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エクサ級の勇者

アンドーはニヤニヤしながら鈴木を捲し立てる。


「君達が討伐したゴートクラーケンと、このホワイトドラゴンに違いはあるのか?イカは殺してトカゲは駄目、理解出来ないな。君のエゴを押し付けるな」


ハヤトが続けた。


「もしもホワイトドラゴンを解放しようとするなら、命を賭けろよ。全力で光拳と絶拳が相手してやるから、半端はねぇぞ」


ハヤトはガンをくれる様に、鈴木を下から上目で睨みつけた。


「義兄弟、ここは我慢しろ」


「鈴木さん。帰りましょう」


キッシュとメドラウトが鈴木を宥めた。依然ホワイトドラゴンに打ち付けられた鎖に、オンリースイートの切っ先を置く鈴木。変わらない態度に苛立ちを隠せないハヤトが、地下の暗闇を全て消す程の光を拳に宿し、更に輝かせた。


「あと3秒で鎖から、その腐れ剣を退かしやがれ」


「.....」


「2〜」


「.....」


「1〜」


「.....」


「ゼ〜」


ハヤトがカウントを終える前に鈴木はオンリースイートを持ち上げた。


「よし、さっさと行け!口外すんじゃねーぞ。もしも、この事が俺の耳に入ったら殺すからな」


鈴木が外した鎖をハヤトは光拳で溶接した。


「ところで」


アンドーが鈴木達に質問した。


「今回の魔物の大量発生の原因は分かったかな?」


「いえ...」


「そうか、それは残念。君達は6階層まで到達したので、以後このダンジョンへの立ち入りを禁じる」


アンドーは言いたい事だけ言うと、ハヤトを置いて足早に去ってしまった。


「持てるだけ持って帰れよ」


馬鹿にした様にハヤトが見下した言い方で言い放った。鈴木は悔しくさの余り、握り拳から血がポタリ、ポタリと垂れ、顔を真っ赤にした。


「義兄弟、ここは我慢だ」


「大人になれよ、おっさん」


ハヤトは鈴木の顔色を見て、更に煽る様に手をヒラヒラと振って、この部屋を出て行く様に促した。


「.....」


鈴木は静かに拳を開くと、キッシュとメドラウトに連れられ宝物庫へと戻った。その間、悲痛な叫びを上げるホワイトドラゴンを振り返り見る事は無かった。


「クソ!何なんだよアイツ」


「落ち着け義兄弟。悔しいが今の俺達が戦っても殺されるだけだ、ここは我慢しろ」


「そうですよ。とりあえず宝を持てるだけ持って帰りましょう」


鈴木の怒りは収まらないが止むなく宝を荷物袋に入れ、上層へと戻る道でずっとホワイトドラゴンの叫び声が聞こえ、4階層でようやく竜の声が聞こえなくなった。


「これで良いんだ」


鈴木は自分に言い聞かせる様に、重い足を一歩また一歩進めた。海中ダンジョンから出る頃には朝を迎え、大量の財宝を手に入れたが虚しさが残る冒険だった。














「待て待て、吟遊詩人よ。俺が見た世界と全然違うじゃないか。確かに物語としてはお前の語る詩の方が信憑性もあり万人を納得させ易い。だが現実はそうじゃない。鈴木とキッシュ、メドラウトはお前の詩ほど賢く無かった」


クロノスが舌打ちをしながら人差し指を振る。


「少し休んでいろ吟遊詩人、私が代わりに語ろう。愚かで向こう見ずな勇者の物語を」


クロノスは物語を、鈴木は静かに拳を開くとキッシュとメドラウトに連れられ宝物庫へと戻ろうとした。その間、悲痛な叫びを上げるホワイトドラゴンのところまで巻き戻した。


「では、僭越ながら私が語ろう」


暗転


「やっぱり駄目だ。すまん」


鈴木は二人に謝罪すると振り返り、一直線にハヤト目掛けて走り出した。ホワイトドラゴンを痛めつけているハヤトの死角から渾身の一撃を加えた。


「おっさん、正気か?舐めた真似しやがって、頭沸いてんじゃねーの」


ハヤトは間一髪で鈴木の一撃を受け止めた。


「おっさんじゃねーし。おにーさんだろ!」


鈴木は力任せに押し込み、ハヤトを数歩下がらせた。


「分かってんの?今、お前はエクサ級の勇者(半神)魔王の序列3位(次期魔神候補)を敵に回してるんだけど。足りない頭で理解出来てんのかっつってんだよ!!」


「さっきからペラペラ喋りやがって、かかって来い!」


「上等だよ、おっさん。肉塊にしてやるよ」


ドン!ドン、ドドン!!


ハヤトの高速の踏み込みで地面は凹み、地面の振動と同時に爆発音が聞こえた刹那、ハヤトの膝蹴りが鈴木の眼前に迫っていた。 

「オーラ〜!!」


膝で鈴木の顔面を砕かれる前にキッシュがハヤトを不意打ちで蹴り飛ばし事なきを得た。


「やる以上負けられねーぞ」


「やっちゃいましたねー、困ったなー」


檄を飛ばすキッシュの傍らで棒読みしながら不敵に笑うメドラウト、むしろこんな時だからこそ心強く感じる。


「どいつもコイツも馬鹿ばっか、まとめて相手してやる。殺してやるよ」


ハヤトは素早い動きで三人を翻弄する。ハヤトはキッシュに狙いを定めるとインファイトの間合いまで詰め、乱打戦に持ち込んだ。強烈な打ち合いは1分にも及び、キッシュが膝から崩れ落ち血反吐を吐いた。


「次は僕に任せて下さい」


メドラウトがハヤトの気を逸らしている内に、鈴木はキッシュに駆け寄り回復魔法でダメージを癒した。


「邪魔だ退けーーー!」


ハヤトの光拳がメドラウトの槍を捕らえ、十数メートル吹っ飛ばした。


「回復役がいるならソイツから消さねーとな」

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