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奸計

「貴様等!いい加減にしろよ、ゼウスの使者に対して、この無礼!!これがアテナの同盟に対する答えと本国に報告するからな」


「何事です?使者殿、声を荒げて」


「アテナ王!約束の時刻はとっくに過ぎておりますぞ、私も暇では無いのです。早く返答を下さい」


マリーローズは爪をいじいじしながら溜息を吐いた。


「つまらない男」


「はっ?」


「周りを見てみなさい。ここは魔法と芸術の国アテナよ、この部屋にある美術品を鑑賞していれば一日なんて、あっと言う間に過ぎてしまう筈なのに...芸術が理解出来ない野蛮人とは仲良く出来そうに無いわ」


マリーローズは玉座からゼウスの使者を見下しながら、一時も目を合わさず興味の無い素振りで話した。


「っ!馬鹿にしおって覚えていろ。必ずこの屈辱は忘れんからな」


「はいはい。殺さないだけでも感謝してよねー」


マリーローズは棒読みでゼウスの使者を追い返した。


「ローズ殿下。よろしかったのですかな?」


ゼッペの質問に。


「レイラ」


「はっ」


「先程の同盟の話を皆に聞かせてあげなさい」


「かしこまりました。我が諜報員からの報告ではアポロン、ハデスとの同盟は嘘でした。まだ帰って来ていない者もおりますが、時節的にポセイドンとの同盟もあり得ないと思われます」


「何故だ?」


「ポセイドンは最近、理由不明の災害で戦争どころではありません。また我が国(アテナ)と同様に国主が変わったばかりの為、帝国と王国(オーディンとゼウス)のいざこざに進んで介入するとは到底思えません」


「なるほど。ではゼウスの使者の切り札(同盟)はブラフと言う事か」


「しかしレイラ」


「はい」


「約束より遅い上に半分も居ないのは情け無いわね」


「申し訳ございません。今後この様な失態を致しません」


「なら不問にしましょう。各自自分の仕事に戻りなさい」


「はっ!」

「御意」

「かしこまりました」


ゼウスとの同盟は御破算にして、アテナは帝国との同盟へとシフトした。


「炎舞王」


「はっ、紫皇帝様」


「ペルメに伝令を送って」


「かしこまりました。直ぐに手配致します」


「.....」


「?」


アンナはマリーローズの様子がいつもと違う事に気がついた。


「どうかなさいましたか?」


「あの」


アンナが言い終える前に。


「ローズ殿下、此方に来て下され」


マリーローズは言いかけた言葉を飲み込み、ゼッペに呼ばれ行ってしまった。


「どうしたのかしら?あの子」


アンナはマリーローズを気にかけながらも、帝国との同盟を進めるべく、ペルメに伝令を手配した。


「おい!これはどう言う事だ?何故包囲されている」


翌日の早朝、アテナの城兵が見た光景は、何万もの大軍に四方を包囲された光景だった。


「大変です!!ゼウスの軍勢に包囲されています」


「なんですって!?」


マリーローズが慌てて天守塔から見た限り、大地を覆い尽くす軍団が東西と北に展開され、小勢であるものの自然の要害となる南の崖側にも陣が展開されていた。


「これはどう言う事?何が起こっているの!」


動揺するマリーローズをゼッペが落ち着かせる。


「ローズ殿下、落ち着いて下され。先ずは三方の城壁に兵士を配置致しましょう。後は突然大軍に包囲され国民が恐慌状態に陥っている事でしょう、民達を安心させてやりましょう」


「えっ、ええ。そうして」


ゼッペの言葉に少し落ち着きを取り戻したのか、マリーローズは玉座に座った。


「炎舞王」


「はい、轟地王」


「すまなんだが民達を勇気づけて来てくれんかの」


「私がですか...」


「ワシもレイラも手が一杯なのだ。ペルメも居らぬし四光王で動けるのがお主だけなのよ」


「...かしこまりました」


アンナは自分にそんな大任が務まるか不安だったが、城下に行くと恐怖に怯える人や泣いている子どもを目にした瞬間、不安を忘れた。


「落ち着いて下さい」


「炎舞王様!」


「私達はどうなってしまうのでしょうか?殺されるんですか!」


パニックに陥っている民にアンナはピシッと言い放つ。


「大丈夫です、紫皇帝様も我々(四光王)も付いてます。それに皆さんは戦う力(魔法)を持っているじゃありませんか、皆が皆を守り合えば必ず負けません!ゼウスにアテナに手を出した事を後悔させてやりましょう!!」


アンナの激励にアテナ国民のパニックは収束していき、寧ろ戦争に対する士気が高揚していく。アンナが檄を飛ばして民を奮起されている最中アテナ城では。


「レイラ!」


「ここに」


「各地に派遣した者達は?」


「...まだ戻っておりません」


「決まりね。我々の目論見は看破されていた」


「ゼウスの小僧め、やりおるわい」


ゼッペは顎髭を指で梳かしながら、不敵な笑みを浮かべた。


「つまり掌で躍らされてたのは私達だったって事、やってくれるじゃない!私達に悟られずに伏兵を潜ませるなんて」


「ペルメが上手くやってくれるでしょう。それまで籠城で時を稼げば勝ちましょうや」


「しかしゼウスが伏兵を配置していたならば、氷殺王も危ういのでは?」


「雑兵が何百何千と居ようと四光王の敵ではなかろう」


「そ、そうですね」


「なら籠城戦の準備をなさい」


「はっ、只今」

「かしこまりました」


ゼッペとレイラは直ぐさま軍勢を率いて城壁へと向かった。

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