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あの日の眼光

鈴木が実況見分を終えて立ち去ろうとした時、アルテミスの出入り口で思いがけない人物に遭遇する。


「リーダー!」


「メドラウト。どうして此処に?」


「この人達に通せんぼされて、入れ無いんです」


鈴木は出入り口を固めていた兵士に事情を説明してメドラウトを通して貰った。


「酷いですよ、僕を置いて行くなんて」


「すまない。でもメドラウトが留守にしてたんだから、しょうがないだろ」


「キッシュに聞いて急いで来たんですよ!」


「そうかそうか、ごめんよ」


メドラウトが頬を膨らませて怒っている。鈴木はメドラウトを遇らいながら、リーゼとミーシャと合流する為に集落を歩き回った。


「それにしても全滅なんて可哀想に...」


メドラウトはアルテミスの家々を見回しながら呟いた。


「ちょっと忘れものを思い出した。ついて来てくれ」


「はい」


鈴木はメドラウトを引き連れ、この前宿泊した所へ向かった。


「えっと村長の家は...」


鈴木が道に迷っていると。


「村長の家はあっちですよ」


「ありがとう、メドラウトはアルテミスに来た事があるのか?」


「ええ、一度だけ」


鈴木はメドラウトが指差した方へ歩き、目的地に到着した。


「えっと」


鈴木が探しているのは金剛鋼の鎧兜。放重のマントを失い、重く動かせずにいた装備品の状態を確認しに行くと、漆黒の鎧兜は姿を消し無くなっていた。


「マジか...」


犯人が持ち去ったのか、大の男2、3人でも運ぶのに手こずる品を最初から存在しなかったかの様に持ち去られていた。鈴木はショックを受けつつも、扱い切れない装備を諦め宿泊した場所を後にした。


「どうしたんですか?」


「実は...」


鈴木が金剛鋼の鎧兜をここに置いていたが、無くなっている事をメドラウトに伝えると。


「ちょっ!マジっすかー、それはショックですね〜」


メドラウト(この野朗)ヘラヘラしやがってと思いつつも、八つ当たりしても仕方無いので、メドラウトを連れてリーゼとミーシャを探しに行くのを再開した。


「あれ!?メドラウトさん」


ミーシャを発見して合流した。


「この辺りにはいませんね」


ミーシャは悲しそうに辺りを見回しながら言った。


「リーゼを探そう」


鈴木はメドラウトとミーシャ(二人)を引き連れリーゼを探した。集落の外れに損壊した小屋から声が聞こえてくる。鈴木達は急ぎ向かうとリーゼが床に向かって話しかけていた。


「もう少しの辛抱ですわ!今助けますから我慢して下さい」


リーゼは大戦斧を大きく振り下ろすと床を破壊して、床下に隠れていた小さな生存者を救出した。


「もう大丈夫!安全ですから安心して下さいませ」


リーゼは優しく穏やかにエルフの子どもを抱き抱え励ました。鈴木は急いでザイオンに知らせる様にミーシャに頼んだ。


「はい!行ってきます」


鈴木は家にあった毛布をエルフの子どもに掛ける。


「ひっ!」


エルフの子どもは恐怖から身を竦めた、余程怖い思いをしたのだろう。鈴木はリーゼから距離を取って離れた。


「なあ、メドラウト」


「はい」


「アポロンの時さ、獅子王(アポロン王)が暗殺されそうになった時、何処に居た?」


「どうしたんですか?いきなり」


「答えろ」


「自分の部屋に居ましたよ」


「じゃあ黎明の旅人(俺達)がポセイドンの海中ダンジョンで、魔王モルドレッドと対峙していた時は?」


「ポセイドン...。ああ武器屋に居ましたね」


「武器屋?海中ダンジョンの中だろ」


「そう言えば、そうでした...」


「アテナでマリーローズ(アテナ王)が暗殺されかけた時、お前は何をしてたんだ?」


「質問の意図が分かりませんね、言いたい事があるなりハッキリ言った方が良いですよ」


部屋全体が殺気で満たされる。


「何でエルフの子ども(その子)を殺そうとしてるんだ?」


リーゼがエルフの子どもを身を挺して守る。


「...っくく。間抜けな奴らだと思ってたけど案外やるじゃん!何処で気づいたんだ?」


メドラウトはニヤニヤしながら鈴木に質問する。


「一つアポロンで暗殺未遂の騒ぎがあった時、お前は体調不良の原因が風邪だと言っていたが、獅子王(バルバロス王)との戦闘で怪我を負い発熱したんだろう。二つマリーローズ(アテナ王)を暗殺しようとした人物像を、然も見たかの様に細かく言っている事。三つモルドレッドのハーフマスクから覗いていた眼光でエルフの子ども(かれ)を睨みつけているのは何故だ」


鈴木はゆっくりオンリースイートを鞘から抜き臨戦態勢に入る。


パチパチパチ


モルドレッド(メドラウト)が拍手する。


「言い掛かりレベルの稚拙な推理だけど、真理に辿り着いた事を評して及第点をあげちゃう、うぇ〜い!」


モルドレッドはグーパンタッチをしようと、拳を突き出してお前も来いとサインする。普段のメドラウトの礼儀正しさとは、かけ離れた態度に鈴木は戸惑う。


「ちぇっ!ノリ悪りーぞ」


モルドレッドは背負っていた槍を構え叫んだ。


「さあ、滅びの始まりだー!!」

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