自己紹介 その1
ホームルームでは私達の自己紹介、先生の自己紹介を先にして、その後『異常者クラス』のことと大まかな学校生活についての説明をするみたいだった。
「それじゃあ改めて、先生の自己紹介をするわね。
私の名前は爪剥 直央っていうの。苗字呼びでも、下の名前を呼んでも構わないわ。」
あれ?数分前に職員室で聞いた話だと天塚 直央って名乗っていたような...。
「先生、さっき名前聞いた時と苗字が違っているけど...?」
「えぇ、さっき教えた苗字が本名よ。
だけど、実は私も異常者だからこっちの苗字の方がこのクラスに馴染む気がするの。
まぁ、好きな方で呼んでくれて構わないわ。」
先生も異常者...
苗字から察するに、先生は...
「もしかして、直央先生は...爪を剥ぐの?」
───爪を剥ぐ異常者...。
「えぇ そうよ。
もちろん人間だけじゃなくて動物の爪だって剥ぐわ。」
「先生も異常者だったなんて。」
「嫌いになったかしら?」
否、逆だと思う。
私達は異常者。むしろ先生も異常者でないと。
「まさか。先生も異常者なら遠慮なく接することが出来る。
先生もそうでなくては、クラスもまとまりませんからね。」
「あら、言ってくれるわね。」
「ふふっ...このクラスにいると退屈しなさそう♪」
「同感だね。」
「君たちと日々を過ごすとき、きっと面白そうな事が起こるわね。...と、そうだった。
貴方達の自己紹介をまだ聞いてないわ。
順番通り、自己紹介をお願いね。ちなみに、質問もありよ。」
自己紹介...
話すことないから苦手だな...。
「とりあえず、名前と自分自身の異常だけを言ってくれればそれでいいわよ。」
あ、それなら話せそう。
「じゃあ、誰からにする?」
「席順でいいと思う。」
「そうしましょうか。窓際の前の席にいる君から順番にね。」
「僕からだね。」
マフラーをしている男の子が席を立つ。
「僕の名前は釘刺 大といいます。
以後、よろしくお願いします。」
爽やかに微笑みながら挨拶をする釘刺 大君。
何だか、優等生感がある子。
「はーい釘刺くん!
早速で悪いけど、敬語は出来るだけなしにして欲しいな!私個人の話だけど、なんか硬っ苦しいの苦手だから!
...あっ、無理なら全然敬語ありで大丈夫だよ!」
あの子の名前はまだ分からないけど、学校のクラスメイトに一人は居そうな感じの子が自己紹介をした釘刺君に話しかける。
「敬語は無しで...か。難しいけど、頑張るよ。」
早速、敬語無しで話している。流石。
「あぁ、そうだ。俺の異常について話していなかったね。」
『俺』...?『僕』じゃなくて??
「なぁ、釘刺。急に一人称が変わってるけど、さっきまで僕とか言ってなかったか?」
要兄は私が気になったことをすぐに釘刺君に聞いていた。
「うん言ったよ。急に『俺』発言はびっくりした?」
「そりゃあ、かなり真面目そうなやつが急に『俺』なんて言ったからな。」
「あはは、そうなんだね。敬語無しって彼女に言われたから『僕』じゃなくて『俺』にした方がいいかなって思って変えてみたけど...
...やっぱり違和感があったかな?」
「いや、そこは好きにしていいけど...
いきなり変わったから少し驚いただけだ。」
「そっか。君の求めてた解答になったのなら嬉しいよ。
...ごめんね。大分話が逸れたね。」
釘刺君は軽く苦笑いする。
「俺の異常は、自分自身に釘を刺すんだ。
この左手に刺しているように、ね。」
そう言って、左手をひらひらと揺らす釘刺君。
その左手には通常の釘よりもかなり大きいサイズの釘が手のひらに刺さっていた。
「最初は痛かったけど、今は何ともないよ。
ずっと付けている理由はちょっと言えないけどね。」
それじゃあ、次は君だね。と次に自己紹介をする女の子に伝え、その子と入れ替わるように釘刺君は席に座り、女の子が立ち上がる。