自己紹介 その6
要兄は私と御影君が話そうとすると不機嫌になる為、私にばかり話しかけてくる理由を聞けないままになりそう。
とりあえず、今は黙って御影君の後ろの席に座っていた女の子の自己紹介を続けて聞くことにした。
「えっと、それじゃあ自己紹介するね。
私の名前は心音 メアリ。
好きなように呼んでくれて構わないよ。」
遊さんはめーちゃんって言いそうだからと付け加える心音さんと、もちのろんろん☆と多分勿論と言っているのであろう簡楽さん。
後、遊さんじゃなくてちゃんがいいな☆と簡楽さんが言えばじゃあ遊ちゃんで。と返す心音さん。
お互い軽く微笑んで、心音さんは自己紹介を続ける。
「さて、ここまで自己紹介した皆は自分の異常について話していたけど、私は秘密と言っておきます!」
秘密に?どうしてなのだろうか...。
何か、言えない理由があるのかな。
「今は教えて〜と言われても、何も答えないよ。その代わり、他の質問には何でも答えちゃう!
私の異常についてはいつか私自身が話すタイミングがある筈だからちゃんとその時、教えるつもりでいるよ。」
話すタイミング...ね。疑いたくはないけど、本当に教えるのかな。
「はい!深く考えるのはナシ!自己紹介は以上で終わり!質問は自己紹介とか色々終わった後でね!」
質問を言わせる暇もなく、有無を言わせずに即座に座った心音さん。
皆は、一度だけ考える素振りをしたが、すぐにやめた。
考えても分からないから意味がないと判断したのだろう。
私も考えることをやめて、次に自己紹介をする要兄の話を聞くことにした。
✻ ✻ ✻
「自己紹介は面倒だし、苦手なんだけどな...」
仕方ないと呟き、席を立つ。
「...俺は殺裂 要。俺の次に自己紹介する藍璃桜の双子の兄だ。」
「へぇ~双子なんだ~!」
縄首さんは私と要兄を交互に見る。
納得したのか二回頷いた。
「さっきの光景見てて思ったけど、もしかしてシスコン?」
... ...疑問形...。
「シスコンって言うな。否定はしないけど。」
謎にドヤ顔をしている要兄。
「否定はしないのかよ...。」
苦労人二人目候補の二重君は突っ込む気力は完全に失ったようだった。さっきも言い返してたし...
「んで、俺の異常は『骨愛症』だ。
『骨愛症』っていうのは、俺が適当に付けた病名で...人骨や動骨が異常に好きになる病気...って言えば分かりやすいかもな。」
そう、要兄は生まれつき『骨愛症』。
人骨や動骨が好きすぎる故に、要兄は死体、死骸の骨を抜き取っている。
その数は要兄も私にも分からない。
─数え飽きてしまったから。
「へぇ...骨が好きって事は...要君が首につけている両手首の骨はただの飾りではなく、本物なのかな?」
釘刺君はずっと疑問に思っていたのか、要兄の首につけている両手の骨について聞いてきた。
「...」
要兄が首につけている両手首の骨は...
「好きな様に捉えればいいよ。これが本物だって思うならそれは本物で、偽物だと思うならそれは偽物だからな。」
...という事だから、本物に見えるか、偽物に見えるかはその人次第だって。
まあ私は本物か偽物かは知っているよ。要兄が言わない限り、誰にも教えないけどね。
「自己紹介はこれくらいでいいですか?」
「えぇ、結構よ。座っていいわ。」
先生からの許可を貰って、要兄は無言で座る。
「本当はもう一つ、要君に聞きたかった事があったけど、後から聞こうかな。」
「...それは、この左腕に巻き付けている包帯の事を言いたいのか?」
頬杖をつきながら、要兄は左腕をかかげた。
その左腕には、関節部位から指先まで包帯を巻いている。
「うん。そうだよ。」
怪我をしていたにしても、指先まで包帯を巻いていることに違和感があったのだろう。
けれど、包帯を巻いている理由は要兄は絶対に言わない。
「...ただの怪我だ。深い意味は無い。」
ほら、ね。
「そっか。教えてくれてありがとう。」
今のところは納得して貰えたようだ。
─いつか、本当の事を聞く人が現れるだろうな。
そう思いながら次に自己紹介をする順番がきたため私は席を立った。