合流と二度見
自分の生前葬式を見守る中、城のバルコニーからバルバロス王と妃、アルスが慰霊を願って聖火から上がる煙に向かって祈りを捧げていた。鈴木は黎明の旅人が何処にいるか探すと兵士達が整列する中の先頭に3人とキッシュが立っていた。
「おーいおーい!」
大声で呼びかけるが全く届かない、鈴木は手を振るが人混みに消された。仕方ないので人混みをかき分けアポロン城に少しずつ近づいていく。民間人が近づける最前までなんとか人波に揉まれながら辿り着いたが兵士達が行くてを阻んだ。
「こらこら下がれ」
「あのー、仲間が中にいるので入れて下さい」
「なんだこの人間、怪しい奴だな」
「今日は騒ぎを起こすな、不謹慎だぞ」
兵士達は鈴木を酔っ払いの類だと思い込み、軽く遇らう様に対応した。
「困ったな、これじゃ皆に会えないし。キッシュにも会いたいんだけど」
キッシュの名前が出た時、兵士達の顔つきが変わった。
「お前、今キッシュ王子を呼び捨てにしたな」
「王族に対する不敬は見逃せんぞ」
「友達なんだけど...」
「キッシュ王子と友達だと笑わせる」
「語るに落ちたな!あの方は天上天下唯我独尊。友達などおらぬわ」
どっちが不敬だよと内心ツッコミを入れたが面倒なのでスルーした。
「とりあえず怪しい奴め、来い!」
兵士に捕まり連れて行かれそうになった時。
「なんだお前達、何を騒いでいるんだ」
アンキルが騒ぎを聞きつけ現れた。
「ちょうど良かった、アンキルさんここ通して貰えます?あいつらと合流したいんだけど」
アンキルは鈴木と目が合うと幽霊を見ているかの様にフリーズした。
「アンキルさん、アンキルさーん!」
アンキルは鈴木の呼びかけに我に返った。
「勇者様?本当に勇者様ですか!?」
「ああレシールに殺されかけた勇者です」
「生きておられたんですね!」
「ええまあ、仲間の所に連れて行って貰えますか?」
「もちろん!こちらにどうぞ」
アンキルは通せんぼしていた兵士達を下がらせると鈴木を先頭まで誘導した。
「そう言えば勇者様、お仲間の名前はフルネームって言えますか?」
「?」
アンキルが変な質問をしてきたが鈴木は一応答えた。
「アンナマリー、リーゼロッテ タルタロス、メドラウトだけど」
「キッシュ様の1番逆鱗に触れる行いは?」
「たてつく事だったっけ」
「ありがとうございます。試す様な真似をしてお詫び致します、あなた様が本物か確認させて頂きました。暗殺者の中には見た目を限りなく似せるスキルを持つ者もいるそうで申し訳ございませんでした」
意図を聞いた鈴木はなるほどと納得してアンキルを褒めた。
「さすが大隊の隊長を任せられるだけはある、警戒するに越した事はありませんよね。バルバロス王から距離を離して頂いて大いに結構なので仲間と合流させて下さい」
アンキルはいいえと謙遜するとアンナの隣に連れて来てくれた。隣ではアンナが涙で前が見えないくらい泣いていて顔をグシャグシャに濡らしていた。アンナはこういう子だ。俺の為、いや今回亡くなられた皆の為に泣いているのだろう。鈴木はそっとハンカチ布を出しアンナに差し出した。
「ありがとうございましゅ」
鼻水声の彼女はハンカチで目をおさえ号泣している。これがこの国を救った英雄の一人の姿である、自分の家族の様に悼む。そんな姿を見て鈴木はアンナを愛おしく思った、2人だけならもう強く抱きしめてあげたいところだが人の目もある我慢しよう。鈴木はリーゼに目をやった。二個隣のリーゼはクールに黙祷を捧げていた、少し気になるのが大事そうに護衛役を自分の子どもの様に抱き抱えている事だ。どっちが護衛か分からない、メドラウトはと言うと真面目にバルバロス王の話しに相槌を打ちながら聞いているようだ。
「んんっ!」
鈴木が少し大きめの咳払いをするがまだ誰も気づかない、鈴木がソワソワしていると。
「ありがとうございました、洗ってお返ししますのでお名前とご住所を」
アンナは鼻を赤くして、涙目のあまり多分顔がよく見えていないのだろう。顔は正面を向いているのにまだ気づかない。
「鈴木」
「スズキ」
「太助です」
「タスケさんですね」
「住所は冒険者をやっているので根無し草ですが、今はとある縁からアポロン城で厄介になってます」
「住所は...」
アンナはここに来てようやく涙を拭き、目を細め鈴木の顔を凝視した。両方の掌でしっかりと挟み込むと鈴木の顔が動かないように固定した。異変に気づきメドラウトがチラッとこちらの様子を横目で確認したので目が合うがスルーされた。と思ったらメドラウトが心底驚いた表情で二度見した姿に漫才を見ている様で面白かった。アンナを酒場で見た俺の顔もあんな感じだったのかな。
「本当に太助さん...なんですか?」
震える声に優しく答える。
「勇者で太助なら俺だな」
キッシュのモノマネを挟みつつ戯ける鈴木にアンナは飛び込む様に抱きついたのだった。




