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超絶エリートの俺が異世界に行くなんて  作者: 吟遊詩人F
冒険と変わりゆく日常
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追慕

鈴木は温泉で血流が良くなりお腹いっぱいの為、眠気を催した。スッと目を閉じるとまた不眠不休を発動するかの確認が入った。鈴木は毎度これを選択するのかと思いながら、いいえを選択するのだった。


目覚ましが鳴り鈴木はパッと目を覚ます。ベッドから勢いよく出ると朝シャンをして歯を磨き、髭を剃り、トーストを焼いている間にコーヒーを淹れて数分待つ、トーストにバターを塗って目玉焼きを乗せウィンナーを添えたら朝食の完成だ。


「いただきます」


鈴木は小さく挨拶すると朝のニュースを見ながら朝食を食べ進めた。


「次のニュースです。東京都..区に変死体が発見され警察が事件事故の可能性で捜査しています」


鈴木はリモコンでTVの電源を切るとスーツに着替え病院に向かった。車に乗る前から雨は本降りでバケツをひっくり返したような大雨だった。


「梅雨ってこれが憂鬱になるわ」


鈴木は天気にぼやくと傘をささずに車に小走りで近づき急いで車内に入った。しかし急いだものの頭と肩が濡れて服も湿ってしまった、病院に行くのが億劫になったが行かない訳にもいかず、目が覚めた時の調子から一転怠くなりながら病院へと向かった。通勤途中渋滞にハマる、雨の日は通勤ラッシュに加え車の交通量が増える為、大粒の雨がフロントガラスにボタボタと降ってくるのをワイパーが忙しなく払い退ける。右左右左とメトロノームを見ている気持ちになりアクビをした。眠気を覚ます為に鈴木はDAPを取り出して車に接続し音楽をかけた。


「ふんふーん、僕達をーどこへー導いてー」


鈴木は1人カラオケ状態で病院に着くまで車内で熱唱し続けた。病院に着くと毎日のルーチンをこなす。事前に決まっていた外科手術を行い、成功させ本人やその家族からも感謝された。医師をしていてこの瞬間と給料日の明細を見て酒を飲む瞬間が幸せだ。鈴木は遅めの昼食を取る為、院内にあるコンビニに軽食を買いに来た。


「サンドイッチとオニギリ、後は頭を使ったからチョコで糖を」


鈴木の考えている事を読まれて、声を出されている錯覚に陥りながら後ろを振り返るとマスクに帽子、あたかも変装してます的な人が鈴木のカゴを覗いていた。


「!?」


鈴木が驚き一歩距離を取ると変装した人物がマスクを取る、帽子は付けたままだが鈴木はこの人が誰なのか理解した。


「saya」


その人物はまごう事なく歌手のsayaだった。


「どうしてここに?」


「撮影中に少し怪我しちゃって、高木さんからここに勤めてると聞いてたから、もしかしているかなって探してたらいたからビックリした」


「ビックリしたのはこっちだよ、撮影中って事はミュージックビデオでも出すの?」


「やだー先生、アルパカの夢を見てないんですか?月9ですよ月9。ってか私主演なんですけど」


「またまた、冗談ばっかり。はははは」


「はははっ」


お互いを見つめ合い笑うと鈴木が尋ねる。


「本当に?」


sayaは無言で頷き笑顔である一方鈴木の笑顔は引きつっていた。ひとしきり談笑を終えるとsayaが真剣な顔で鈴木に語りかけた。


「先日は助けて頂いて本当にありがとうございました」


「いえいえ当然の事をしたまでで、改まらなくても」


sayaは深々と一礼すると普段の態度に戻った。


「必ず見て、アルパカの夢。絶対面白いから、動画配信サービスで一話から見てよ絶対だからねー」


sayaが去った後、鈴木は軽く放心しながら無意識のうちに休憩所に戻っていた。


「高木よ。これは聞いてない」


妻への罪悪感はある、が一流芸能人と褥を共にした優越感はそれに勝るものがある。鈴木は額に組んだ手の甲を当て顔を伏せると人に気づかれない様に若気た。日が暮れ勤務時間が終わっても雨がシトシトと振り続けていた。湿度が上がりジメジメしてシャツが身体にひっつき不快指数が上昇する。鈴木はいつものコンビニに晩ご飯を買う為に立ち寄った。


「お箸はお付けしますか?」


鈴木が少し苛つきながら頷くと店員さんは箸を袋に入れた。鈴木はぶっきら棒にビニール袋を取ると早足で車に戻った。


「素手で食う訳ないだろ!馬鹿か?あそこのコンビニ店員は馬鹿ばっかりだな」


車で暴言を吐きつつ帰宅した、真っ先に風呂場でシャワーを浴びて汗を流した。頭を洗い洗顔し、身体をボディーソープをつけたスポンジでゴシゴシしている間に湯船にお湯を張る。


「ふぅー」


小一時間入浴した後、保湿クリームを塗ってエアコンとTVの電源を入れると誰が見ている訳でもないのでだらしなく腰掛けた。sayaに言われたアルパカのなんとかを見ようか悩み、ボーっとTVを見ていたらバラエティ番組でふと唯美が好きな芸人が出て来た。この芸人の一発ギャグのポーズを敬太がよく真似していたっけ、家族と過ごした日々を鈴木は追想した。


「唯美、敬太。どこに行ったんだよー」


鈴木は味のしない弁当を1人虚しく食べながら腹を満たしたのだった。

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