暗殺未遂
大変な騒ぎの中、バルバロス王が気さくに話しかけて来る。
「騒がせてすまない、大した事では無いのに」
「いえ、ご無事で何よりです。お身体は大丈夫ですか?」
「ああ全然問題無い。少し刺されたが毒が塗られていなくて助かった、毒は流石に只では済まないからな」
バルバロス王は命を狙われたにも関わらずいつも通り明るく振る舞っている。主君を守る様にガッチリと近衛兵が鈴木とバルバロス王の間に入り牽制していた。
「すまない、この子たちに悪気は無いんだ。私を守ろうとしてるだけなので気分を悪くしないでくれ」
「わかっていますよ、貴方がこの国の民からどれだけ慕われているのか理解していますから」
バルバロス王の無事を確認した鈴木は最後に提案をする。
「バルバロス王、良ければ俺の回復魔法で怪我を見てもよろしいですか?」
「それは助かる、是非お願いしたい」
「バルバロス陛下、王宮の治療師が参ります。この様な得体のしれない者の治療等受けない方が」
バルバロスが近衛兵の進言を手で遮ると。
「勇者殿、お願い出来ますかな?」
「では、リカバリー」
鈴木の回復魔法でバルバロス王の怪我はみるみる癒され賊が付けた傷は跡形も無く消えた。
「これは素晴らしい!勇者でなければ王族専用の治療師になって貰いたいところだ」
ガハハハと豪快に笑うとバルバロスは鈴木と握手した。
「そう言えば今日、東側の城壁が崩された際に駆け付け、アポロンの民を救ってくれたそうだな。勇者殿と仲間の皆に心から感謝する」
バルバロスは鈴木にゆっくり近づきハグをした。王自らのハグに感謝がダイレクトに伝わって来てなんだか恐縮してしまった。バルバロスは体格に優れ、太助の二回り以上大きかった。レシールがこの国で1番強いと称しただけあって、サシで戦ったら勝てる気が全くしない。抱きしめられると暖かくお日様に当たっている様にポカポカした。
「恐縮です陛下。当然の事をしたまでです」
「なんとも頼もしい雄よ!この戦争が終わったら国賓たる其方達の盛大な歓迎を行おう」
バルバロス王の様子を確認して安心した鈴木は自室に帰ろうとするとアンキルに呼び止められた。
「勇者様、少しお話しが」
「はい、どうぞ」
「バルバロス陛下の暗殺未遂によって国内の要人に常に護衛を付ける事となりました。つきましてはそこにいるレシールを勇者様付けに致しますので、何なりとレシールにお申し付け下さいませ」
「レシールさんを?そんなちょっと困りま」
「失礼します」
アンキルは時間に追われる様に鈴木の話を最後まで聞かずその場を立ち去ってしまった。
「本当に失礼だよ」
鈴木はぼやきながらレシールを見る。レシールは顔を真っ赤にして不安そうに鈴木の様子を伺った。
「大丈夫、とりあえず部屋に戻ろう」
鈴木はゆっくり、俺はロリコンじゃないと心で10回くらい唱えた時間で自室に着いた。
「身辺護衛を命じられておりますので失礼致します」
レシールが鈴木と共に寝所に入ると椅子を出してきた。
「安心して下さい!勇者様は私が賊から必ず守ってみせます」
先程と打って変わって勇者を守る使命を負った少女は力強く宣言すると、ベッドから少し不自然に離れた所に椅子を置き腰を下ろして鈴木とベッドを凝視した。
「ありがとうレシール。君も無理しないように」
鈴木はもう一度ベッドに入り目を閉じる。答えはいいえだ。
目覚ましが鳴る前にベッドから起き上がる、昨日の酒が抜けているはずだが体が鉛の様に重い。歯を磨いたり朝シャンのいつもの動作が非常に面倒で重く感じた。だが働かないといけないのは誰も一緒、働きたく無い気持ちを抑えて車に乗る。気持ちが乗らない日はノリノリな音楽を大音量で流して気分を上げる、病院に着く頃にはモチベーションが上がって仕事モードになっていた。
「おはようございます」
「おはようございます!」
しんどい時こそ元気に挨拶、挨拶をしっかりすれば自ずと心もついて来る。今日は忙しく何回かタイムマシンに乗っていたようで気がついたら何時間も過ぎていた。
「お疲れ様でした!」
別れの挨拶をする頃には逆に元気が戻っていて、仕事帰りに何処か寄っちゃおうかというテンションになっていた。とりあえずジムからのサウナでサッパリすると久しぶりに馴染みの寿司屋に足を伸ばす事にした。
「らっしゃい」
大将がいつもと変わらず出迎えてくれる。
「イカと鯛で」
「へい、イカと鯛」
大将がシャリを取りネタを乗せるとフワリとネタの重さでシャリが沈む。鈴木が出来た寿司を口に運ぶと。
「凄く美味しい...」
「ありがとうございます」
「大将、美味しいよ。マグロにトロ、ウニも」
鈴木は涙を流しながら追加注文した。
「あいよ!マグロ、トロ、ウニね」
大将は泣いている鈴木に気づかないフリをして黙々と寿司を握った。久しぶりに鈴木がお腹一杯になり、こちらの世界で満腹感を感じたのはいつぶりだろうと思い出そうとしていると。
「これはサービスだ、鈴木の坊ちゃん」
大将がお土産の箱寿司を持たせてくれた。お礼を言って支払いを終えると自宅に帰る。帰宅後のルーチンを済ますとアルパカの夢の第3話を寿司をつまみながら見た。
「このデザインは盗作なんかじゃない!私が小学生の頃に描いたデザインなのよ」
盗作を疑われる主人公にハラハラしながら次週に続くらしい。動画配信サービスだから見ようと思えば今見れるが自制して今日は寝る事にする。鈴木は自分の部屋のベッドにモゾモゾと入ると何度かアクビをして夢の世界へ誘われた。




