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脱退と加入

掲示板に貼られているクエストに目をやると、参加条件にランクがメガ以上と記されており、内容の記載を確認した。


「海中ダンジョンの魔物討伐及び、原因の解明か」


「破格の探索許可を出してますね」


そこには、ダンジョン内で発見された財宝や、討伐した魔物のドロップアイテムは発見者のものとする。但し死者に対する賠償金は一切払わない。腕に覚えがある者は奮って参加されたし。最後に成功報酬が書かれていた。


「何故一階層に魔物が殺到したのか、原因解明した者に白金貨5枚を報酬とする、中々魅力的な金額だな」


掲示板に掲げられた内容を読むや否や、冒険者達が続々と我先に水族館へと走って行く。


「俺達も行くか」


「すぐに参りませんわ」


「焦りは禁物だ、義兄弟」


「?」


「こう言う金の臭いがプンプンするのは、気をつけた方が良い。大体急いては事を仕損じる」


「今から海中ダンジョンに行っても、冒険者でごった返してますよ」


「よろしいじゃありませんか。彼等が勝手に雑魚を蹴散らして、私達に楽をさせてくれるのですから」


「なるほどー、クエストって急いで行けば良いってものでも無いのか」


「時と場合によりますけどね」


焦った鈴木を落ちつかせ、黎明の旅人は一度ホテルに戻る事にした。


「あれだけ冒険者が向かった訳ですから、もう魔物が地上に出て来る事も無さそうですね」


「アンドーとか言う奴は出来るな。自分の懐を傷めず、あまつさえ労力まで無償で手に入れてやがる」


「無償では無いよ。白金貨5枚の懸賞金を出してるじゃないか」


「それは原因解明が出来たらだろ、アイツが原因と認め無かった時は、払わないかもしれないぞ」


「流石に一国の代表がそんな事しないでしょ」


キッシュとメドラウトの分析を聞きながら帰路に就く。街は一種のお祭り騒ぎで、冒険者の色めき立った雰囲気を察した商人達が、海中ダンジョンの近くで露店を準備し出していた。


「商魂逞しいね〜」


「ポセイドンは観光業が盛んだから、慣れているんでしょうね」


キッシュとアンナが忙しなく露店を組み立てる商人達の素早い動きを見て失笑した。


「私達も見習わないといけませんね」


「ああ。奴らの時世を読む力は優れていて、先々の事を考え、手を打つ手腕には敬服するな」


長い海岸を過ぎる頃には第一号店が建っていた事に鈴木は酷く驚いた。クリスタルパレスに到着すると、一旦解散して休息に入る。


「リーダー」


「メドラウト、どうした?」


「相談が...」


鈴木はメドラウトを部屋に招き入れると話を聞いた。


「実は海中ダンジョンに、かなりレアな武具をドロップする魔物がいるらしく、我儘で申し訳無いんですが、一度パーティーから離れたいと思います」


「黎明の旅人で一緒に行けば良いだろ」


「自分の趣味に皆を巻き込むのも気が引けますし、中の様子を斥候として見て来ますよ」


「そうか分かった。気を付けてな、皆には俺から伝えておくよ」


「ありがとうございます。欲しい武具を手に入れたら即帰って来ます」


「早期入手を願ってるよ」


「では!」


意気揚々としたメドラウトの背中を見送ると、その日のディナーの際にメドラウトの事を全員に伝えた。


「しょうがないな、武具の事となるとメドは見境が無くなるからな」


「元々ソロ専門で冒険者をなさってたのだから、仕方ありませんわ。ここで無理に引き留めでもしたら、脱退もありえますわ」


「私達は海中ダンジョンに何時入りますか?」


「そうですわね、1週間くらいバカンスを楽しみましょうか」


「えっ!そんなに遅くて大丈夫なんですか?」


「冒険者稼業を長くしていた。私の勘が簡単に解決する内容では無いと言っています」


「ここの魔王は魔神の十翼だぞ、簡単に解決する案件に破格の条件は出さないだろ。絶対裏に何かあるはずだ」


冒険に慣れているリーゼと、情勢に詳しいキッシュのアドバイスを聞き、黎明の旅人は1週間程骨休めで滞在した後に海中ダンジョンへと向かう事で決まった。


「それに運が良ければ、メドが情報を持ち帰って来るかもしれないな」


「本当にですねー」


美味しい海の幸と山の幸を噛み締めながら、鈴木はまだ見ぬ海中ダンジョンへと思いを馳せた。


「ダンジョンと言えば、アリアケ草を取りに行った時、以来か」


ミーシャと一緒にダンジョンに潜ったのが、遥か昔の様に思えた。濃厚な体験ばかりだった鈴木にとって、実際の時の流れより、ずっとずっと長く感じていた。


「そうだ!皆に相談が」


1週間後


「では出発しますか」


「準備OKだ」


「よろしくてよ、アンナ」


「太助さん、新たなパーティーメンバーの紹介をお願いします」


「この前、相談したミーシャさんだ」


「皆様の武勇伝は予々聞き及んでおります。力不足ではありますが、宜しくお願い致します」


「よろしく」


「宜しくお願い致しますわ」


「よろしくお願いします」


あらかた挨拶を済ますと。


「よし!海中ダンジョンに出発だ」


ミーシャを加えた黎明の旅人は、海中ダンジョンに歩みを進めた。

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