自己紹介 その2
次に自己紹介をする女の子はつい先程、首を吊っていた女の子。
後ろの髪が短く、横髪がとても長いから印象的。
ただ、少し様子がおかしいような...?
「私は...」
そこで途切れた。...否。
「.........すやぁ...。」
寝た。しかも立ったまま。
「こらこら。自己紹介も終わってないのに立ったまま寝てちゃダメでしょ。」
「う〜ん...。は〜い...。」
女の子はあくびをし、軽く目を擦ってから改めて自己紹介をする。
「私は縄首 吊音っていいます。... ...いうよ?」
言い直した。
「2回言いたかったとかじゃないから...ね?
釘刺君に対してだったけど、敬語無しって言ってたから...。」
ふわぁ〜とまたあくびをする。
「私もそうした方がいいかな〜って。」
「うんうん。その方が距離が縮まるから、出来るだけ敬語無しでよろしくね!」
ポニーテールの元気な女の子は縄首さんにグッドサインを送る。
縄首さんも「りょうか〜い。」とグッドサインを送った。
「えっと...私の異常はね、みんなが知ってる通りというか...分かってる通りというか...見た通り、首を吊ること。」
縄首さんの首には未だに青あざが残っている。見ていて痛々しい。
「どこでも首を吊るからっていうのもあるけど...たまに縄をつけたままでいて、いつでも首吊りをしようとするからっていうのもあるの...。」
縄をつけたままって...。
「だから、気が付けば授業中に首吊りしている可能性もあるけどみんな気にしないでね?」
気がついた時に首吊りしてたらさすがに驚くよ。
というか、みんな止めるよ。
「授業中に首吊りするのはやめなさい吊音さん。」
「直央先生、授業外でもダメです。」
***
「さて、次は簡楽さんお願いね。」
「はいはーい☆」
ポニーテールをした元気な女の子が勢いよく立ち上がる。
その子は釘刺くんに「敬語無しでね!」って言って縄首さんにはグッドサインを送ってたテンションが高い子で私は正直苦手なタイプ。
けど、見たところ良い子みたいだし仲良くなれれば苦手意識は無くなるかな?
「それじゃあ軽く自己紹介しちゃうよ☆
あたしは簡楽 遊っていうの!これからよろしくね☆」
...結構大きい声で話すなぁ...。
私、大きい声で話すの苦手だから少し羨ましいなとちょこっとだけ思ってたりする。うん。ほんのちょこっとだけ。
「あたしの異常は楽しい!幸せ!な自傷行為☆だよ!」
楽しい...幸せな...自傷行為...?
「自傷行為するのが楽しいとか幸せに思ってるとか...やばいやつだな...。
ここでは、一番の異常者って感じがする...。」
今の話聞いて、ちょっとドン引きしている男の子がいる。
確かに、自傷行為は楽しいものとも、幸せなものとも思わないけど...
まぁ、だから簡楽さんは異常者だなんて言われたんだなと理解した。
「あたしはね、自分の身体を傷つけていくのが好きだし、痛みを感じるのが好きで好きで好きで、たまらないの☆
傷つけて、痛みを感じるのがとても幸せなんだぁ〜☆」
簡楽さんのテンションに誰もついていけなくてみんな黙って聞いているだけになっている。
「例えば、カッターの刃に穴を空けて、その穴にワイヤーを通して、それを腕とか足とかに巻き付けて絞めたりするの☆」
カッターの刃に穴...?穴に糸じゃなくてワイヤーを入れて、巻き付ける...?
どんな痛みかは知らないけど、あまり考えたくもない。
「痛みの割にはあまり出血しないんだけど、手持ちの自傷行為のうちの一つで今のところ一番やってる自傷行為かもね☆」
自傷行為って手首や腕にカッターで傷つけるイメージがあったけど、色んな行為があるんだなと何故か思ってしまった。
「あ!ごめんね!軽く話すだけのつもりだったんだけど、勢いに任せて話しすぎちゃった☆」
もう一度ごめんねと謝り、簡楽さんは座った。
反省の為か何の為か分からないけど、カッターを使って腕を切りつけようとしていたが釘刺くんに止められたので自傷行為はしなかった。
ついでにだけど、ほとんど寝かけていた縄首さんも起こす釘刺くんであった。
きっと彼はこのクラスでの(多分)一番の苦労人になりそうだなと心の中で思っていたことは秘密。