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復讐心と義憤

「紫皇帝はどうなったんだ?」


「囚われ幽閉されてるそうです」


「それにしてもマリーローズだったか?あんな顔してエゲツないよな」


「どうかしたのか?」


「紫皇帝の一族郎党を全員捕まえて、牢に入れてるらしいんだが公開処刑だってよ。まだ10にも満たないガキが居るって話じゃねーか、胸糞悪い」


キッシュは気分悪そうに吐き捨てる。


「全員処刑?」


リーゼが無言で頷く。


「どうなってるんだ...」


敗れた特権階級がどうなるかは、歴史から見ても明らかだ。仕方無い部分もあるだろう、しかし責を負うべきは大人であり、未成年ましてや何の落ち度も無い子どもを処刑する事は間違っている。鈴木は肚の底から怒りが湧き上がって来た。


「およしなさい」


リーゼが鈴木の顔色を見て制止する。


「一個の国、しかも魔法使いが何千何万もいるアテナで暴れるつもりですか。見ず知らずの子どもの為に」


「おいおい、義兄弟。流石に無謀だぞ」


「リーダー。それは蛮勇でも無い、只の自殺です」


「ははは、真正面から国と事を構える訳無いだろ。俺がそんな馬鹿だと思ってたのか?心外だなー」


鈴木は笑顔で黎明の旅人の助言を聞いた振りをする。牢屋に閉じ籠められ、死にかけた恨みも重なり、マリーローズ(アテナ王)を殺す事を決意していた。


「とにかく、アンナがマリーローズの横暴を食い止め諫めているから、余計な事をしてはいけませんわよ。アンナは子どもの事はもちろん、紫皇帝の家族も恩赦を出す様に取り計らう為、尽力しているのですから」


「リーゼ。やけに詳しいな」


「何でそこまで知ってるんだ?」


「そりゃあ、毎日会ってますもんね」


メドラウトが爆弾発言で場を一瞬で凍らせた。


「いいですわね!?」


リーゼはメドラウトの発言を無かった事にして、他3名の同意を強制的に取った後、病室を出て行った。


「おい!どう言う事だよ。じゃあな義兄弟」


キッシュは退室したリーゼを追いかけて行った。


「リーダー。良かったら果物剥きましょうか?」


「ありがとう、メドラウト」


メドラウトは何種類かのフルーツを綺麗に切って皿に並べてくれた。


「またお見舞いに来ますね」


「大丈夫だ、明日くらいには退院するつもりだから」


「そうですか、じゃあ宿屋で待ってますね」


メドラウトと別れた後、鈴木はベッドから起き上がり座りながら深呼吸した。少し目眩が残っているが歩行に支障が出ない程度である事を確認すると、病院を無断で退院してしまった。復讐心と義憤に満ちた闘志を燃やし、鈴木は一度宿屋に戻り装備を整えると、再度炎舞王(アンナマリー)の住居へと向かった。不可視のスキルで侵入し様子を伺うが、アンナもしくはマリーローズの姿は見当たらなかった。


「何処に居やがる。あの小娘」


炎舞王の邸宅を後にし、本丸であるアテナ城の城門付近に到着した。時刻は薄暮となり薄暗くなっていく。鈴木は城門が開くタイミングを見計らい、不可視のスキルで城内に侵入、更に夜更になり見張りが減るのを待った。


「そろそろ行くか」


夜も更けて松明を使わないと良く見えない時間になり、鈴木は猫の目と不可視のスキルを駆使して、アテナ城の中枢へと進んだ。何度も見張りの衛兵とすれ違い、何度も廊下を渡り何度も階段を登って、ようやく大きく豪華な扉の前に到着した。


「ここだな...」


鈴木は聞き耳スキルで中の様子を探った。


「陛下!女、子どもはお助け下さい」


「アンナマリー、禍根を残すべきでは無いわ」


「紫皇帝の一族郎党を根絶やしにしては、末代まで愚王と誹りを受けます」


「誰かがやらねばならぬ事、この何百年の過ちを私が正すのよ」


「どうかお考え直し下さい」


「有り得ない。処刑は明日執り行いなさい、以上よ。下がっていいわ」


「.....」


「何をしているの?下がって良いと言ったのよ」


マリーローズらしき声の語気が強まる。


「マリーローズ!いい加減にしなさい!!」


アンナの怒った声が部屋の中から聞こえた。


「なっ!?アンタ誰に口を聞いて」


マリーローズが言い終える前にアンナが割り込んだ。


「誰にって貴方に言ってるの!国の指導者である、王たる貴方が慈悲を見せなさい」


中々白熱して来たので、鈴木はバレない様に扉を少し開け隙間から中を覗いた。


「アテナ王たる私になんて口を利くのかしら。捕らえて地下牢に入れてやるわよ」


「やれるものならやってみなさい。そう言えば私の仲間の太助さんを拉致監禁してくれたわね?その事についてゆっくりお話ししましょうか」


背中越しだが普段のアンナから想像出来ない凄みを感じる。あのクソ生意気なマリーローズの顔が引き攣ってるのは痛快だ。


「離れなさい!分かった、分かったわよ。紫皇帝の一族の処遇はアンタに任せるわ、好きにしなさい」


「かしこまりました陛下。宿敵に情けをかける偉大なるアテナ王に敬意を」


「煩いわね、早く出て行ってよ!」


「失礼します」


アンナはマリーローズにお辞儀をすると退室した。鈴木は不可視のスキルを駆使して、アンナと入れ替わる様に入室した。

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