01ー7 : ドラゴン vs 勇者 !!!
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「正義は勝つ! 正義は勝つ! 正義は勝つ!」
勇者はツバを飛ばしながら、天空を飛行し、空中で邪竜と激しく打ち合った。
おびただしい光の弾が、天から雨のようにざぁざぁ音を立てて直瀉し、鼓膜も破れんばかりの打撃音が鳴り響く!
変身した巨大な悪魔竜は、プリンセスを後ろにかばって、勇者の攻撃を全て受け止め、あらゆる厄災をはじき返した。
勇者と王都守備隊、全員全力の集中砲火を受けても邪竜は、歯牙にもかけず、少し鬱陶しがる程度の反応しか示さなかった。
「プリンセス! 今まで、ド辛かったな、ド苦しかったな、もう我慢しなくていいぞ、オレがすぐ終わらせてやる!」
軽口をたたきながら、ドラゴンが、口から金色の熱戦をビビッと吐く!
「オレは悪魔のドラゴンだ! ダチのためなら! 国だって、勇者だって、神だって、全部ぜんぶ、敵に回して、滅ぼしてやる!」
「お前を傷つけるもの全てから! お前を守ってやる!」
「うぎゃぁぁぁ! 熱いぃぃぃぃぃ!」
メイド服を着た使用人やら、王冠をかぶった女やらが、13階の窓をあけて、噴き出す業火の中をのたうちまわりながら、脱出してくる。
プリンセスと目が合った!
「貴様ァァァ! 第9皇女ォォォォ! 外患誘致の国家反逆罪だぞ!」
「悪魔を城内に入れたな! こんなことしてタダで済むと思うなァァァァァァッッ!」
振り返りもせず、でっぷり太った女王は一目散に炎の渦から逃げ去った。
ドラゴンの業火に魔法技術の粋を集めた防燃コンクリが、まるで紙のように炭化して空気に溶けて白い宮殿が崩壊していく……、
ポンポンポンポンッ!
「正義」の名を冠された白い宮殿にとなりに建っている食糧庫が余熱で炎上!
中にたっぷり蓄えられていたパンが爆発して、スコーンがたっぷり空から降ってくる。
プリンセスはそれを見て、1・2・3と指を折った。
「……飢饉の領民たちから奪ったパン、こんなにも沢山あったのにね」
常夏の城下町の石畳の上に、パンとスコーンの雪がつもっていく。
プリンセスは、それを見て、城下町に向かって静かに叫んだ。
「……王国民のみなさん、今から豪華王室バイキング食べ放題、」
上空からドラゴンも叫ぶ。
「塩と胡椒も用意してあるぜぇ! マヨネーズとサラダもだぁ!」
「あっ! 本当に食料が沢山あるぞ!」
「こっちもだ! 食い放題じゃないか!」
「ママーッ!」
ガリガリにやせこけた人間が、大声と闇夜の炎に惹かれてやってくる。地面に落ちてるパンは、どんどん拾われていく!
「いいぞ、国民が集まってきた!」
「……ジョーゲ君、 でもまだ地下室に非常用の食料があるはず、 もっと奥まで徹底的に城を燃やさないと!」
「よっしゃ! 悪魔に任せろ!」
ゴォーッと轟音を立てながら、ドラゴンの口から吐き出された紅炎が津波のように白亜の城を飲み込んでいく。
「おのれ! プリンセスとその後ろにいる国民どもは全員、国家反逆罪だぞ!」
勇者がわめく。
「ってことは、国がなくなりゃみんなド無罪放免ってことだなぁ!」
いいこと聞いたと、笑う悪魔!
「ぐっ!」
勇者は、なんとか一発斬り返したが、直後300発くらい殴撃が返って来た!
「ほざけ! 悪魔が正義に勝てるか!」
勇者は吐き捨てたが、これまでの戦闘ですでに、光の翼と頭の光輪は失われていた。
「正義の看板、背負って戦うのはキツそうだな? いま楽にしてやる」
悪魔竜は正義を嗤った。
その力は、まさにレベルが違った。
勇者の攻撃を一切受け付けず、一方的に殴りつけダメージを与え、エネルギー弾一撃で勇者の変身を解除させ、奥の手の必殺技を片手で抑え込んで破壊した。
その余りにも大きなオーラは王都どころか、世界全体を揺らし、勇者に衝撃と恐怖を与えていた。
「悪魔に正義が負けることなど! 絶対あってはいけないんだ!」
「なら、お前が正義じゃなかったってことだ!」
これでド終わりだぁ!
悪魔竜は、熱線を吐こうと、ツバを飲み込んだ!
が、
スカッ!
龍の口から出たのは、空気だった。
「あれっ?」
勇者の目が見開かれる。
ドラゴンは、マヌケ顔をさらした。
「あ! 今日まだ、オヤツ食ってない!」
エネルギー切れ!
勇者の顔が凶悪にゆがんだ。
「すきあり! 悪魔!」
竜の腹に一本の赤い線が走る!
「うわーっ! しまったー!」
逃げる悪魔!
「……ドラゴンさんっ!」
悪魔をかばうように前に走ったプリンセスに、追撃の魔法が落ちてきた。
「プリンセスっ!?」
「あっ、」
とっさに、ドラゴンはプリンセスを、抱きしめた。
ゾォ――――――ン!
王都全域を揺るがす大爆発が起こった。
次回、正義は敗北する!