自己紹介 その5
赤血君の自己紹介が終わり、これでおよそ半分の自己紹介が終わった。
「えっと...次は哀ちゃんの番だよ。」
縫目さんが右隣の席にいる女の子の名前を呼ぶ。
やっぱり友達同士な気がする。雰囲気的に。
「うん。分かってるよ糸花。」
フードを被っているため顔は見えないが、声色を聞くと少し気怠そうな感じだった。
手持ちのぬいぐるみを持ち、後ろを向いて話し出した。
「私は哀野。哀野 呪美。」
哀野さんか...。
「異常は呪いの類を扱うから。」
呪いの類...?有名なのは藁人形だけど...。
「へぇ~。例えばどんな呪い?藁人形?」
「まぁ、藁人形は定番だけどしたことはある。他は...言えない。」
「そっか...。答えてくれてありがとう のーちゃん!」
そーくんの次はのーちゃんか...。
もしかして...クラスメイト全員のあだ名、そんな感じの呼び方にする気なのかな?
「...私、下の名前嫌いだからやめてほしい。」
「えぇ、そうなの!?可愛いのに!?
けど、一文字だけだから!この通り!
それでもダメならちゃんと変える!」
手合わせしてお願いポーズをする簡楽さん。
呆れているのか、溜息をつく哀野さん。
「...分かった。けど、その呼び方以外はしないで。」
一文字ならいいんだ。
「了解☆」
今度は敬礼ポーズをする簡楽さんであった。
「あ、そうだ。」
思い出したことがあったのか、伝え忘れかは分からないけど、声をあげた哀野さん。
どうしたのだろうか。
「私が持っているこの人形も見た目は可愛くしているけど、呪いの人形だから。
私と糸花以外がむやみに触れると…呪われるかもね。」
言いたいことを言い終え、哀野さんは席に座った。
この後数秒間、皆が無言になったのは言うまでもなかった。
...一名、目を輝かせていたけど。
✻ ✻ ✻
「中々凄い自己紹介が続いてたね...。
さて、遂に俺が自己紹介をする番か。」
そういったのは、隣の席の彼。
先程から私に話しかけてきた子だった。
その子は席を立つ一瞬だけ、私を見て微笑んだ。
...何故、私ばかりなのだろう?自己紹介が終わった後...いや、全部終わった後に聞こう...。
「俺は、御影 斬夜。
ここに編入したのは、複数の刃物を持ち歩いているところを偶々見られて何故か異常者と呼ばれたから。
...それだけだよ。」
御影君...か。
「じゃあ、サバイバルナイフを持っていたのは、いつも持ち歩いていたから...なんだな。」
「うん。そうだよ。」
要兄がしばらく考える素振りをした。
「...そういうことなら、全回収だな。」
え...要兄?
「ん?どうしてかな?」
「何故って...危ないからに決まっているからだろ。」
確かに刃物は危ないけど...。
「それは俺以外にも当てはまらないかな?」
うん。当てはまると思う。
釘に縄にカッターにワイヤー、針は別に裁縫道具として持ち歩いていいとは思うけど、注射器に呪いの人形だし。
...あれ、危険な物を持ち歩いてるクラスメイト多いな。
「それと、はっきり言わせて貰う。
俺はお前のことを敵視しているからだ。」
「...君の一番の本音はそれでしょ。」
また敵視している要兄を見て、御影君はまた苦笑いをした。
「...御影君も要兄も、周りがついていけないからストップして。」
まぁ、実際は呆れてる人がいれば、笑っている人もいて...他の皆はただこちらを傍観していただけだった。
「御影君、要君。言い合いは後からにしなさい。
今は自己紹介の時間よ。」
先生...。
ほとんど最初から脱線していたので本音を言えば、その時から注意して貰いたかったです。
ええ。
「すみません。」
「分かりました。」
大人しくなる二人。
要兄は前に向き直り、御影君は席に座った。
「あ〜あ。もうちょっと傍観してたかったな〜。」
「でもでも!あの二人良い関係になりそうだね☆」
傍観するだけでも楽しそうね。
「はぁ...このクラスにはマシな奴がいないのか...?」
「まぁ、退屈しない人達だから良いと思うよ。」
流石異常者クラス...。
冷たい目で見る所か、面白そうにしてる。
結局、刃物の回収はしなかったけど、もし何かあればその時は即没収すると要兄がはっきり言った。
✻ ✻ ✻
これは数時間後に聞いた話。
要兄に御影君に敵視している理由を聞いたら、要兄は別に御影君の事は嫌いではないみたいだけど、私に近付かせたくないらしい。
後、会話する時の距離が近いだ〜とか、お兄ちゃんは藍璃桜に近付く男は何があっても引き剥がす〜とか言ってた。
御影君はその話を聞いて、シスコンだね〜と言った瞬間にまた要兄から敵視されていた事は言うまでもない。