【第7章】宇宙艦隊オッパリオン448話「怪しい匂い」
宇宙艦隊オッパリオン今回のお話は447話「怪しい匂い」
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今日のオッパリオンはラメルの爆発物探索の回。
ペロルとナデルの嗅覚を使い、レーナ隊長とケールパットはテロリストの思惑を打ち破れるのか!?
影ながらの戦いの行き着く先に待っているものは?
【四四七 怪しい匂い】
ペロルとナデルに案内されてきた場所は、ほとんど人の通りがなさそうな、本当に裏方と思われるような場所だった。そこには大きな支柱がむき出しで、壁のようになんの装飾もなく存在している。これが柱だと言われなければ、ただの壁に見える。
「ここです」
ペロルがいうと、ケールパットが頷く。
「ものを隠すには不向きの場所だが、周囲も含めて調べるしかないな。シスターズも念入りに調べるんだぞ」
「もちろんです!」
「お任せください!」
ペロルとナデルは二手に分かれて探索を開始する。
ケールパットは柱のそばに立てかけられている箱に目を向けた。
「あんなに目立つ場所にはないだろうが、あそこは俺が調べる」
「お任せします。わたしは近隣を当たってみます」
「テロリストが潜伏している可能性もある。場にはそぐわないが、ここは一般人は入らない。銃を構えてもいいだろう」
「許可を感謝します」
近くには機材置き場のような部屋がひとつあり、レーナはそこへ向かおうと思っていた。ケールパットの銃の許可は、正直ありがたいと思った。
レーナは銃を抜き、部屋の前に立つ。
部屋にはロックがかかっているのかと思ったが、レーナが扉に近づいただけで扉は自動的に開いた。
レーナは銃を構えて部屋の中に入るも、中に人の気配はなく、資材が乱雑に置かれているだけだった。その中で不審なものを探したが、爆発物に該当するような不審なものは見つからなかった。
次の部屋へ移ろうとした時、生体通信が入る。
『フレデリカです。アナスタシアと行動していますが、こちらでも不審物は見つけられず。予測箇所二カ所目です』
『レーナだ、了解した。引き続き慎重に探索を続けてくれ。こちらもまだ発見はできない』
『了解しました。しかしこれほど大きい建物に損傷を与えるつもりなら、爆発物もそれなりのものが必要になって目立つと思うのですが、どうなんでしょう?』
『どうなんだクライヴ?』
『そうですね、見たところ使われている建材も頑丈なものです。よほど強力な爆薬を使わねば崩落させることは難しいかと思います。ですが、近隣の一般人や職員に被害を与えるなら爆発を起こすだけで十分だと思えます。最悪の事態の想定になりますが、爆発物に毒物を含ませるなど、卑劣な手段も想定しておかないと……』
クライヴの想定は彼女の言葉通りに最悪の事態だった。
自分たちのナノマシンは毒物に対して一時的にではあるが防御機能がある。しかし一般人となるとそうはいかない。
やはり会場内の人々を避難させた方が……そんな案が頭をよぎる中、レーナはもうひとつの部屋をクリアリングした。ここも異常はなし。
「レーナ隊長、ちょっと来てくれ」
「わかった、すぐに行く」
ケールパットからの呼び出しがあり、行くと大きい柱のそばにペロルとナデルもいた。
「なにか見つかったのですか?」
「いや、そうではないんだがな。ナデルが嗅ぎ慣れない匂いを感じたらしいんだ」
「匂い?」
レーナは思わず首をかしげた。
「あぁ、この双子たちワンコニー星人は嗅覚に優れていてな。我々が感知できない匂いを感知できるんだ」
「なるほど。それでこの場の匂いに異変を察知したと?」
レーナがナデルを見ると、ナデルが頷く。
「普段この場では感じない匂いを感じたんです」
「爆発物の匂いか?」
「いえ……そこまではわからなくて……。ペロルお姉ちゃんはどう?」
話を振られたペロルもうーんと考え込む。そして、口を開いた。
「あまり嗅いだことのない匂いなんですけど……青いです」
「あ、そうそう、青い匂いです」
「青い匂い? なんだそれは?」
あまりにも抽象的な言葉にレーナが聞き返すと、ふたりは困った顔になってしまう。
「うぅ、青い匂い、としか言いようがありません」
「とにかく、すごく青いんです!」
これでは手がかりになりそうにないかとレーナが思った時、ケールパットはふむと頷いた。
「主任、なにか?」
「レーナ隊長、これはヒントになるかもしれない。ワンコニー星人は匂いの中に様々な情報を読み取るらしいんだ。青い……というのは、なにか染料の匂いかもしれない。ラメルには工芸品に使う染料を仕入れている業者があるんだ」
「なるほど……染料か……」
レーナが染料と爆弾の関係性を思索していると、ケールパットが生体通信を使う。
「ホマック、俺だ。ラメルに出入りする染料を扱う業者を洗えるか? すぐにピックアップして欲しい。――今部下に業者を当たらせた。すぐに見つかるはずだ」
「あの~、ケールパット主任、失礼ですが染料は爆発しないですよ?」
ペロルが恐る恐る言うと、ケールパットはにやりとした。
「いや、爆発するかもしれないぞ」
「えぇー!? 染料って爆発するんですか!?」
「まぁ待て」
「なるほど、そういうことか」
レーナがケールパットの推測を察すると、ケールパットは頷いた。
「俺だ、早かったな。五社あるだと? 青い染料を使うところはどこだ? セルマ貿易? おまえはそこの荷物の出入りを洗え。輸入元の惑星はどこだ? ……エンテミア星? うむ、あぁ知ってる。田舎の惑星だな……一応そこも洗ってみろ」
ケールパットが指示を飛ばす中、ペロルはくんくんと鼻を動かしていた。
「なにか気になるのか?」
レーナが問うと、ペロルは柱を指さす。
「ここに強く匂いが残っています。柱に染料なんてついていないのに……あ、あれ?」
「っ!?」
ペロルが指で柱を擦ると、そこから透明なフィルムのようなものがわずかにめくれ上がった。
「なにこれ?」
「ふたりとも柱から離れろ! これ以上触るな!」
「は、はひぃっ!?」
ペロルとナデルは柱から飛び退くと、ケールパットも距離を置いた。
「クライヴ応答しろ、柱にフィルム状のものが貼られていた、これがなにかわかるか?」
生体通信であったが、レーナは発声してクライヴに問う。
『フィルム? すみませんレーナ隊長、失念しておりました。過去、透明なフィルム状の爆発物が作られたことがあります』
「それが爆弾だ、主任、シスターズ」
「起爆は通信か。ジャミングを使う」
ケールパットはポーチから小型の装置を取りだし、起動させる。
「周波パターンを一致させた。こいつが通信によって起爆することはない」
ケールパットの報告の中、クライヴが続ける。
『しかしフィルム状爆薬は限られた技術です。マーラ帝国では使われていないものです』
「レーナ隊長、こいつの出所は察しがつく」
ケールパットの言葉にレーナは頷いた。
「クライヴ、この爆弾が製造できる星は……エンテミア星だな?」
『さすがレーナ隊長、よくご存じで。エンテミアの鉱山作業で開発されたフィルム状爆薬がそうです。この技術は高度なもので、今でもエンテミア星でしか作られません。しかし、まさかここに使われているとは』
レーナの頷きを見て、ケールパットが言う。
「ホマック、セルマ貿易に人員を回して代表者らを抑えろ。テロリストと繋がる。危険物密輸の疑いで捜査令状を取れ。あと、各員へ通達。爆発物の候補箇所を洗い直し、フィルム状の爆弾を調べろ」
ケールパットの指示が飛ぶ中、ペロルとナデルは顔を見合わせていた。
「もしかしてわたしたち――」
「役に立っちゃった!?」
「すごいすごい!」
「すごいすごい!」
ペロルとナデルはぴょんぴょん跳ねていたが、レーナには緊張感があった。
「喜ぶのはあとだ。ペロル、ナデル。この染料の他に、これをここまで運んだものの匂いを辿れるか? 通信で起爆するとしたらそう距離は離れられない。仕掛けた犯人はおそらく自身が巻き込まれるのも覚悟している。そういう人物は爆破ができなくなったとき、自棄的な行動にでるかもしれない。行動に移す前に抑えたい」
「わっ、わかりました!」
「お鼻がんばります!」
ふたりは再び柱に近づき、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「ペロルお姉ちゃん、なにかわかる?」
「青い匂いが強い……強いけど……なんだろう、この、焼けた石みたいな匂い」
「あ、あるね。焼けた石……火薬かな?」
「銃を持っているかもしれない」
「たぶんそうだ。その匂いが残ってる」
「レーナ隊長! 見つけました!」
「匂いが残っています!」
ふたりがこちらを振り向く。
「でかしたぞ! その匂いを追跡だ! 行くぞ! ケールパット主任も!」
「わかった。現場を再捜査させているが、同時進行で実行犯を抑えよう」
「案内します!」
「こちらです!」
レーナとケールパットは走り出したお守りシスターズに続いて走り出す。
レーナは思う。匂いしか残さなかった実行犯は上手くやったつもりだったが、嗅覚に優れたワンコニー星人がいることは誤算だったな、と。
テロの犯人たちへと迫る!?
ラメルの、そしてボタンのライブを守る為、ペロルとナデルは立ち上がる!!
桐生スケキヨ次回予告。
不審な匂いに気がつき、それを辿った先に待ち受けるものとは!?
お守りシスターズの活躍はあるか!?




