1ー3 : プリンセス、闇の扉を開ける
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乙女の目の前にカードが浮かぶ。
No.000
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サーユ / エキドナ /
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人族♀ / 低級 姫Ⅰ / タイプ 闇/
戦闘力 1 / 魔法力 0+690 /
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身長:146 cm / 体重:46 kg
装備:魔法の扇
エキドナ国、第9プリンセス。
一族の中で、一番小さく・弱く・非力。
逃げ足は世界で一番・素早い。
13歳なのに、支援魔法のプロフェッショナル。
悪魔のウワサ……いざというときの勇気と腹黒は、無限の可能性を秘めているらしいヨ!
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カードに新しい情報、支援魔法のプロフェッショナルという記述が記載される。
「……このカードは、私だ」
ステータス魔法は、自分をそのまま、真似する魔法だ。
しかし、その本質は、その効果でなければ、それによって生まれる情報アドバンテージでもない。
「……自分の心を、簡単に見える形で表現できることなんだ。」
カードを大切に抱きしめるプリンセス。
この「自分の」カードを、お互いに使って、名刺のように交換して、相手のことを深く理解できれば!
相手の立場に立てる。
それでもし、魔物や悪魔の考えていることが、人間の言葉と同じようにわかれば、共感もできる。
共感ができれば、友達になれる。
もし敵である彼らと、友達になってしまったら。
友達になれて、しまったら。
悪魔との戦いに意味がなくなり、戦争を終わらせることが出来る!
悪魔を滅ぼす最強の万能魔法、それは!
攻撃魔法ではなく、ただ「友達を創る」という、日陰の支援魔法だったのだ!
「……これで、私は明日、戦争を終わらせることが出来る、」
攻撃魔法の使えない、勇者になれない支援魔法の使い手の私が、主人公になれる!
「……影の私でも、光の当たる場所に!」
が!
プリンセスが、顔をあげたその瞬間!
ガタンと図書館のドアが開いた。
少女が振り返えると、そこには、攻撃魔法を覚えるよう命じた、あの勇者がいた。
「キサマ! その魔法は、一体なんだ!?」
勇者は、叫んだ。
その顔に浮かんでいたものは、好奇心でも、正義でもなんでもなく、ただの見栄とプライド、そしてエゴだった。
「……まさか、最初から盗撮魔法、かけていたの!?」
勇者の体は、ぶるぶると震えていた。
その顔にあるのは、正義の顔ではなく、地位や名誉の保身のために動く獣の顔だった。
それを見て、プリンセスは、自分が失敗したことを悟った。
悪魔とお話しして、友達になり、戦争をやめたら、やめてしまったら。
……悪魔を殺して戦争で利益を得ていた人は、職も、名誉も、何もかも失う。
それどころか、世の冒険者や勇者たちは「友だち」を殺した、大量殺戮の戦争犯罪者になってしまう……
そんなやつに、この魔法が見つかれば……私の命は――
勇者は、警報魔法を発動して、お城の衛兵を呼んだ。
「こいつは敵だ! 捕らえろ!」