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自己紹介 その4

「...はぁ。もういい。

 とりあえず今度は俺が自己紹介する番だ。」


 縫目さんの後ろの席に座っていた男の子が立ち上がる。


「俺の名前は二重 双だ。苗字呼びでも名前呼びでもいい。好きに呼べ。」


 好きに呼んでいいんだ。私は普通に苗字呼びしよう。


「はーい☆

 じゃあ早速だけど、そーくんって呼ぶね☆」


 そ、そーくん...?

 双君とかじゃなくて、そーくんなんだ...。


「いいねそれ~」


 私もそーくんって呼ぼうと縄首さんがつぶやく。


「そーくんって...」


 二重君はまた溜息をついた。けれど、さっきの言い合いでもう言い返す気力がないらしい。


「ところで、お前の異常は?」


 要兄が二重君に異常について尋ねる。


「異常だぁ?...俺は、二重人格の持ち主だ。

 それが俺の異常で此処に来ることになった理由だと思うがよく知らねぇ。」


 二重人格...物語だけにしか存在しないと思っていたけど、実在するんだ。


「へぇ、二重人格者。現実ではあまり聞かないけど、それって異常か?」


「異常かって言われたら俺的にも微妙なとこだが...。実際に見てみれば、何か分かるかもな。」


 二重君はかけていた眼鏡を外し、ふと目を閉じた。


 そして、目を開けた瞬間...


「...私がもう一人の人格です。

 私と彼共々よろしくお願い致します。」


 眼鏡を外しただけで姿は同じなのに、全くの別人のように、声も口調も変わっていた...。


 ***


 私含め、クラスメイト全員とても驚いた様子で誰も言葉を発しない。

 でも、直央先生は知っていたみたいで驚いてはいなかった。


「驚かせてしまい申し訳ございません。」


 爽やかな笑顔で謝罪する二重君。...の別人格。


「うわぁ...。すごいっていうか、何て言えばいいかな...?もはや別人だね。」


「二重人格とはそういうものです。

 ただ、普通の二重人格とは違い、彼には私の時の記憶が残っています。」


 あまり二重人格について知らないから、普通の二重人格の症状はよく分からない。

 けど、普通の二重人格と違っているということは、つまり...。


  ─通常の二重人格者はもう一つの人格者になった時、その記憶がない...?


「二重人格について少し聞いたことがあるよ。

 確か...もう一人の人格になると、その時の記憶がなく、全くの別人になるらしいって話をね。」


 二重人格について、釘刺君が簡単に説明してくれた。

 その話を聞いて何となく分かった彼が異常の理由…。


「記憶はあるし、自分の好きなタイミングで入れ替わることが出来る。俺は今までそうしてきたから、異常者だって言われたのさ。」


 眼鏡をかけ直し、最初の人格に戻った二重君。


「ちなみに、俺の方は表人格、もう一人の俺は裏人格だ。

 逆だと思うだろうが、そう覚えてくれ。」


「わかった。」


「オッケー!」


「了解。」


 みんなの了承を得て、二重君は席に座った。


「みんなそれぞれ面白い個性があるね。」


 左隣の席に座っている男の子が私に話しかけてきた。他の子にではなく、何故か私に...。


「...そういう貴方の個性は?」


「俺には面白いと思える個性がないんだ。

 だからちょっとだけ、羨ましいなと思うよ。」


「そう...。」


「君は、個性についてどう思う?」


 個性について?


「今は答えなくていいよ。けど、そのうちでいいから聞きたいな。君が思う個性について。」


「...考えてはおくよ。いつ答えが出るか、それを貴方に言えるかは分からないけどね。」


「ありがとう」


 ニコッと彼は微笑んだ。


「そこ、距離が近い。今すぐ離れろ。」


 会話してることに気付いた要兄が後ろを振り返って、彼に敵視していた。


「あはは、ごめんね。」


 ちょっと苦笑いして謝る彼には少し申し訳なかった。


「要兄...」


 ***


「さてさて、今度の自己紹介者は今まで会話に入って来なかった君の番だよ!」


 簡楽さんが指さしたその先は、二重君の後ろの席にいる白髪の男の子だった。


 確かに、今まで一度も話してない子だ。クラスの中に入ってきた時に一度見かけたけど。


「おっと、もう僕の番か。」


 彼がゆっくりと席を立ったその時、腰辺りにつけている試験管が当たった音がした。

 試験管を持ち歩いていたんだ...服で隠れていたみたいで全く気付かなかった。


「僕は赤血 白。

 僕の異常は、人の血液を採取するからって中学の時のクラスメイトに言われたよ。」


「へぇ、血液採取...それって、ヘマトフィリアって言うやつか?」


「君は双君だったね。確かに、それだけ聞いたらヘマトフィリアって思われるけどね、僕はそんなに血は好きじゃないんだ。」


「そうか。なら、ヘマトフィリアではないな。」


「えっと...じゃあ、何の為にその...血液採取を...?」


「君は糸花さんって言ってたね。」


「えっ...う、うん...。」


「僕が血液採取するのは、何かあった時の為だよ。ほら、病院で血液をストックするのと同じようなものさ。」


 それって、怪我人が大量出血して血液が不足している時の為って事だよね。今、高校生である私達が気にすることではないような気がするけど...。


「皆が察してくれている通り、主に大量出血時用だよ。...けど、この行動は他人にとっては異常なんだろうね。

 ...本当、残念だよ。」


 一瞬だけ、声が低くなった...?気の所為?


「高校生が血液採取するなんて聞かないから、異常だって思われたのかもしれないな。」


「まぁそうだね。そもそも、高校生が注射器を持つことが滅多にないから言われてもしょうがないと思ってるよ。」


 赤血君は注射器を取り出して、上に投げてはキャッチしている。


「落とさないようにね。割れたら危ないから。」


「大丈夫だよ。多分。」


 笑顔で言ってるけど、何だろう...。いつか落としそうな気がする。そういうのフラグって言うんだっけ?


「いやいや、落とす以前の問題だわ。もうやめろ。針が刺さりそうで怖ぇから。」


「しょうがないね。わかった、やめるよ。」


 投げるのをやめ、入れ物に直した。


「危ねぇから今のやつもうするなよ。」


「双君ってもしかして過保護?」


「大君も過保護だよね。というかパパ?」


「ぱ、パパ?」


「じゃあそーくんはママだ!」


「誰がママだ!」


 いつの間にか家族構成されていってる...。


「あ、もしかして注射怖いんだ?可愛い〜!」


「双君、そうなのかい?」


「違ぇよ!!」


 ...このコントはこのクラスの名物?になりそうだ。

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