王とは孤高の存在よ
メドラウトと別れた後、場内を歩き回るには少し早すぎる為、調度品を鑑賞して時間を潰す事にした。
「これなんか幾らするんだろ?」
鈴木は調度品に触らずにマジマジと観察していくとあるものに目を止めた。金色に輝き一際存在感をアピールしてくる器、何かに似ているなとひっくり返してみると。
「髑髏の金杯...」
人骨で作られた金杯を見て鈴木は少し血の気が引いた。思えば亜人の国、蛮族かもしれない。そんな事をグルグルと思案しているとノックの音にビックリしマヌケな声で返事をしてしまった。
「はひっ!」
「勇者様、朝食の準備が出来ておりますのでご案内致します」
「ありがとうございます、準備しますので少し待って下さい」
鈴木は寝巻から普段着に着替えると侍女さんに連れられて、大きな食卓のあるダイニングに通された。メドラウトが先に席に着いており、アンナとリーゼはまだ来ていなかった。しばらくするとアンナが鈴木の隣の席に着く。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます」
鈴木、アンナ、メドラウトの順番で挨拶をする。皆眠そうに目を擦って着席しているとバルバロス国王が現れた。全員席から立ち上がると。
「よいよい、皆客人だ気を使われるな。それよりアポロンの野菜は最高にフレッシュだ、是非食べてくれ」
国王が着席すると続いて王族らしき人達が次々と席に着いていく、タイミングを見計らって黎明の旅人も着席した。食事が始まるとバルバロス国王はムシャムシャと緑の野菜を美味しそうに頬張る。ライオンが野菜を食べる貴重なシーンに目が釘付けになりながら鈴木も野菜を頬張る。
「確かに美味い」
鈴木がぽろりと溢した言葉を聞き逃さなかった、獅子王が満足そうに同意した。
「そうだろう、そうだろう!沢山食べてくれ」
嬉しそうに笑う獅子王は猫に見えてきて愛嬌がある。たまに癖なのだろうか顔を手でゴシゴシしては周りに気づかれていないと思っているようで側近の目を盗んでゴシゴシしている。かわいい。あっ多分あれは奥さんに注意されてるな、隣のメスライオンじゃなかったライオンの亜人の女性に注意され獅子王はシュンとしている。
「ところで紹介しておこう、我が妃だ」
先程獅子王を注意していたご婦人が挨拶で会釈してきたので会釈で返した。
「こちらが第一王子のアルスだ」
紹介された若い雄ライオンの亜人が会釈する。心なしか我々を見る目が鋭いと言うか殺気立っている様にも見えるが、穏便に会釈を返す。
「そこの猿の亜人が大臣のガーグ」
猿の亜人はもう見た目がほとんど人間だった、毛深い人間にしか見えない。もう亜人じゃなくてもよくないと思いながら会釈をした。次々に国の要人に紹介され、さながら動物園をモチーフにした仮装パーティーに参加した様な気分になった。朝食に来ていた要人の紹介が終わる頃にようやくリーゼが登場した。
「皆さんご機嫌よう」
リーゼはスカートをヒラリとほんの少したくし上げて挨拶を済ますと直ぐに席に着いた。
「遅かったな」
「こんな時間に叩き起こされてたまりませんわ、朝は苦手ですのに」
リーゼは眠たそうにスプーンでスープを極少量をすくって飲み始めた。
「ところでボーヤはどうした?」
「さぁ、あの子の事ですから狩りにでも行っているんじゃないですか」
「父上王、アイツを甘やかし過ぎです。王子がこれでは面目が立ちません!」
「ハハハ、アルスは厳しいな」
「厳しいとかではなく、ケジメの問題です」
獅子王とアルスが第二王子の事について議論している最中、末席にいる配下達がヒソヒソと声を抑えて話している内容が聞こえてきた。
「第二王子はまた遊びに行かれたのか、王の情けを受けて王族に迎い入れられた分際で」
「あんな放蕩者を何故王は養子に迎えあそばされたのか理解出来ぬ」
「良い事では有りませんか、アルス様が王になり。王族でない者が身分にあった待遇になるだけです」
やはり王宮とは陰謀やら派閥やらがあってドロドロしているんだなと鈴木は想像通りで辟易した。獅子王はカラッとした気持ちの良い人物だが、臣下の中にはこういう奴等もいる。しょうがない事だが獅子王もお妃様も良い人なのでギャップでこういう奴等が余計悪者に見えてしまうと思いつつ、鈴木は絶品フレッシュ野菜を口一杯に頬張りながら閉口した。
「そうだ!勇者様」
お妃様が話しかけてきた。
「リーちゃんに聞いたのですが、ノラ魔王を倒した話を聞かせて頂けないかしら?」
陰湿な空気が漂っていたのを察したのかお妃様が鈴木に話題を振る。魔王軍の進軍が迫る中、魔王を倒した勇者の話に亜人達は興味を示し会話を中断させ鈴木の言葉に耳を傾けた。
「リーちゃん?」
「私の事ですわ。何か問題ありまして?」
リーゼがダルそうに普段見せないヤサグレた目つきで鈴木を睨む、低血圧なのかな。話を戻して鈴木は相手が不可視のスキルを持っていた事、雨の違和感で魔王のスキルを看破した事等を順序立てて語り、アンナの混成魔法で魔王を閉じ込め燃やすと最後に自分が止めを刺した事を伝えた。話を聞き終わった亜人達は一斉にアンナを見るとなんか凄い人、例えるとプロスポーツ選手を見るかの様な羨望の眼差しを向けた。拍手が巻き起こり亜人の要人は黎明の旅人に向け美辞麗句を連ねた。
「なんか想像したら気持ち悪いなー」
話を聞き終わり現場を想像してしまった獅子王がフレッシュ野菜をフォークで弄びながら、明らかに1人テンションが下がっていた。
「申し訳ございません、食事中に」
「ごめんなさい、私が聞きたいだなんてワガママを言ったせいで」
お妃様と鈴木が獅子王に謝罪すると獅子王はニッコリ微笑み。
「すまんすまん、ワシの顔なら魔王の焼肉美味しそうぐらい言えって話だよな」
獅子王のブラックジョークに場内は鎮まりかえった。
「ワシには味方等おらぬ、王とは孤高の存在よ」
獅子王は捨て台詞を吐くと残りの野菜を全て口に詰め込み、スクと立ち上がると。
「ひつふぇい!」
野菜を口一杯にしながら去った。皆呆然としていたが取り巻きの臣下達が我に帰り、急いで獅子王を追いかけて行った。




