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超絶エリートの俺が異世界に行くなんて  作者: 吟遊詩人F
冒険と変わりゆく日常
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推理

「1時間後にハデスの出入り口の門の前で集合致しましょう」


リーゼロッテの提案に鈴木はアンナに了承を得ると準備に入った。いよいよノラとは言え魔王との対決である。緊張と恐怖で呼吸が浅くなる。アンナはいつもと変わらない様子で旅支度を進める。


「アンナは怖く無いのか?」


「怖く無い訳ないじゃないですか、でもリーダーがやるって決めたならパーティーメンバーは命を張りますよ。死んだら化けて出てやりますから覚悟して下さいね」


軽口を叩くアンナの表情はいつも通りだが、精一杯不安を悟られまいとしている事に気がつく。支度をしているアンナの指は微かに震えていた。


「いざとなったらハデスに逃げてくれ」


アンナは深呼吸すると鈴木にアドバイスする。


「太助さん。傭兵と言えど一党を組むのですから、彼らとは運命共同体です。一緒に死ぬ覚悟で戦って下さい」


アンナの言う傭兵と鈴木の知っている傭兵像とは全く違うのに少し驚いた。これが冒険者が傭兵を受ける時の矜恃なのだろう、ふと2人の顔を思い出す。1人はミーシャ、もう1人は今日出会った関西弁の男の顔だった。鈴木は自分の顔をパンッと叩くと気合いを入れ直した。


「やってやろうぜ!」


「はい!そもそも我々には黄金郷の踏破者がついているんです。負けませんよ生きてここを出ましょう」


装備品の最終チェックを済ますと、荷物袋は宿屋のフロントに預け約束の場所へと黎明の旅人は歩を進めた。先程まで陽が出ていたのに太陽を雲が覆い急に辺りは暗くなった。このままだと雨も降りそうだ、雨の前の匂いにシットリした風が吹く。どんどん雲行きが怪しくなってくる中、黄金郷の踏破者と合流した。


「ではよろしくて?」


「いつでも!」


カルとアマンダが全員に強化魔法を付与する、身体から光が漏れ出し、とても不思議な感覚になりながら身体はとても軽く感じた。リーゼロッテと鈴木を前衛として陣形を組み警戒しながらハデスから一歩二歩と出た。


ポツポツ、ザーッ


ハデスを出た時から雨が降り出した。雨脚は強くなり一滴一滴が大粒の雨、顔が濡れ眼を閉じない様に注意しながら陣形を維持しつつ前進した。注意深く警戒する神経を研ぎ澄まし視覚と聴覚に全神経を集中させた。遠くで雷が落ちる、続けて2度どこかに落ちた。音に気を取られていると。


「やっと出て来た」


鈴木の耳元で腹からこみ上げてくる憎悪の声が聞こえた。刹那リーゼロッテが鈴木を弾き飛ばし、ノラ魔王に大戦斧を振り抜く。見事魔王を捕らえたと思った瞬間、影も形も消えて無くなり、魔王の姿が雲散霧消した。リーゼロッテの大戦斧は虚しく空を斬ると後方で悲鳴が上がる。


「ぐあっ!」


悲鳴が聞こえた方に視線をやるとカルが魔王に地面に押さえつけられ短剣で背中を刺されていた。リーゼロッテがカットに入るがリーゼロッテが近づくとまた煙の様に消えてしまった。


「くそ!出て来い卑怯者」


鈴木の大声に魔王が反応し姿を現した。


「卑怯者だと、笑わせるな。この瞬間移動はスキル、魔法の類だ!お前達だって魔法を使用しているだろ。それに卑怯者と言うならそちらは1人に対して5人がかり。どちらが卑怯者なんだろうな」


魔王は鈴木をあざ笑うかの様にまた姿を消した。雨の音が鈴木の集中力を奪っていく。次はどこに現れるのか必死に探す。


「くくっ気づかないんだよなー」


鈴木は声の方を向くとアンナが魔王に口を塞がれ頬を舌で舐め這わされていた。


「情け無い雑魚だな。女は奴隷でヒーヒー言わせてやるよ、男は...いらね。ここで死ね」


鈴木がアンナを救出する為、魔王に攻撃しようとするがまた消えた。


「あなたはカルに回復魔法をお願いしますわ!」


リーゼロッテの指示で鈴木はカルに駆け寄ると縫合と輸血、毒の対応に血清を入れたイメージで唱える。


「リカバリー」


「すまない」


カルは回復し戦線に復帰した。しかし見えない敵との戦いはキングサイクロプスギガント戦よりも手応えが無く、リーゼロッテを除く他のメンバーの士気を大いに下げた。なんとか死人が出ていないのは単にリーゼロッテが魔王を牽制してくれているからだ。


「これで弱い魔王なのか...」


鈴木が絶望に苛まされそうになった時に、水飛沫が頬にぶつかる。飛んできた水飛沫の方に視線を移しても何も無い、今日は雨脚は強いが風は吹いていない状況で、あり得ない力の加わり方をした水飛沫に注目しながら頬に飛んできた水飛沫を指でなぞった。黄金郷の踏破者と黎明の旅人連合パーティーと魔王の戦いは魔王優勢で進んでいた。リーゼロッテの一撃は与えられれば魔王を葬れるほどだが当たらない。魔王は消えては神出鬼没に現れ嘲笑いながら仲間を攻撃してくる。


「瞬間移動...」


鈴木は引っかかっていた。自分の手の内つまり切り札を敵に言う間抜けは漫画の世界にしかいない。そんな事をすれば命のやり取りの最中に取り返しのつかない失態になるからだ。しかし奴はハッキリと自分の能力は瞬間移動だと言った。


「印象操作か」


つまり奴のスキルは瞬間移動では無い、となると消える理由はなんだと思案しているとリーゼロッテの付近の雨の降り方が不自然である事に気づく。空から降る雨は地面170センチくらいの所までは直線であるのに対して、それより地面側をよく見ると不自然に横に滑る様に流れる時がある。


「そうか奴の真のスキルは」

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