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百罰

「俺には出来ない...」


鈴木はボロボロと涙を流し赦しを乞う。


「出来ないじゃねーよ、殺るんだよ!」


顔面を涙で濡らす鈴木に容赦無くアングリコが強要する。


「ほら!早くしろよ、ガキか手前ぇは?」


アングリコは鈴木の顔を何度も何度も平手打ちした。


「な?ブスっと刺すだけだろ。何にも難しい事言ってねーじゃねーか」


アングリコは鈴木の額に自分の額を擦り付け、ゼロ距離で罵声を浴びせ続けた。1時間が経ち、一刻が過ぎても鈴木は泣くばかりで動けなかった。


「あ〜あ。ウジ虫が!何で殺らねーんだよ、分かってんだろ?コイツら幻影なんだよ。本物の妻や子どもじゃねーんだからさ、殺っても大丈夫だって。ゲームと一緒一緒、大丈夫殺しても罪悪感なんて無いから、な!」


先ほどまで無頼漢の様に捲し立てたアングリコが急に優しい口調に切り替えた。


「うっ、うぐっ!」


泣いている鈴木に。


「ほら、いつまでも終わらねーぞ。サクッとやれば直ぐ終わるんだから、大丈夫本物じゃねーんだし」


アングリコは鈴木が落とした包丁を持たせ、鈴木の背中を軽く摩った。鈴木は精神的に追い詰められ、激痛による恐怖から妻子に近づいた。


「やっ、やめて。あなた」


心神喪失状態となった鈴木が無表情で唯美を刺した。


「.....」


アングリコは鈴木を監視している。


「この...子だけは!」


唯美は口から吐血しながらも必死に敬太を庇う様に覆い被さる。


「よしよし。先ずは一人目だな、今迄の奴でお前が一番遅せーからな。赤ん坊の方も早くやれよ」


アングリコは鈴木に敬太の殺害を指示する。


「ぐふっ!おえぇー」


鈴木は両手にベットリと付いた最愛の妻の血を見て吐瀉した。


「きったねーなー、臭せーもん吐き散らかしてんじゃねーぞ。ウジ虫!」


アングリコは鼻を指で押さえ、手を振って臭いを返す仕草をした。


「っはあ、はあはあ。おえっ!」


色々な感情が入り混じり頭がグルグル回る。天地が分からなくなりながらも、血に染まる包丁を握り直した。


「よし!頑張れ、もう一息だ」


アングリコが大きめな声で応援してくる。


「クソ、クソ、クソ!違う、これは偽物なんだ。唯美や敬太じゃない!」


鈴木は自分に言い聞かせながら敬太を自らの手で殺害した。部屋には血の池が出来て鈴木の吐瀉物が床を汚していた。


パチパチパチ


アングリコは鈴木に拍手を送った。


「良くやった。最愛の妻子を自分の手で殺すなんて獣にも劣る奴だ」


アングリコは真顔で言い放った。


「うっ!うう...」


鈴木は自分のしでかした事を今更後悔し嗚咽した。


「何だ、泣いてんのか良い大人が。良くやったじゃねーか。ほらちゃんと見てやれよ、お前が殺した人間の顔を」


そこには息絶えた唯美と敬太が転がっていた。


「うわー」


鈴木は頭を抱え叫んだ次の瞬間。


「じゃあ次は溺死させろ」


気が付くと風呂場に居た。後ろを振り向くとアングリコが欠伸をしながら立っていた。


「溺死?」


浴室の扉を開けると唯美と敬太が浴槽で身体を温めていた。


「ママー」


「ゆっくり10まで数えて出ようね」


先ほどとシュチュエーションが違うのは敬太が赤ちゃんでは無く、1〜2歳に見受けられる。


「いーち」


「にー」


「さーん」


「どうした?早くしないと」


「お前!ふざけるな!!」


「よーん」


「ごー」


「そうそう言い忘れてたけど」


「ろーく」


「一回でも仕損じると」


「なーなー」


「始めからやり直しだからな」


アングリコは満面の笑顔で言い放つ。


「はーち」


「この鬼畜が!お前、それでも」


「きゅー」


鈴木は浴室に押し入ると、最愛の妻子を浴槽に浮かべた。溺死させるまで永遠に思える程に時間がかかり、鈴木は地獄の様な光景を間近で見るしか無かった。


「はあはあはあ」


「よしよし。調子が出てきたな!じゃあサクサク行こうか」


アングリコが指を鳴らすと。


「どう言う事だよ?」


「轢死でーす。どうぞー」


鈴木はエンジンが掛かっている車の中に居た。助手席には楽しそうにしているアングリコが座っていた。


「ほら!あそこあそこ」


車の進行方向に唯美と敬太が居る。


「もう止めて下さい。お願いします!何でもしますから」


「何でも?」


「はい。何でもしますから勘弁して下さい」


「なら」


アングリコは一拍置くと。


「殺れよ」


鋭い眼光で鈴木を睨み付ける。


「ひいっ!」


萎縮した鈴木はアングリコの言われるがまま、アクセスを踏む。


「良いか。轢死は中途半端だと痛いぞー、思いっ切り轢いてやれよ。苦しまない様に」


「おおー!」


鈴木はアクセルを一番奥まで踏み込む。


ドン!!バキバキ!!


強い衝撃の後、フロントガラスに激突した最愛の妻子が、道路に倒れ見るも無残な姿になった。


「このまま一気にやっちまおうぜ!」


また立ち位置が変わり場面がすり替わる。


「なっ!一回やっちまえば楽だろ?」


「もう許して下さい。お願いします」


鈴木はアングリコに土下座をして懇願した。


「大丈夫大丈夫!後たった残り97回でお前のカルマ()は赦される」


「後97回って...」


アングリコの言葉に鈴木は絶句した。

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