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喜怒哀楽の人形

放っとけば無尽蔵に出てきそうな木偶達をジークフリードが窓の外まで押し返す。


「インフェルノ!」


鈴木は壊れた扉口からの侵入してくる木偶の坊を焼き払う。


「私の可愛い人形達がそんな攻撃でやられる訳無いでしょ」


炎をものともせずに木偶達は火の中から遠慮なしにどんどん現れた。


「よっこらせ!」


火を突破して来た木偶人形を前に出て来たやつから斬り伏せていく。胴体を真っ二つに割られようが、袈裟斬りで斜めに割れようが、動ける限り襲って来る。


「埒が明かないな」


鈴木は嫌気がさしながら、一体一体を復活出来ない様になるまで斬り刻んで行った。


「人間にしておくには惜しい逸材よね。ねぇ、もし良かったら私の人形(恋人)にならない?最初に会った時から良いなと思ってました。きゃ、恥ずかしい」


マリアンヌは手で赤くなった顔を覆い隠す。


「それは中々魅力的なお誘いですな」


「タスケ様!?」


「そうでしょう、そんな小便臭い小娘より私の配下になった方が幸せじゃない」


「はい、配下になりますって言ったらどうするの?」


「もちろん、下準備して私の可愛い木偶人形(コレクション)にしてあげる」


「嫌な予感しかしないけど下準備って?」


「それは、ねぇー生身だと臭いから.....」


マリアンヌの話を要約するとミイラにしてから生前の容姿に復元するらしい。イカれてやがる。


「ほら、美しいでしょ?私の恋人達は」


木偶人形の中に人間らしきものが数体いた。


「アンドレ、サスナー、グレントン、ガーカス。今日から彼も貴方達と同じ恋人よ、仲良くしてね」


マリアンヌの狂気がオーラとして滲み出ている様に錯覚する。アンドレ、サスナー、グレントン、ガーカスは他の木偶と違って武装し化粧まで施されていた。


「彼は喜びのアンドレ。死ぬ時に私の恋人になる事を喜びながら人形になったの。ずっとニコニコしているでしょう?」


喜びのアンドレが巨大な斧を鈴木に向け振り下ろす。


ガギン!


鈴木はオンリースイートで喜びのアンドレの斧を受け流した矢先。


バキ!


まともに武道家の蹴りを食う。


「その子は怒りのサスナー。彼はどうしても私の近くに置きたかったから、無理矢理人形にしたら、怒り(そんな)顔になっちゃった。でも怒っててもセクシーでしょ?」


ゴーー!


鈴木は立ち上がる間も無く、火魔法が自分に向かって放たれたので転がり回避した。


「イケオジ魔法使い。哀しみのグレントンは私の生い立ちを聞いて人形になってくれたの。彼は何も言わず、ただ私の話を聞いてくれる」


シャキン!


鈴木は紙一重で避けた。最後に出て来た剣士の一撃は鈴木の回避先を予測し先回りして放たれていた。後もう少し反応が遅れていたら、頭と体は離れていただろう。


「最後は楽しみのガーカス。今も昔も一緒に良く遊んで楽しかった。ガーカスがもっとイケメンなら一番のお気に入りだったんだけど...。まあそれも味よね」


喜怒哀楽の人形が鈴木とアドニス、ジークフリードの前に立ちはだかる。


「ん〜、やっぱり人形にはなりません。ごめんなさい、さようなら」


鈴木はアドニスをジークフリードに乗せると自分も跨り右手にはオンリースイート、左手にはワールドオブアートを装備転送し構えた。


「捕まってて下さいね」


「はい?」


鈴木の合図でジークフリードが壊れた扉口から強行突破を図り、木偶人形達を力押しで廊下まで押し込んだ。鈴木はジークフリードに騎乗しながら両手の武器で近づく人形達を乱暴に斬り捨て突き飛ばした。


「.....」


「アドニス様、少し辛抱を」


無言のアドニスを気遣う鈴木だが、アドニスの心中は乙女そのものだった。絶対絶命のピンチを救い、いま正に命をかけて自分を守る英雄が現れたのだ。胸は高鳴り呼吸が乱れる、頬は朱に染まり頭が少しポーっとする。


「逃がさないで!」


マリアンヌが叫ぶと喜怒哀楽の人形達が凄い勢いで追いかけて来た。


「振り切れるか?」


鈴木の問いかけにジークフリードは一段速度を上げ進路を妨害する木偶人形を弾き飛ばし散々に蹴散らした。


「ご主人様を泣かされて荒ぶってるな」


ジークフリードは翼が生えたペガサスの様に城内を縦横無尽に駆け回り、マリアンヌの人形を見つけては跳ね飛ばし壊し回った。


「上出来だ。ジークフリード、アドニス姫を頼むぞ」


鈴木はアドニスに手綱を握らせると飛び降りて下馬した。


「タスケ様!」


「心配無用です、必ず戻りますから待ってて下さい」


ジークフリードは振り返えらず一直線に城門へ向かうと蹴破り、ガレス方面へ走り去った。


「さてと」


鈴木が振り返ると既に喜怒哀楽の人形達が追いついていた。


「死して尚そんな格好で戦わされるなんて可哀想に、俺がお前たちに引導を渡してやるよ。かかって来い」


鈴木と喜怒哀楽の人形達の間で殺気が交差して互いにぶつけ合う。一触即発、鈴木がオンリースイートを固く握り締め、ワールドオブアートを向け牽制する。


「アンタねー!!ウチの子をどれだけ壊したら気が済む訳?絶対許さないから」


マリアンヌも到着すると一斉に喜怒哀楽の人形達が鈴木に襲いかかった。


ガン!ギン!シュボー!


連携の取れた攻撃で反撃の隙を与えない。鈴木は怒涛の勢いで攻めてくる喜怒哀楽の人形パーティーに苦戦した。

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