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超絶エリートの俺が異世界に行くなんて  作者: 吟遊詩人F
日常と異世界チュートリアル
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アリアケ草

草刈りに探索時間よりも時間がかかってしまった。鎌があればもっと効率的に刈れるのだろうが、短剣一本で入って来た鈴木には選択肢が無く、ひたすら無言で刈り続ける事、3時間ようやく半分位の量を採る事が出来た。


「ふぅーこれくらいでいいだろ」


鈴木が収穫したアリアケ草を袋に詰め終わろうとしたところ、作業中一言も発しなかったミーシャが口を開いた。


「今回の依頼は群生の半分よね?どう見ても半分には見えないのだけれど」


「いや半分は採ったよ!」


「そうは見えないんだけど...」


「さっきからなんだ!文句だけ言って手伝いもしないくせに」


「まぁ私はいいんだけど、ここに来て見てみれば?」


ミーシャが指差す岩場に乗り、辺りを見渡して鈴木は驚愕する。一面アリアケ草が生えていた。かなり奥まで生えているのだ、半分だと思ってた量が、実は2割位しか採れていない事に気づく。疲労と思わぬ進捗率で心が折れ作業を中止していると。


「納期がないんだろ?ゆっくりやれって事さ、今日は持ち出し袋に入りきらない位、採れたんだから充分でしょ。一旦村に帰って、休んでから出直そう」


ミーシャは今までの刺々しい言い方では無く、労っているような、慰めているような声のトーンで鈴木を説得した。荷物を纏めて、6階層から出ようとした時に鈴木はある事に気づく。


「そう言えばアリアケ草を採っている時、一回もモンスターに遭遇しませんでしたね」


「ああ野営用のモンスター避けを使ったからね、じゃないと集中出来ないし、いちいち襲われてたら作業が進まないだろ」


そう言うミーシャの背中は頼もしく優しく見えた。多分自分よりずっと若いであろう女の子、言葉使いは粗野で行動は粗暴に見えるが、その奥にある人としての器の深さに、後続にいた鈴木はぎゅっと心を締め付けられ、半泣きになってしまった。幸いな事にミーシャが振り返る事は無かったので、情けない顔を見られる事はなかった。


「そう言えばアンタ、スキルか魔法は使えるのかい?」


「魔法は使えないです、スキルってなんですか?」


「スキルも知らないで冒険者になったのかい?呆れた」


ミーシャは立ち止まって鈴木に授業を始めた。


「スキルってのは二種類あって、固有スキルと習得スキルに大別する。固有スキルは生まれながらに持っている、その人間もしくは種族または一族しか持って無い、特別なスキルで唯一無二なものもある。習得スキルは修行や師匠から譲り受けたり、自分でその境地に達する事が出来れば習得出来る、いわば誰でも手に入れられるスキルの事」


ミーシャはおもむろに剣に手をかけると飛んで来た、人食い蝙蝠を目に見えない剣速で真っ二つにした。


「これは居合って言う、習得スキルで比較的剣術スキルの中では初歩の分類になる」


ミーシャは美しいアマランサスの長い髪をかき上げると剣を鞘に納めた。洞窟の暗がりからゴブリンがゾロゾロと出てくる。


「追い剥ぎか。丁度良かった、今からスキルを見せてやるよ」


ミーシャは襲いかかるゴブリンを教材にしてスキルを見せてくれた。


「まずは流し」


ミーシャが出てきたゴブリン達の攻撃を無駄なく最小限のアクションで避ける、さながら舞っているかの様だ。


「次はカウンター」


ゴブリンが剣で攻撃するタイミングに合わせて、ミーシャが剣を打ち込む。カウンターの衝撃でゴブリンは端から端まで吹き飛んだ。時間を置かず次々にミーシャを襲っているゴブリンが、冗談のようにぶっ飛ばされていく。あらかたゴブリンが退治されると、親玉らしき一際大きいゴブリンが出てきた。2メートルはある巨体でゴブリンらしからぬ、冒険者から奪ったであろう、立派な装備をしていた。こいつの事はゴブリンロードと呼ぶ事にした。


「オマエ、コロス」


「喋るのか。蛮族の亜人が」


ゴブリンロードが巨体を活かし力任せにミーシャを斬りつける。がミーシャは流しで楽々とゴブリンロードの猛攻を躱すと。


「見ておけ、これが私の固有スキル。リピートアクセラレーション」


ミーシャが固有スキルを発動した瞬間、その空間がスローモーションになったかのような錯覚に陥った。高速で回転しているタイヤを見ていると逆に遅く回っているように見えるアレ。ミーシャが遅く動いているように見えるが、そう見えているだけで自分もゴブリンロードも身体が動かない。この空間、この時に動く事が出来るのはミーシャだけだった。ゴブリンロードの頭は呆気なく胴体から切り離された。アマランサスの美しい髪が流れるようにミーシャの背中を一定のリズムで打つ。


「わかったかい?スキルは戦闘における要だ、自分で習得するんだよ」


ミーシャは深呼吸すると息を落ち着かせた。少し汗ばんだ服をパタパタと扇ぐと戦闘の熱気をクールダウンさせた。

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