監禁
鈴木が目を覚ますと地下牢に監禁されていた。ご丁寧に手枷足枷に猿ぐつわのフルコースで身動きが取れない様にされていた。
「ふごふご」
鈴木は声を出そうとするが猿ぐつわの隙間から少し息が漏れるくらいだった。困ったなー暗くてジメジメしてて、何より少し臭いのが嫌だと思っていると。
カツンカツン
靴の踵が階段を鳴らし来客を報せた。
「気分はどう?」
アンナらしき女が見下しながら微笑で鈴木に問いかける。が当然、口を封じられている鈴木は返事する事が出来ない。女は地下牢を開け中へと入って来た。
「ふーん。どうやって可愛がってあげようかなー」
女は鈴木を平手打ちして笑う。
「何?その目は、言いたい事があるなら言ってみなさい」
「んーん〜!!」
鈴木は精一杯の抗議をするが全く伝わらない。
「お姉ちゃんも、こんなのの何処が良いのかしら」
女は鈴木の顔をマジマジと凝視して首を傾げる。失礼な奴だ、放っとけよと鈴木の心中は穏やかでは無かった。
「ところでお兄さんとお姉ちゃんの関係を教えてくれるかな?」
ようやく猿ぐつわから解放され、鈴木は口で深呼吸した。
「まずお前は誰なんだ?」
「下郎に名乗る名など無い!なんて言いたいところだけど、大サービスで教えちゃうね。私の名前は」
鈴木もようやく、ここに来て、ある人物の名前が浮かぶ。
「マリーローズ...」
「マリーローズだよ」
マリーローズは一瞬キョトンとするが。すぐに笑顔になって。
「なーんだ、お兄さん私の事を知ってたの!じゃあこっちの質問ね。お姉ちゃんとはどういう関係なの?」
「じゃあ、アンナの妹がマリーローズなのか」
「狡いなー。こっちの番なんだから、ちゃんと順番は守ってよね」
マリーローズは鈴木の太腿に手をそっと置く。その刹那、強烈な電撃が全身を駆け巡り、鈴木は悶絶しながら倒れ、身体から湯気の様な煙りが出た。
「雷系はお姉ちゃんの専売特許じゃないんだから」
クスクス笑いながら、倒れた鈴木を優しく抱き起こす、マリーローズの瞳には何か薄暗く深い闇が覗いていた。
「もう一回聞くねー。お姉ちゃんとはどういう関係なのかな、教えてくれる?」
薄暗い牢の中でマリーローズの身体に金色の雷が帯び、微かに発光していた。バチバチと電気が弾ける音が無音の監獄に響き不気味さを放っていた。
「関係も何も仲間だ。冒険者パーティーの一員だよ」
「...。案外つまらない答えね、痛ぶったらもう少し面白い事を言ってくれるのかしら」
マリーローズの発光は強さを増し、暗い部屋が隅々まで照らされる程の、明るさにまで到達した。
バリバリ
先程までの静電気的な可愛げのある音では無く、触れたら怪我では済まなそうな危険な音に変わった。
「どこまで耐えられるかなー」
マリーローズの狂気と相反して、幼さが残る笑顔で近づいて来る。
「炎舞王様!」
「何事かしら?」
「はっ!王都の制圧に関して、嵐刃王様がお呼びでございます」
「そう...。命拾いして良かったね、数日は来れないけど、落ち着いたらゆっくり遊ぼうね」
マリーローズはクスクスと笑いながら、雷を発電するのを止めた。徐々に光っていた身体から明るさが無くなり、元の暗い牢獄に戻った。
「じゃあね、お兄さん」
そっと手を差し伸べ鈴木の顔を撫でるマリーローズ。
「待て!」
鈴木の制止も聞かず、彼女は立ち去ってしまった。
「おい!ここから出せ!!」
鈴木が力一杯叫んでいると。
「煩い黙れ!」
牢番が鈴木に猿ぐつわを付け直す。
「ん〜ん〜!!」
それから数日は一日にある食事の時だけ、猿ぐつわを外され、乱暴に口に食べ物を突っ込まれては、直ぐに沈黙させられる。1日の大半を暗く臭い牢の中で雁字搦めされ、聞こえて来るのは水の滴る音だけ。体力気力共に消耗し眠りに就こうとすると、水の音で起こされ気が狂いそうになる。
「誰でも良いから助けてくれ」
口を塞がれ言葉になって出ないが、鈴木は一つの結論に達していた。それは次にマリーローズが近づいて来たら、スーサイドによる道連れである。もうアンナの妹とか関係無く、唯々鈴木にとっては憎悪の対象となっていた。だが待てど暮らせどマリーローズは現れ無かった。一週間二週間どれ程時間が経っただろう、とうとう何日か前から牢番まで来なくなり、鈴木は空腹と孤独で極限にまで追い詰められていた。
ピチョッ!ピチョッ!
水滴の落ちる音がとても耳障りだったのに、今は不思議と心地よく聞こえてくる。猿ぐつわによって魔法スキルを封じられ、地面に手枷足枷で固定されている手首や足首から、擦り切れ滴る血が流れていた。
「こんな死に方あるかよ...」
鈴木は失意の中、意識を失った。




