1ー4 : プリンセス、復讐の誓い!
◇◆◇
「……これが「正義」のやることか!」
ガランガランガランガラン!
城門が、後ろで激しい音を立てて閉まっていく。
上から見て円形の城壁に囲まれている町は、マジック・コーティングで、堅牢に守られており、一部の隙もない。
ここは、一度出たら、認証なしには、戻れない!
昔むかしのこの時代、城壁の中はイコール町であり、イコール正義である。
その外側は、つねに戦争中で、悪魔ひしめく戦場であった。
そこに、支援魔法の使い手が、手を縛られて丸腰で放り出されるということは――つまり――、
事実上の死刑であった。
「……痛い」
ドンッと背中を足蹴りにされて、城門から追い出されたプリンセスは、痛みをこらえて、ほこりまみれの石畳からすぐさま起き上がった。
だが、この状況を悲しむ余裕はない。
即座に、まわりをきょろきょろ見回す。
どうやら、周囲には、「まだ」悪魔はいないようだった。
これで、少なくとも、あと10秒は生きられる!
プリンセスは、マジック・キャンセルの手錠にかじりついて、素早くはずそうと試みた。
魔法が封じられていたままでは、唯一の助かる方法、悪魔と友達になることが出来ない!
「……落ち着け、冷静になれ、あせるな私、行動の最適解をとれ、演繹的に考えろ、
まず、手首の間接をはずして手錠を抜ける、それから魔法を使って、悪魔と友達になる。
新しく出来た「友達」に、手引きしてもらって、魔物の国に亡命する!
出来なければ死。
「……やりたいこと、まだたくさんある!」
――外れて、外れて、お願い外れて頂戴!
極限状態の中で、少女は、手首の間接を、自らのひじの上から捻じ曲げあてて、圧をくわえる。
「……うぁぁぁ……!」
激痛が乙女の脳を走る。
おそらく、今頃、ディスプレイ魔法で、王族たちは私の様子を観察して笑い声を上げているのだろう。
涙流して歯をくいしばり、元プリンセスは、耐えた。
――まだ? まだなのか?
ぷちぷちと筋肉が破断する音はするものの、関節はまだ外れない!
「……うく、ぐぐぐぐ!」
泣き叫びたい気持ちを抑える、今は一秒でも時間が惜しい!
「……ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」
自分の今までの人生は一体なんだったのか。
正義は、ウソ、ごまかし、まやかしだった。
「……私は、ここでは終われない!」
悲しみは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛に変わった。
今、プリンセスの心にあるのは、正義への叛旗だけだった。
「……私は! 私を助けない正義なんか、いらない!」
「……私は、正義に、反逆する!」
「……私は、正義を滅ぼす!」
メキメキ音を立てて、手錠がきしんだ。
バチンと音がした。
肩に激痛が走った。
手首の間接をそれでも無理やり引張る!
ぷちぷちと筋肉が破断する音はするものの、関節はまだ外れない!
――まだ? まだなのか?
姫君は、絶叫を上げた。
「……――――――――正義のクソッタレ――――――ッ!」
バチンと音を立てて、手首の間接が外れた。
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