作るとは思わなかったし……」


 対してビリーは、それほど表情が晴れていない。

 倉庫に野菜をしまいに行くグロサリの姿が完全に見えなくなるまで、その目で追い続けた。


「ビリー、まだ心配してることとかあるんですか……?」


「もしかして、あれだけ野菜が残ってるということは、領主の館に行っちゃったんじゃないかって」


「あ、それはあるかも知れないですね……」


 一応、外に貼り紙はしてきたものの、領主の館を常連で訪れる「納品業者」たちには、一切アナウンスをしていなかった。

 領主の館から真っ直ぐグロサリの家に向かえば、リアカーや荷馬車を引いているグロサリと出会ってそのことを告げられるものの、今回は全く違うルートでグロサリの家にやって来たからなおさらだ。

 ビリーは、念のため怒られる覚悟で、二人の眠る離れへと入った。



~~~~~~~~



「さぁ、今日は夏野菜のカレーを作ったわよ」


「わぁ~! おいしそう~!

 館にいろいろなものが集まってくるから、あまりカレーを食べてこなかったし、

 それにここのところ、捕まえた獣の肉ばっかり食べていたから、野菜自体が新鮮で……」


 アリスは、そこまで言ってグロサリに頭を下げると、大きな口を開けてカレーを中に入れた。

 もう何度も訪れているので、アリスにはアリスサイズと言うべき大きめの器が用意されている。

 それでも、アリスは一口食べただけで、おかわりを予告するような表情を見せるのだった。


「ホント、おいしいです!

 もしかしたら、領主の館には来ない種類のカレー粉を使ってませんか?」


「そうねぇ……」


 グロサリは、膝の上に隠していたスパイスの袋を、テーブルの上に置く。


「これが、バルゲアの有名なスパイスショップで売られている、

 カリーアという、カレーがものすごくおいしくなるスパイスよ。

 今日、バルゲアで行商してきたから、いくつか買ってきたわ」


「バルゲアに行かれたんですね……!」


 アリスがうなずくと、その横でビリーがようやく安堵の表情を浮かべた。


「そう。

 バルゲア、久しぶりに行ったけど、前に行った時以上に栄えているの」


「そうなんですね……」



 アリスは、バルゲアのことよりも、テーブルに置かれた香辛料のことばかり集中が行っていた。

 袋に書かれた、カレーのレシピも目を通すなど、端から端までじっくり読んで、それから机に置いた。



「あれ?

 バルゲアって、たしか行商に来た人は街から商品を持ち出しちゃいけなかったような気がします……」


 アリスは、グロサリが買ってきた場所がバルゲアであることを思い出し、念のため尋ねた。

 ロッジ食品のチョコレートを持ち出そうとして、5ヵ月近く前に没収された記憶が、アリスの中で蘇る。


「領主さんは、スワール領のお菓子を持ち出そうとしたから没収されたのよね。

 でも、私が買ってきたこれは、バルゲート本国で作られたものだから大丈夫なの」


「なるほど……。

 じゃあ、バルゲート本国で作られたお菓子だったら、領主の館に持ち帰って食べ放題ってことですね」


「アリス、またお金をお菓子に変えようとしてるでしょ」


 ビリーがツッコミを入れると、アリスは頭を撫でて笑った。

 すると、頭を撫でるアリスの手の上をグロサリの手が撫でた。


「それにしても、領主さん、本当に素晴らしいことをしたわね……」


「えっ? グロサリさん……。

 私、何か素晴らしいことをやりましたか?」


 アリスが尋ねると、グロサリは首を縦に振った。

 よほど自信を持っているようだ。


「トンネルよ。トンネル。

 今まで山を越えないとバルゲアに行けなかったじゃない。

 あのトンネルができて、プランテラの入口から入れば、山を越えることなくバルゲアに行けるでしょ。

 あれ、行商をするの、すっごく助かるの」


「たしかに……!」


 アリス自身が前にイオリ草ビジネスをした時は、イオリ草そのものをビリーに召喚で届けてもらったため、道中を歩く時の重さは全く考えていなかった。

 だが、グロサリが一人で行商に出るとなると、野菜を持ち運ばなければならないため、バルゲート本国との間にある峠をリアカーで越えるのも一苦労となる。

 それでも、新しく開通したトンネルを使えば、階段の上り下り以外には特に苦労することなどないはずだ。


「じゃあ……、グロサリさん。

 これからまた、バルゲアでの行商をしたいんだったら、あのトンネルの階段を、リアカーが通れる分、スロープにしますよ!」


「ええええ?

 いまアリス、剣を持ってないのに、またクイーンに雑用をお願いする気なの?」


 ビリーがツッコミを入れると、アリスは笑った。


「私、バルゲートからもらったトンネルの設計図、見ましたもの。

 どの出口にも、階段とスロープがあって、それぞれ壁を外せば通れるようになってるんです!」


「あ、そうなんだ……。

 だったら、なんでいっぺんに壁を外さなかったの?

 というか、それだったらプランテラと領主の館前以外にも、そういうところ、あるんじゃないの?」


「ありますよー。

 でも、これは歴代領主だけが知ってる秘密にしたいので教えませーん!」


 アリスがビリーに告げると、ビリーの戸惑う表情を見てグロサリが笑った。

 それを見てアリスは少し腕を組み、それから再び大口でカレーを食べ始めた。



「他に作ってもらった出口……、どうしよう……」

23話ですが、この後グロサリの家で一夜を明かす間に大事件が起こります。


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