戦勝の宴
鈴木とアンナ、メドラウトが雑談していると、また来客がノックした。
「どうぞー」
「よう!太助」
キッシュが部屋に入るなり鈴木に強めのハグをした。
「お前に救われた命、ありがたく使わせて貰っている」
「気にするなお互い無事だったんだし」
キッシュは鈴木に感謝を伝え、ある提案をした。
「太助、俺と義兄弟の契りを交わしてくれ」
「俺とキッシュが義兄弟?」
「ああ、どうせ俺がアポロンにいても争いの種にしかならん。ならばお前と義兄弟になって自由気儘に生きたいと思う」
「その気持ち痛いほど分かりますわ!」
勢いよく扉が開くとリーゼが許可を待たずに部屋に入って来た。
「王族だからといって自分の人生を束縛されるのは許せません!キッシュも同士として黎明の旅人に迎えてはどうでしょう」
リーゼとキッシュは固い絆の様なものが出来て、同じ境遇の同士として友情が芽生えたようだ。
「ところで話の入り方がスムーズだったけど、いつから話を聞いていたんだ?」
鈴木がリーゼに質問するとリーゼは目を泳がせ。
「今来たばかりです...」
もしかしたらリーゼの宿泊している部屋は隣なのでメドラウトが来る前のくだりから聞いていたのではと思いつつ、深く追求しなかった。
「早速義兄弟の盃を交わすとしよう」
キッシュは盃と酒が入った瓶を持ち出し鈴木の前に並べる。
「太助の方が長兄、俺は弟でいい。よろしく頼む義兄弟」
「バルバロス王は大丈夫なのか?」
「まぁ...。あそこで死んでる様なもんだから大丈夫大丈夫」
「そんなものか?」
「さぁ、一気に呑み干してくれ!」
黎明の旅人が見守る中、グイと盃の酒を呑み干してキッシュに盃を渡すと酒を注ぐ。
「返盃だ」
「おう!」
キッシュも一気に呑み干すと盃をゆっくり机に置いた。
「今日から俺達は義兄弟だ、末永くよろしくな兄者」
「なんかこそばゆいな、よろしくキッシュ」
「アンナ、リーゼ、メドラウト改めてよろしく頼む」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「よろしくですわ」
「よろしくお願いしますね」
それぞれ挨拶が終わるとちょうど晩餐会の準備が整ったようで食堂に招待された。
「わぁ!」
食堂に入った瞬間、アンナが感動の声を上げた。食堂は豪華に飾りつけられ煌びやかになり食卓には食べきれない程の料理が並んだ。
「あれって!?もしかして蟹ってやつですか」
アンナの目に飛び込んできたのは海の幸カニ、アンナは前のめりで並んでいる豪華絢爛な食べ物達を見つめていた。
「美味しそう」
「アンナ、はしたないですわよ。淑女たるものお腹を減らしてもがっついてはいけません、エレガントに振る舞いなさい」
アンナがリーゼに注意されているが、聞いているのかいないのか、リーゼの言葉に頷いてはいるが、心ここに在らず感が滲み出ている。
「とりあえず親父殿に挨拶しに行こう」
キッシュがバルバロス王への挨拶を促した。中央上座に座るバルバロス王へ黎明の旅人は挨拶した。
「本日はお招き頂きありがとうございますわ、バルバロスおじ様」
ドレス姿のリーゼはやはりお姫様と言うだけあって、挨拶から身嗜みまで完璧にハイソ感が出ていた。
「お招き頂きありがとうございます」
鈴木も昔から親族の集まりでマナーを叩き込まれていた為、恥をかかない程度には済ませた。
「ありがとうございます!」
アンナとメドラウトも挨拶を済ませバルバロス王の前に並べられた机に着席すると。
「国賓である勇者の一党、黎明の旅人の歓迎の晩餐会である。皆も心ゆくまで楽しんでくれ」
バルバロス王が晩餐会の開始を宣言すると辺りは騒々しくなり、各々好き勝手に話をしだした。正に現代の飲み会の様な状態だ。
「晩餐会ってもっと気取ってるものだとばかり」
見慣れ無いドレス姿のアンナは口一杯にカニを頬張りながら辺りを見回していた。花より団子を体現する女子だ。
「晩餐会の格式を我々に合わせてくれているんですわ、私以外出られ無くなってしまいますもの。陛下の気遣いですわ」
リーゼはボルドー色に染まるワイングラスを傾け、大人の色香を漂わせながら、香りを楽しんでいた。ふとメドラウトに目線をやると、いつの間にか仲良くなっているキッシュと、学生のノリで浴びる様に酒を呑んでいた。
「アポロンの酒は美味い!」
「分かってるじゃないか、メドラウト。親父殿は野菜と言うがアポロンの魅力はこの黄金酒よ、この金色の酒は風味や香りが最高で、濃厚ながら悪酔いしない最高級品よ!」
既に悪酔いしている感が出ているが、楽しそうにしているのでひとまず放っておく事にする。鈴木は食卓に並ぶ豪華な食べ物を自分の皿に取り分けた。口に入れた牛肉は肉汁が溢れて脳を刺激する、海の幸も惜しげも無く並び蟹やら鯛、アワビまであった。食生活は彼方の世界と一緒なんだなと感心しながら、美味な食事を無心に食べ進めた。アンナが夢中になってしまうのも無理は無い、こんな事を言ったら大将に怒られてしまうが、此方の海産物の方が美味い気がする。
「太助さん、美味ひいですね!」
アンナは目を見開き鈴木に同意を求めた。
「とても美味い」
アンナの問いかけに鈴木は強く同意しながら頷いた。




