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致命的な弱点

「やっと観念したか。ゼウスに歯向かった事を後悔しろ!」


「はーはーはー、っはー」



「さあ処刑の時間だ、騎馬隊を出して蹴散らしてやれ」


連隊長の命令で50を超す騎兵隊が駆け足で突っ込んで来る。


ドドド、ドドド!


雨の音を掻き消す様に、地鳴りの様な馬群の足音と共に、騎兵隊が目前に迫っていた。


ドン!グサグサグサ


槍が人体を貫通し息の根を止める。


「馬鹿な...」


汚泥に塗れ伏せていたフレッシュゴーレム(それ)等は折れたり壊れた槍を持って、騎兵達を待ち伏せしてたかの様に迎撃した。


「嘘だろ?アイツ死霊使い(ネクロマンサー)なのか」


「いや、大剣を振り回してるんだぞ?戦士だろ」


突如現れた死人の軍団にゼウス兵は驚いた。鈴木の指に嵌められた指輪が紫に輝く。


「おい、あれズルドじゃないか」


「アイツはメッパ」


先ほどまで共に敵と戦っていた戦友が変わり果てた姿でフレッシュゴーレムとなり、襲いかかって来る惨状にゼウス連隊は酷く狼狽した。


「形勢逆転だな、此処からは処刑の時間だ」


鈴木を守る様にフレッシュゴーレムが円陣を組む。先ほど馬毎貫かれた騎兵達も馬と共に立ち上がり、鈴木陣営へと参加した。


「ひっ!」


雨も収まり始め、死の軍団から血の臭いが立ち込める。


「おっ、恐れるなゼウスの精兵達よ!フレッシュゴーレムは焼き払えば」


ゼウス連隊長が魔法小隊に攻撃命令を出そうとした時には、フレッシュゴーレムの騎兵隊が魔法小隊を全滅させていた。雨のせいで弓矢に火が付き難く、指も悴んで上手く火を付けられない。瞬く間にフレッシュゴーレムとの乱戦となり、ゼウス連隊は著しく戦力を失い潰走寸前に陥った。


「このままでは敗戦の責を取らされる、たった一人に我が連隊は敗れるのか?マテラ神よ何故...」


ゼウス連隊長が悲観に暮れていると。


「終いだ」


ザシュッ


鈴木は一思いに連隊長を貫いた。千以上いたゼウス軍の連隊は半数以上がフレッシュゴーレムと化し、残りは潰走し方々に散った。


「ふうー。なんとかなったな」


雨で鎧やガントレットに付いた血もある程度流れた。雨が止み日差しが出て、少しポカポカの陽気になってきた。漆黒の鎧兜が太陽光の輝きを反射して側から見れば神々しさを感じる。


「お前!ここで何をしている?」


突然の怒鳴り声に反応して振り返ると、目を晦ます程の広範囲の炎が鈴木が立つ半径200メートルを焼き尽くし焦土と化した。金剛鋼の鎧兜のお陰で致命傷には至らなかったものの、フレッシュゴーレムはそのほとんどを焼き払われ、鈴木の身にも異変が起きた。


「ぐおっ」


身体が極端に重くなり倒れ込んでしまった。どうやら放重のマントが焼失した事により、金剛鋼の鎧兜の自重を支えきれずに転倒してしまったようだ。


「こんな所に魔王がいたとは」


どうやら俺のラスボス的な装い(ビジュアル)から魔王と誤認されてしまった。まあフレッシュゴーレムを従えて死屍累々を築いてしまえば仕方ない事だ。


「じゃなーい!俺は魔王じゃない話を聞いてくれ」


「ノラ魔王は皆んな同じ事を言う。信じられるか」


「止めろ!こんな死に方絶対に嫌だ、しかもオンリースイートを装備したまんまじゃねーか。魔王じゃないんだー」


鈴木は背中に背負っているオンリースイートを外そうと動こうとするが、重過ぎて真面に動けない。鈴木は若干半泣きになった。


「こんなトラップがあるとは。放重のマントが焼けて金剛鋼の鎧の重さでオンリースイートが外せないなんて、誰が予想出来るか!ふざけんなよ!!」


鈴木は誰にキレているのか騒ぎ立てている。足音が近づいて来る。


「あー、終わった。これヤバイ、デスペナルティー喰らうやつだよね」


鈴木は諦めムードになりつつも、近づいて来た瞬間に魔法をぶつけて倒そうと、活路を見いだそうとしていた。


「お兄様」


聞き覚えがある声が向こうからする。


「ノヴァ!無事だったのか?」


「はい、それより」


「近づいてはならない。まだ殺していないんだ」


「殺す!?誰をですか?」


「そこに居るノラ魔王だ」


「お兄様の馬鹿!」


「馬鹿!?兄に向かって」


「この方は私を救ってくれた命の恩人、いえアルテミスを救って頂いた大恩のある方なんですよ!」


「えっ?」


その後アルテミスへと招待された鈴木は、ノヴァに小一時間説教を受けたノヴァの兄プルトから平身低頭の謝罪を受けた。


「この度は私の早とちりで大変ご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした!」


勝手にイメージしていたエルフ=高飛車な幻想をプルトは見事に払拭してくれた。エルフに土下座される日が来ようとは、エルフの最上級の謝罪が古き日本の伝統と同じ事に驚きつつ。


「顔を上げて下さい。仕方ありませんよ、あの出立ですから」


「そうですよね」


「お兄様!!」


「はい!」


ノヴァに叱られシュン太郎なプルトは正座しながら謝り倒した。


「気にしてませんから」


「じゃあそろそろ」


「お兄ちゃん」


プルトは一度正座を崩そうとしたが、ノヴァのお兄ちゃん呼びから顔面蒼白になり正座し直した。


「兄が申し訳ございません」


ノヴァは本当に申し訳なさそうに灰塵と化した放重のマントを見つめていた。

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