四光王
魔法戦祭当日
「なんか楽しみだな!」
「はしゃぎ過ぎですわ、キッシュ」
「魔法戦の大会なんて中々見れませんから、しかも魔法使いの国と呼ばれる、アテナ国の最強の四光王が出るともなれば、興奮して当然です」
キッシュとメドラウトの鼻息が荒い。
何か久しぶりな気がする、コイツらと連むのも何年振りくらいの気がするのが不思議だ。
「やっと着いたぜ」
コロッセオの様な丸型の観覧席の中央に、対戦用の石畳が敷かれている。
「にしても遠いな」
「仕方ないよ、ギリギリチケットを買えたんだから、手に入っただけでも行幸ものだよ」
文句を言うキッシュを宥めるメドラウト。
「そろそろ始まりますわ。太助」
「何だ?」
「フレッシュジュースを買って来なさい」
「はいはい、姫殿下」
口から吐いた言葉に自分でハッとする。リーゼは表情を変え無かったが、声がうわずっていた。
「じゃあ俺のも頼む」
「僕も一緒に買い出し行きますよ」
「いいよ。座っててくれ、買って来るよ」
鈴木は闘技場から出て、近くの売店で頼まれた飲み物や軽食を購入していると、歓声が闘技場から漏れて来た。
「始まっちゃったか」
鈴木はお釣りをサイフ袋に入れず、慌ててポッケに入れて戻った。場外にまで響き渡る声。
「さあ!皆の者、刮目せよ!!四光王様の登場だ。まずは炎舞王フレイム様」
火柱が8本立つと、その間を堂々と歩く中年のナイスミドルが現れた。大歓声が上がる。
「続いては氷殺王ミストレーネ様!」
氷の小船を滑らせ、優雅に登場するマダム。
「次は轟地王バルシャ様!」
土で出来た巨人四体に籠を持たせ、高みから参上した。
「最後は3年振りに新しく四光王に就任された、嵐刃王レイラクローム様!」
飛竜を駆り颯爽と姿を披露した。
「では予選を制した挑戦者の登場です。四光王様にはシードで戦って頂く為、まず挑戦者達で戦います」
「何だ?面倒臭い。ひいふぅみぃ」
フレイムが挑戦者の数を数えると。
「其方は20人、此方は4人。丁度良い数字じゃねーか、纏めてかかって来いよ」
「フレイム。貴方と言う人は...」
「別にオラはそれで良いぞ」
「.....」
「ええっと、はい!ただ今、紫皇帝様から許可が降りましたので、特別ルールで戦って頂きます。宜しいですか?」
参加者全員が頷いた。
「ではレディー、ッファイ!!」
やたら声が響く人の合図で魔法戦が開始された。
「なる程、これは予選要らないな」
「圧倒的ですね」
「茶番ですわ」
5倍の不利を2分と経たずに形勢逆転させてしまう、四光王達に会場のボルテージがMAXになる。開始三分で挑戦者を全滅させてしまった。
「勝者は...四光王様です!皆様惜しみない拍手をお願い致します」
会場は割れんばかりの拍手喝采。
「何だコレ!?」
鈴木は驚愕した。
「はははっ。義兄弟、世界一の魔法の祭典に驚いたか?」
「無理もありませんよ。アテナは魔法先進国ですから」
「ああ」
そうじゃない、俺が驚いたのは誰もインターセプトをしなかった事だ。魔法の威力は確かに凄いが、あれならアンナの方が強くないか?
「退屈ですわ。これならアンナの洗濯の妙技を見ている方が百番楽しいです」
リーゼは日傘を深く持ち、見えていないんじゃない位の低い位置でクルクル回し始めた。
「ちょっ!傘回すなよ、危ないだろ」
「リーゼさん。どうしたんです?急に機嫌が悪くなって」
リーゼの茶番という言葉とイライラで鈴木はある結論に至った。
「まさか...八百長」
鈴木が視線を戻すと一対三の構図が出来ていた。
「嵐刃王よ。新しい仲間として迎え入れる為、儀式を行う」
「若いって羨ましいわー。おばさんが四光王になるまで40年の月日が掛かったのに」
「オラの恋人にしてやるよ」
「.....」
「最初から嵐刃王レイラクローム狙いだった訳だ」
「でも。今日は来た甲斐が有りましたわ。これから一方的で屈辱的なショーが見られるのですから」
リーゼは不敵に笑う。リーゼがおっかない事を口走っている間に、決勝試合が開始された。
「出る杭は打たれな!フレイムウェーブ」
「ヘルメスシューズ」
嵐刃王はインターセプトで消すのでは無く、高速回避で炎舞王の炎を避けた。
「行けー、我が僕達よ」
轟地王バルシャの四体の巨人がレイラクロームを捕まえ様とするが、全く追いつかない。
「邪魔よ退きなさい!フリージングエンクロージャー」
氷殺王ミストレーネが猛き燕を氷の鳥籠に捕らえようとするが、軽々と避けて当たらない。
「先輩方、そろそろ引退して下さい。私は弱い者虐めが大嫌いなのです」
レイラクロームは空から他の四光王を見下しながら棄権勧告をした。
「馬鹿にするな!小娘が」
「いいわ、かなりキツイお仕置きが必要ね」
「オラの嫁になれ」
ムキになった氷殺王が数十に及ぶ氷柱を出現させ、嵐刃王に向け一斉射撃した。
「無駄ですよ、おば様」
レイラは少し小馬鹿にした様に挑発すると、風を操り氷柱の勢いを殺すと、地面へと落下させた。
「あっぶねーだろ!ミストレーネ」
氷殺王の氷柱が地面に減り込み、巻き込まれた土の巨人が何体か戦闘不能になってしまった。
「アンタ達も黙って無いで生意気なガキをやっちまいな!」
「オラのゴーレム。許さねーぞ」
「ぎゃ!」
轟地王のゴーレムの一体が氷殺王を完全な不意打ちで叩きのめした。
「馬!バルシャ、何してんだよ?」
「フレイムよー。だってコイツがオラのゴーレムを壊したから」
「あーた、わーた。良いからレイラをどうにかしろ」
フレイムはレイラが近づいかない様に、距離を取りながら炎の弾丸で牽制していた。




