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彼女の過去4

「いい加減にしなさい!」


アンナの強烈な火炎魔法により、新月の暗い闇が真昼の様に明るく照らされ、レイラクロームとマリーローズの顔が良く見えた。


「レイラ、ローズ」


二人の顔は泣きそうな表情で辛そうにしていた。


「貴方達...」


「アンナ。本当の友達だからこそ、これ以上の過ちを看過する事は出来ない」


「.....」


マリーローズの瞳から一雫の涙が溢れ落ちた。


「閣下!」


「何事ですか?」


騒ぎを聞きつけた衛兵達が現場に駆けつけた。


「その二人を捕らえなさい」


「えっ?」


「早く!!」


「はっ!」


「姉様、目を覚まして」


「アンナ!」


「連れて行きなさい」


衛兵達が去るとアンナは疲労とショックから、その場に座り込んだ。顔を手で覆い隠すと長い時間を使い、乱れていた息を整えて立ち上がった。


「裏切り者め。許さない」


翌日


「捕らえた二人を処刑しなさい」


「レイラクロームとマリーローズ様をですか?」


「そうよ」


「しかしレイラクロームは歴代優秀な魔法使いの家柄、それにマリーローズ様の処刑となれば、ゼッペアルターナ氏が黙っておりませんよ」


「この(紫皇帝)を暗殺しようとしたのよ!殺されて当然でしょう」


「処刑はなりません」


「お前まで私に盾突くのか?ユミカ」


「...紫皇帝様の為を思えばこそ」


「ならばどうする?咎め無しでは許さんぞ」


「であれば、これで如何でしょうか?」


ユミカの提案によりレイラとローズを全裸にし見せ物の刑に処した。


「如何ですか閣下。お怒りは鎮まりましたでしょうか?」


「ええ、良い気味だわ。私を裏切るからこうなる」


二人は通行人の好奇な目に晒されては、罪状を読んだ人に石を投げつけられていた。


「2日よ」


「は?」


「2日で下ろしなさい。良いわね」


「かしこまりました。その後は」


「充分よ」


2日後彼女達は刑から解放され家中の者に保護された。二人の友を失ったけど、私にはユミカがいる。モンキー時代からの友達で一度アテナを離れたが、最近アテナに戻って来て偶然再開した。彼女を侍女に取り立てたのは、懐古心からか或いは自分の出世を見せたかったのか定かでは無いけど、ユミカは一生懸命尽くしてくれる。


「アンナ様」


「何?ユミカ」


「服の裾が解れてますよ」


「あっ、本当だ」


「後で私に下さい。修繕しておきますから」


「ありがとう」


別日


「アンナ様」


「どうしたの?」


「この前、お菓子を摘み食いしましたね?はしたないですよ」


「何で知ってるの?」


「アンナ様の事は何でもお見通しです」


「ふふふ。ユミカには敵わないわね」


「言って下されば、私が用意致しますから」


「分かったわ。ありがとう」


また別の日


「アンナ様」


「少し待って頂戴」


「はい。紅茶をお淹れ致しますね」


「ありがとう」


作業を終えたアンナがユミカに淹れて貰った紅茶を飲み一息ついた。


「何か用かしら?」


「はい。少し混み入った話を」


「良いわ聞きましょう」


アンナとユミカは向かい合って座った。


「最近の四光王様達の傍若無人な振る舞いは目に余ります。特にモンキー地区への増税及び、利権の独占は下級民を苦しめているのはご存知ですか?」


「そうね。でもある程度は仕方ないと思うの」


「ご存知で何も手を打って下さらなかったのですか?」


「ユミカ。政治とは綺麗事では上手く進まないの、権力者が甘い汁を吸うのは世の常でしょう。そのお溢れを平民が貰う、アテナだけの話では無いのよ」


「...あの頃のアンナちゃんは居ないんだね」


「何?」


ユミカのぼそっと吐いた言葉を聞き取れなかった。


「いえ何でもありません。アンナ様は最近モンキー地区に行かれましたか?」


「あの事があってから一度も近寄っていないの」


「是非、今度私と一緒に行きませんか?」


「...。遠慮しておくわ」


「アンナ様に見て頂きたいものがあるんです」


「今は忙しいから、また時間が出来たら行きましょう」


「はい!必ず」


あの場所に近づくとアンナは二人の事を思い出してしまう。故にユミカに幾度と誘われたが何かに理由を付けて断っていた。その内に二人の関係がギクシャクしだしアンナはユミカを遠ざける様になっていた。


「侍女のユミカが謁見を申し込んでおりますが如何しますか?」


「私は忙しいから断って頂戴」


また城内寝室にて


「アンナ様」


「ユミカ...。侍従長」


「はっ。ユミカ、ここは紫皇帝様の寝室ですよ、突然訪問するとは無礼でしょう。早く出て行きなさい」


「アンナ様、少しだけでもお話を」


「下がりなさい!二度と紫皇帝様の寝室に近づいてはなりませんよ!!」


部屋から追い出されるユミカの顔を私は見ていなかった。

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