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謀叛

「何事か!?」


「はっ、フェルト王子ご謀叛。背後から奇襲を受け、近衛騎士隊が応戦しております」


「あの愚か者が。。」


ゼウスは肩を落とし深いため息を吐いた。


四方より挟撃されたゼウス軍は勇者部隊を有する前方以外、じわじわと削り取られていく。


「一気に畳み掛けよ!」


フェルトの号令で後方からゼウス本隊を襲撃。戦の勝敗は決したかの様に思えたが。


ドゴーン!!


轟音と共に戦場の風向きが変わった。


「馬鹿息子。よく見ておけ!一代でゼウスを作った父の武を」


側近達が倒れフェルト率いる軍に包囲され四面楚歌の中、ゼウス王は雄々しく名乗りを上げる。


「我が名は東堂 正吉!魔王の首級を100以上あげた兵よ!貴様ら雑兵如きが敵うと思うな!!」


ゴオオアアアァァァ


ゼウス王を中心に紫電が走り、周辺に居たフェルト軍(反乱軍)を薙ぎ払った。


「俺に牙を剥いた以上、唯で済むとは思うなよ馬鹿息子(フェルト)


ゼウス王は怒気混じりの顔でフェルトを睨みつける。


(ミネバ)に許しを乞うが良い」


フェルトは剣を抜き(ゼウス王)へ宣戦布告した。


オオオオ!!


戦場は混戦となった。ゼウス軍の左翼右翼は潰走しかけているのに、前方と本隊は寧ろ戦線を押し返し、それは獣人軍を抑えガレス城門に到達しかけていた。


「崩せ!城が落ちれば我等の勝利ぞ」


東堂が雑兵の首の髪を鷲掴みにしながら不敵な笑みを浮かべる。


「我がゼウスに歯向かう者は撫で切りにしてくれる」


ゼウス軍の勇者部隊がガレスの城門を突破し城下へと雪崩れ込もうとした時。


ゴオオオオォォォォォォォォ!!


火炎放射器の様な猛烈な炎が侵入者である勇者達を燃やし尽くす。


「ぐうああぁぁぁ!」


「下がれよ!早く!」


「ひぃ」


城門より十歩の所で20人もの勇者が灰と化した。


「城門の上に何か居るぞ」


一人の勇者が慎重に上を覗き込むと、そこには巨大な二頭の巨龍が勇者(ネズミ)の侵入を見張っていた。


「に、逃げろ」


「馬鹿!外に出たら」


ゴオオオォォォォ!!


城門から容赦無く火炎放射を浴びせる巨龍に退路を絶たれる勇者隊。炎は肉を焼き骨を消し炭にした。城門は前後からの火が起こす煙により酸素を失い、ある者は息が吸えず倒れ、ある者は逃げようとし焼かれ、ある者は戦意を失いその場に座り込んだ。


「くくく、やってくれる」


尚、余裕を見せる東堂。


「小賢しい真似を」


東堂は剣を抜くと思い切り振り抜いた。


「覇王の前でするんじゃねー!」


東堂の剣から鋭利な風刃が放たれ、城門の上に居た巨龍の首を落とした。


「我が覇道を阻む者は、例え実の息子でも巨竜(バケモノ)でも容赦しねー、殺す」


東堂の瞳には怒気と殺気が揺らぎ満ちていた。


「アイツを討ち取れば終わりだ」


形勢有利と見てガレス軍が籠城より討って出る。


「悪逆非道なる暴君よ、成敗してくれる」


ガレス兵がゼウス王に突撃を試みるも、漫画の様に吹き飛ばされ木の葉の様に舞い散る。砂塵が上がりゼウス王の目から紅の殺気が漏れ出ている。


「掛かって来い!ウジ虫共が。束になっても物の数にもなりゃしねー!この正吉の首が獲れるものならば獲ってみろ」


大暴れをし出したゼウス王を止められる者は居ない。唯一人を除いては。


「年貢の納め時だ」


「飼い犬に手を噛まれるとは、この裏切りクソ野郎が。手前が裏で糸を引いてやがったのか」


ゼウス王の目の前に現れたのは鈴木だった。


「俺じゃありませんよ。フェルト王子です。そりゃあ愛する奥さんを生贄にされたんだ、怨みの一つも覚えるわ」


「どこまでも愚かな小人よ。大局が見えねば一国の王としてやっていけぬ。何故分からんのだ!」


ゼウス王は一瞬だけ親の顔を垣間見せた。


「親の心子知らずとは言うが、駄目だろ嫁を犠牲にしちゃ」


「他人が知った口を聞くな!」


「そうだな、他所様の家の事に口を出すのは無粋だ。しかしガレス(我が家)の事には遠慮はしない」


「どこまでも馬鹿にしおって。よかろう先ずはお前を血祭りに上げて戦意を折ってくれる」


二人の勇者が戦闘態勢に入った。殺気と殺気がぶつかり合い、達人の立ち合いの様な雰囲気を放つ。周りが固唾を呑んで見守る中、先に仕掛けたのはゼウス王だった。


「先手必勝!我が雷の前で朽ちるが良い」


ゼウス王は紫電を纏い剣を振り被る。振り下ろされた剣を鈴木は受け太刀で凌ぐ。


「ファイアスピア」


ゼウス王は続け様に。


「アイスクラッシュ、ウィンドスワロ、アースインパクト!」


4属性の魔法を連続で鈴木に放った。


「これが幾多の魔王を屠って来た力よ。短縮詠唱による」


ポタポタ


「ん?」


ゼウスの口から血の雫が滴り落ちる。


「インターセプトか、我が魔法に...ついて..くると...わ」


鈴木の体から湯気が立ち上り、髪は凍え顔には軽度の火傷を負っていた。


「見事なり...」


一騎討ちが終わりフェルトが歩み寄って来た。


「フェルトよ、嬉しく...思う。後は好きに...思う様にす...れば良い」


そう言い残すとゼウス王は事切れた。

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