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宇宙艦隊オッパリオン  作者: スケキヨ&YOM
【第1章】宇宙艦隊オッパリオン「オッパリオン編」
11/427

宇宙艦隊オッパリオン011話「ゼータリオン起動」

挿絵(By みてみん)

宇宙艦隊オッパリオン11話目の更新です。


マーラ人の博士ミィアルーンと奈菜と共に機動兵器ゼータリオンの眠る格納庫へと向かう翔平。

アーリア達と共に戦うことを決意した翔平に何が待ち受けるのだろうか!?

今、青年は宇宙に発つ・・・!


新年も引き続きどうぞよろしくお願い致します。

【〇一一 ゼータリオン起動】


「あ、そうだショウヘイ」

 格納庫へと向かう途中、ふと足を止めたミィアルーンが振り返った。

「な、なんですか?」

「ゼータリオンを扱うための準備が必要だ。ふたつほどね。いいかな?」

「いいもなにも、それをやらないと使えないんでしょう?」

「その通りだ。ふふ、察しがいいな」

「なにをするんですか?」

「ひとつは着替え、もうひとつはナノマシンだよ。着替えはオッパリオン製の服に着替えてもらうよ。ナノスキンが様々な負荷や衝撃からキミの体を守ってくれる。ナノマシンはキミとゼータリオンを繋ぐためのインターフェースにもなるものだね」

「お願いします」

「ありがとう。じゃあこっちの部屋へ。パイロット用の更衣室になってる。中のロッカーに服が入っているからそれに着替えて欲しい。フリーサイズだからサイズは心配しないでいいよ」

「わかりました。じゃあ奈菜、行ってくる」

「うん」

 と、翔平はひとり更衣室へと入っていった。

 奈菜とミィアルーンが通路に残った。

「…………」

 奈菜にはなんとなく居づらい沈黙が訪れたが、ミィアルーンがすぐにそれを破った。

「ところでナナ女史。わたしにはひとつ気になることがあるのだが……」

「な、なんでしょう?」

「キミは母乳力を感じたことはあるのかい?」

「え?」

「いや、キミの母星にも母乳機関や母乳転換炉のようなものがあるのかどうか気になってな」

「な、ないですよ。母乳はお母さんになれば出ますけど……それ以外で出る人はあまり聞いたことがないです」

「そうなのか。いや、キミたちの遺伝子構造はオッパリオン人にかなり似ているんでね。もしかしたらキミたちにも母乳力があるのかと思ったのだけどね」

「母乳力なんて、ここではじめて聞きました」

「そうなのか。ふむ、それはそれで興味深いな。キミたちを研究すればどうしてオッパリオン人の母乳が特別なのかもわかるかもしれない」

「翔平を助けてくれたのも……あのアーリアさんの母乳でしたしね」

 奈菜からするとそれは未だに信じられない現象だった。この艦やあの機動兵器も母乳をエネルギー源として動いているらしいが、それも信じられないことだ。異星の技術とは不思議なものだと思う。

「可能であるならばキミの母乳も調べてみたいものだよ」

「わ、わたしは出ませんから……」

 ミィアルーンは好奇心で満ちた視線を隠すことなく向けてくる。

 真っ直ぐな性格なのだと思う一方で、会話ができるだけで異星人とここまで意思疎通ができるということにも、奈菜は内心驚いていた。もっと大きい文化的な隔たりがあるのかと思っていたのだが、アーリアたちオッパリオン人も、ミィアルーンのマーラ人も、どこか地球人の文化に通じるものを感じている。

 そうこう思っていると、更衣室の扉が開いた。

「お待たせしました。これで……いいのかな?」

 出てきた翔平はオッパリオン製の服に身を包んでいた。アーリアやミストレアの着ているものの意匠に近いデザインで、やはり露出が多いのが特徴的だった。

 翔平はどこか恥ずかしそうにしている。

「うむ、それで問題ない。サイズがここまで合っているのも奇跡的というよりは運命的というものかな。設計図の通りに作ってここまで合っているなんてね」

「それで本当に体を守ってくれるの?」

 奈菜が率直な疑問をぶつける。

「オッパリオンの服は総じて布面積は少ないがナノスキンが体表を覆ってくれるんだ。体温調整などもやってくれる優れたものだよ。ナナ女史もあとで着替えるといい」

「えっ、わたしもですか?」

 アーリアたちの露出から察するところ、自分もそうなるのかと思うと正直なところ抵抗があった。

「そうだよ。艦内の設備を使うにも、こっちの服装にした方が都合がいいだろうからね」

「うぅ……こ、これも異星文化交流と思えば……」

「さぁ、行こうかショウヘイ。あまり悠長にもしていられないしね」

「お願いします」

 ミィアルーンの案内で艦内を進み、翔平たちは格納庫へとたどり着いた。格納庫には出撃していない予備の機動兵器が二機格納させれており、その奥にひときわ大きい機体が一機あった。

 周囲ではメカニックスタッフが慌ただしげに動いていた。

 ミィアルーンはためらうことなく、そこへ近づいていく。するとスタッフのひとりが彼女に気付く。

「あ、博士。お待ちしておりました」

「ご苦労。準備は進んでいるかい?」

「はい。起動準備は完了していますが……本当に動くんでしょうか」

「Zリーヌンス次第、っていうところだろうね。ショウヘイ、これがゼータリオンだよ」

「これが……」

 ゼータリオンの足下で、翔平はその姿を見上げた。

 どこか地球の中世騎士甲冑を思わせる形をしたそれは、兵器というよりは気品の高い美術品のように見えた。

 他の機動兵器に比べるとかなり大型になっている。

「大きいんですね」

「ああ。Zリーヌンス機関が大型でね。それを使うとなるとこの大きさになるそうだ。そうだ、というのはこれはわたしがゼロから設計したものではなくてね。オッパリオンに伝わる古文書のようなものに基礎設計が残されていたんだよ。わたしがしたのは設計というより復元という感じだね」

「そんな昔からあるものなんですか?」

「そのようだね。Zリーヌンスは伝説的存在だしね。ほとんど神話と言っていいレベルだよ。ショウヘイ、手を。ナノマシンを入れよう」

「お願いします」

 翔平が手の甲を差し出すと、ミィアルーンはそこにスタンプを押すようにナノマシンを注入した。痛みはなく、体にも変化はない。

「これで準備はよしだ。行こうショウヘイ。ナナ女史はそこで待っていてくれ」

 ミィアルーンはタンッと地面を蹴り、ゼータリオンのコクピットハッチまで緩やかに跳んで行った。

「ここ、重力が少ないのか」

「そうみたい」

「じゃあ奈菜、行ってくるよ」

「う、うん。気をつけてね」

「わかってる」

 奈菜を不安にさせないように笑顔を向け、翔平も床を蹴る。

 重力はほとんどなく、体が宙へと浮き上がる。

「うわっ」

「こっちだ」

 コクピットハッチに足をかけていたミィアルーンの手が、行き過ぎそうになる翔平の手を掴んだ。

「すいません」

「宇宙は不慣れみたいだね」

「シミュレーターでは何度か経験あるんですけどね。実習は今年からで、まだなもので」

「実習?」

「これでも宇宙作業課なもので」

「なるほど。じゃあここでの経験はいいものになるね」

「ここ、重力が弱いんですね」

「そうだね。重いものを扱ったりすることも多いからその方が都合がいいらしい。さぁ、中のシートに座ってくれ」

「わかりました」

 ミィアルーンの手を離れ、翔平はコクピットの中に身を投じた。

 体が収まるような座席の背もたれに体を預けると、真正面には宇宙空間が見え、翔平は驚いた。

「え? ここ格納庫ですよね? ハッチが開いてるのに空気が漏れてない!?」

「ああ、エアカーテンだよ。格納庫から伸びるカタパルトがあるだろう? そこまでは空気と軽い重力があるように調整されてる。キミの星にはない技術のようだね」

「すごい……」

「まぁこちらの星系じゃ標準的なものだね。さぁ、ゼータリオンを起動させてみよう」

「は、はい」

 ミィアルーンは上半身をコクピットの中に突っ込み、翔平の正面にあるコンソールパネルに手を伸ばした。

「ショウヘイ、左右にある操縦桿を握ってくれ」

「こうですか」

 言われた通りに操縦桿らしいスティックに手をかけると、ピピッという電子音が鳴り、両足の間に挟まるような形でコンソールパネルが持ち上がった。

「これが認証になる。これでゼータリオンはキミをパイロットとしたわけだ。次はゼータリオンのZリーヌンス機関を動かしてみる。これが本番だよ」

「ど、どうすれば?」

「キミはZリーヌンスに意識を向けてみてくれ」

「意識を?」

「ああ、まぁ起動フェイズに移れば自動で起動してくれるだろう」

 そう言うとミィアルーンは外に体を出して叫んだ。

「ゼータリオンを起動する!」

 それはメカニックスタッフへの指示だった。いよいよのことで、翔平にも緊張が走った。

「中央のパネルにある赤いアイコンに触れてみてくれ。それが始動キーになるはずだ」

「これですね」

 翔平は恐る恐る手を伸ばし、言われた通りに赤いアイコンに指先で触れてみる。

 するとパネルの映像が変わり、数行の文字列だ流れる。

「Zリーヌンス波動検出……完了。Zリーヌンス機関起動開始……」

 流れる文字は見たこともないものなのだが、翔平はそれを読むことができた。

「おぉ、起動するか!」

 ミィアルーンが嬉しそうな顔になった。そして次の瞬間、微妙な振動が翔平の下から起こりはじめる。

『博士、Zリーヌンス波動を検知しました。ゼータリオン熱反応が上がっていきます』

 コクピットにスタッフの声が響く。

「了解した。ショウヘイ、Zリーヌンスを解放するんだ」

「解放……」

 翔平は目を閉じて自分の体に意識を向ける。すると体の奥に熱の塊のようなものがあるように感じられた。それが弱い鼓動をはじめている。

「これか……」

 その鼓動を強くするように意識を向けてみる。

『Zリーヌンス波動、反応が強まりはじめます。Zリーヌンス波動リーヌンス機関、起動!』

 スタッフの言葉が示す通り、翔平が見ているコンソール画面に表示された複数のゲージが上昇していく。そのゲージの上昇とともに、翔平の中にある熱の塊の鼓動も強さを増していった。

「くっ……胸が、熱い……!」

 体を潜り込ませたミィアルーンもそのゲージの上昇に注目している。

「起動するぞ、ショウヘイ!」

 その言葉の通り、小さかった機体の振動が大きくなった。

「う、く……うぉおおおおお!」

 自分の中の衝動が抑えきれず、翔平は思わず叫びをあげた。それと同時、翔平の体が光を発する。

「こ、これがZリーヌンスの光!?」

 ミィアルーンが驚く傍ら、上昇していたゲージがすべて上限を突破り、パネルには起動完了の文字列が流れた。

 光が収まると、ゼータリオンの振動も収まり、微弱なものになっていた。

「これで……起動したんですか?」

「ああ、起動しているよ。さすがだ、提督の母乳力でも起動しなかったのに。やはりZリーヌンスというのは凄まじいエネルギーのようだ。体の方は大丈夫かい?」

「はい、ちょっと胸の奥が熱かったくらいで。今は落ち着いてます」

「それはよかった」

「これ、どうやって操作するんですか?」

「基本的な動作は操縦桿を通じて行われるよ。キミの意志がそのままゼータリオンに繋がる。要するに思ったように機体が動かせるということだよ」

「すごい……」

「向かって右手側にあるパネルが通信装置だよ。それも意識と繋がるからどこに通信を繋げるかも基本的に意識を向けるだけで繋がるようになってる。左手側のパネルが機体制御の補助パネルだよ。装備の交換や機体の応急処置などを手動で行いたい時に使う。機体の状態やスタティアからの情報は中央のパネルに常時送られるようになってる」

「なるほど」

「あと、必要な情報はナノマシンがキミの網膜に直接投影するようになっている。必要な情報があるならそれを意識すればいいけど、みんなは声に出しているようだね」

「声……」

「そう。音声を出せば意識できるからね。友軍の位置だったり、共有している敵機の位置なんかを投影させるのが基本のようだね」

「わかりました」

「ゼータリオンにもAIは搭載されているけど、提督たちの機体のように音声制御は組み込まれていなくてね。でも意識することで操作は可能だ。なにか操作に困ったらAIに任せて自動制御にするといい。大抵の動作はうまくやってくれるよ。離発着とか――うん?」

 ミィアルーンの話の途中、艦が揺れた。

「なにか起こったんですか?」

「この揺れは回避運動に入ったみたいだね。案外押されているのかもしれない」

「じゃ、じゃあ俺も早く手伝いに行かないと!」

「まぁそう焦らないでくれ。焦って戦場に出たらどうなるか、簡単に想像できるだろう?」

「そ、そうですけど……」

「キミは実戦の経験があるのかい?」

「な、ないです」

「なら最初はその場にいるだけでいいと思うよ。実戦の雰囲気に飲まれて正気を失ってしまう人もいるからね」

「わかりました――」

『艦橋よりゼータリオン、聞こえますか?』

 不意に艦橋からの通信がコクピットに響いた。驚いた翔平はミィアルーンを見ると、彼女は静かに頷いた。

 翔平が意識を向けると、ミィアルーンが言っていたように自動で通信が開かれた。

「こちら翔平です。聞こえています」

『発進準備はどうですか?』

「ゼータリオンのミィアルーンだ。準備はもう少しかかる。そちらの状況は?」

『スタティアは現在敵艦砲を受けて回避運動中です』

「機関の修理状況は?」

『まもなくミルキィーフィールド展開まで回復しそうとのことですが、依然としてフィールド、主砲は使えません』

「了解した。このままゼータリオンを出そう。戦場に出たという状況のデータも欲しいしね。防衛隊がよくやってくれているようだから、ショウヘイは安全だろう」

「防衛隊?」

「ああ。スタティア、この艦に敵の機動兵器を近づけないように防衛する部隊のことだよ。まぁミルキィフィールドが使えない今じゃ敵を近づけなくても危険なのだけどね」

 そう言っている間にまた艦が揺れた。

「おっと、だいぶ近い位置を撃たれているのかな。避けられているのはさすがスタティアのクルーだね。操艦が上手い――と感心している場合ではないね。ショウヘイ、出られるかい?」

「操縦は思うだけで動くんですよね」

「ああ。キミの思考に機体が追従してくれる。体を動かすのと同じ感覚で大丈夫だよ、理論的にはね。もっとも、わたしはパイロットではないから実戦に向けたアドバイスはできないけど、艦からはなるべく離れない方がいい。それと、まぁないと思うけど敵に狙われたらとにかく動き回ることだ。このゼータリオンのミルキィフィールドなら艦砲も防げるとは思うけどね。もっとも、母乳機関ではないからミルキィフィールドと呼ぶのかという疑問はあるのだけど、同じようなバリアが発生するはずだからね」

「わかりました。武器はなにかあるんですか?」

「機動兵器の戦闘は基本的に近接戦闘になるからね。飛び道具はシア機のような特別なものを除いては牽制程度の役にしか立たないんだ。だからゼータリオン専用装備はそこの壁に備え付けてある大剣だけだよ。一応持っていくかい?」

「持っていきます」

「わかった。――大剣を使う。用意をしてくれ」

 ミィアルーンが外にそう呼びかけると、スタッフたちが動きはじめる。

「いいかショウヘイ、キミは戦場というフィールドにいるだけでいい。くれぐれも戦闘はしないように」

「大丈夫です。自分でもそこまで命知らずじゃないつもりですから」

「そう信じてるよ。では機体のロックを解除しよう。左手側のパネルから機体のロックを解除してくれ。アイコンを見ればわかると思う」

「これですね」

 言われた通り、機体のロックを外すアイコンは視覚的にすぐにわかった。

 機動兵器の制御はもっと複雑なのかと思っていた翔平だったが、思いのほかわかりやすくできていた。

 機体のロックを外すとゼータリオンの関節が緩み、機体の重みのようなものを体で感じられた。

「ぐっ」

「機体の感覚が体にフィードバックされるからね。提督が言うには敵の気配のようなものまで感じられるらしい。でも安心してくれ、痛覚はないから機体が損傷してもキミが痛みを感じることはないよ」

『ハンガーよりゼータリオン。大剣の準備が整いました』

「了解した。ゼータリオン出るぞ。さぁショウヘイ、まずは手を伸ばして壁の大剣を取るんだ。操縦桿を握ってイメージしてみて欲しい」

「わかりました。イメージ……こうか……」

 翔平は操縦桿を握り、右手側の格納庫の壁の方を見た。するとモニター越しに鮮明に壁が見え、そこに大きい剣が括り付けられているのが見える。

 そこの物を自分が取るようにイメージすると、ゼータリオンの手が動く。

「うぉっ」

 翔平が驚くとゼータリオンの手も止まってしまう。

「大丈夫、続けて」

「は、はい」

 そのまま手を動かすイメージすると、ゼータリオンは手を伸ばして大剣を掴んだ。この時、掴んだという感覚が翔平の手にも伝わった。

「すごい……」

「引っ張ればロックは外れるはずだ」

「こうですか」

 大剣を引っ張ると言われたとおりにロックが外れる。手にはずしりとした重みが加わる。

「おっと」

 あまりの重さに落としそうになったので咄嗟に両手で持つイメージをすると、ゼータリオンはほとんどタイムラグを感じさせることなく、翔平の反射に近いイメージを追従して動いた。

「上出来だ。よく動かせてるじゃないか」

「は、はは、まぐれかも」

「機体の姿勢制御や飛行なんかもイメージで動くからね。宇宙作業のシミュレーションとやらの方が難しく感じるくらいかもしれないよ。さぁ、コクピットハッチを閉めて行ってみてくれ。健闘を祈るよ」

「ありがとうございます。行ってきます」

 ミィアルーンはにこりとした笑みを残し、コクピットハッチから離れて行った。

「ハッチを閉めるのは……これか」

 左手側のパネルを操作すると、ゼータリオンのコクピットハッチが閉まる。閉じたハッチはすぐに透明にでもなったかのように、正面の映像を映し出す。モニターとは思えないほどに、その映像は鮮明なのが翔平には衝撃だった。

「本当にすごいな……」

『こちら管制よりゼータリオン。発艦シークエンスに入りますか?』

「お願いします」

『では誘導します。手前にある発進カタパルトへ移動してください』

「わかりました」

 とは言うものの、カタパルトはどこだろう? 翔平がそう思った瞬間、モニター上に目標を示すマーカーが表示された。

「そこか」

 翔平が歩くイメージをすると、ゼータリオンはその通りに歩く。

『うまく歩いているね。上手いぞショウヘイ』

『翔平、大丈夫?』

 右手側のモニターにミィアルーンと、そのそばにいる奈菜が映った。

「ありがとうございます博士。奈菜、今のところ大丈夫。動かせそうだ」

『無理はしないでね……』

「心配いらないよ」

 こちらの映像は見えているのかどうかわからなかったが、翔平はモニターの奈菜に微笑んで見せた。

 そしてゼータリオンをマーカーで表示された場所まで移動する。

 そこは機体を挟むように壁が出ており、外へと通じる細い路地のようになっていた。

『電磁カタパルト起動します』

「うわっ」

 路地――カタパルト内の照明が赤くなり、ゼータリオンが宙に浮き上がった。

 一瞬バランスを崩しそうになるも、機体の方が自動で姿勢を制御してくれた。

「これがカタパルトか。ということは外に撃ち出されるようになるんだな」

『発進準備整いました。タイミングはそちらにお任せします。いつでもどうぞ』

「よ、よし――」

 正直言うと無茶をしているとも思えた。でもジッとして守られているよりは少しでも貢献したい、そんな気持ちが自分を動かしていると翔平は思った。

 これから戦場へ出るというのに、自分でも怖いくらいに落ち着いている。

 もしかしたら自分がなにをしようとしているのかわかっていないのかもしれないとも思った。

 でも、それでもこうしなければいけないというような気持ちもあった。

 今はこれでいい。とにかく行くんだ――。

 そんな気持ちを込め、翔平は足をかけていたペダルに力を込めた。

「こちらゼータリオン、発進します」

『了解しました。進路クリア、ゼータリオン、発進!』

 その言葉の直後、体に強い負荷がかかり、機体が前方へと強い力で押し出されていく。

「うぐっ!?」

 一瞬息が詰まったが、次の瞬間ゼータリオンは宇宙空間へと投げ出されていた。


いつも「宇宙艦隊オッパリオン」を応援頂き誠にありがとうございます。

小説家になろうの機能の評価とレビューの方も、お時間御座いましたら何卒宜しくお願い致します。

読者の皆様の声が、レビューが、評価が、「宇宙艦隊オッパリオン」の明日をつくる!!

面白い作品に仕上げていく為にも、些細な事でも気楽にレビュー頂けますと幸いです。

スケキヨとYOM、引き続き精進して参る所存です!!

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