思わぬ襲撃
村の入り口に備え付けの松明に照らされている街道には、気配は無く平和に時は流れた。少し衛兵と立ち話をして近隣に出現する魔物や村や町の情報を集めた。夜中に襲われた羽付き団子虫はフライバグと呼ばれているモンスターらしい。
「ありがとうございました、お仕事頑張って下さい」
「そちらもお気をつけて」
鈴木が散策を終えて村長の家に戻ろうとした時、井戸の影がモソモソ動いている事に気付いた。月明かりを頼りに注視していると何匹かのゴブリンが現れた。
「マジか、あれモンスターじゃないですか?」
鈴木が井戸をゆび指すとゴブリンが村の中に入り混んだ。
「まずい!何処から入り混んだんだ、お前はここにいろ。あんたは冒険者に声をかけてきてくれ」
衛兵の1人が指示を出すとゴブリンを追いかけて走り去った。鈴木は頼まれた冒険者を探したが酒場には酔い潰れた輩ばかりで、話しを聞いてすぐ動けたのは2人だった。他の冒険者と手分けしてゴブリンを探した。
「民家に入ってなきゃいいけど」
鈴木が息を整えながらゆっくり異変を聞き逃さないように傾聴しながら進んだ。少し離れた所で金属のぶつかり合う音が夜中の村に響いた、誰かがゴブリンと戦闘を始めたようだ。鈴木は短剣をぎゅっと握りしめると死角を注視し、奇襲を受けないように用心しながら警戒にあたった。
「きゃ」
小さな悲鳴と微かに聞こえた食器の割れる音、聞こえた方に走りドアが開いている家に突入した。
「大丈夫か?」
鈴木が突入した時、ゴブリンが丁度住人に襲いかかっているところだった。ゴブリンは無害な村人を一度解放すると鈴木に向き直り、ナイフの様な短い刃物をこちらに向けてきた。間を詰めながら攻撃範囲に入った瞬間、一足飛びでゴブリンに短剣を突き立て短剣を回し、傷を抉って致命傷を与えた。
「ありがとうごぜーます」
「助かりました」
襲われていた村人に回復魔法を施し、次のゴブリンを探すため家屋から出て細心の注意を払いながら巡回した。あちらでも戦闘の音が止んでいた、念の為に戦闘の音がした方に向かうと、先程の衛兵さんがゴブリンにトドメをさしていた。安全を確認するとまた周囲の警戒に戻った。村を二周する頃には手助けしてくれた冒険者達が残りのゴブリンを退治し終わっていた。
「ありがとうございます、村に被害が出なかったのは、あなた方のおかげです」
「村の皆さんがご無事でよかったです」
鈴木が村長の家に帰ろうした時
「おいおい、俺達は命がけで戦ったんだ感謝の言葉だけで済まそうってんじゃないだろな?」
参戦した冒険者達がゴブリン退治の報酬を請求した
「もちろんだ、明日村長のところを訪ねてくれ。私から村長に話しを通しておく」
冒険者達は言質を取ると酒場へ帰って行った、鈴木は衛兵に一礼すると村長の家に帰宅した。夜が明け空が白みがかって鳥の鳴き声が聞こえてくる。朝飯前に残りのクエストを片付ける為、早朝から背負子を背負い松明やポーション、野営用の香を装備すると鈴木は洞窟へと向かった。早朝は肌寒い、日中が嘘のように快適だ。モンスターも早朝は活動が鈍いらしく、何度か目がいくつもある猿と戦闘になったが、フライバグに比べればかなり優しい相手だ。雑魚を蹴散らし洞窟に直行。洞窟内でも何度か戦闘になったが無傷にて圧勝している為、せっかくマスターした回復魔法の出番は無かった。
「寒っ!」
6階層は冷んやりしているが、今日は一段と寒い気がする。ただあの魔王がいる時の血の気が引く寒さでは無いのが救いだ。鈴木は香を焚くと鎌でアリアケ草を刈り、背負子に乗せ一旦休憩を取ると帰路についた。村に戻って来たのは昼前くらいで若干の人の往き来が見てとれる。村長の家に帰りアリアケ草を納品すると。
「たった3日足らずで達成してしまうなんて、もしかしたら私が想像してる以上の冒険者のようだね」
村長から銀貨30枚を渡された。
「これは」
「報酬だ、受け取ってくれ。君の腕なら冒険者として大成するだろう、頑張ってくれ。あとあの部屋は好きに使ってくれ休みたくなったら帰って来なさい」
「ありがとうございます」
鈴木は村長の優しい言葉に涙ぐんだ。部屋に戻ると納屋に行き鎌と背負子を戻し外出した。向かったのは酒場だ、日中に酒を飲もうとしているのか?いやいやこの男は次の目標の為、仲間を探しに来たのだ。




