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パーティー登録

「まさか冒険者ギルドに登録して無かったのか、俺達モグリだな」


キッシュがケタケタ笑っていると。


「笑い事ではありませんわ、冒険者ギルドに登録しておかないと、色々不都合が出ます」


リーゼが叱る様に鈴木とアンナに言い聞かせた。


「登録?」


鈴木がハテナを頭に浮かべていると、メドラウトが優しく教えてくれた。


「冒険者パーティーは冒険者ギルドに登録して、正式に認可されます。言わば我々は自称黎明の旅人で、他の人がギルドに申請して登録されてしまったら、名乗れ無くなります。ギルドに依頼される今回の様な、指名クエストを受けられないと言う、弊害も起こります」


「大変だ、すぐ行って登録しないと」


鈴木が事の重大さに気づき慌てていると、アンドーが笑いながら。


「じゃあ。そちらの登録が終わってから、依頼内容を確認してくれ。君達に受けて貰えると嬉しい、それでは」


アンドーは供回りを連れ去って行った。


「まずは冒険者ギルドに行こう!」


黎明さの旅人はポセイドンにある冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドに入るとアポロンよりは人が少なかったが、結構賑わっていた。


「すいません」


「はい」


「冒険者パーティーの登録をお願いしたいんですが」


「かしこまりました。ではパーティー名とメンバーの名前を記入して下さい」


「えー。ではパーティー名をどうする?」


「えっ!?」


「何を言ってるんだ、黎明の旅人だろ」


「いやー、実は黎明の旅人(仮)なんだよね。アンナの案で」


「黎明の旅人で良いと思います」


「僕は準メンバーなんでお任せします」


「黎明の旅人で名を上げてるんですから、それになさい」


「じゃあ黎明の旅人で、えーと字が綺麗なアンナが書いてくれる?」


「良いですよ」


アンナがパーティー名とメンバーの名前を記載した。


「僕の名前まで入れて頂き、ありがとうございます」


「いえいえ、仲間じゃないですか」


メドラウトの名前も記載した、パーティー名登録用紙を受付の人に渡す。


「ええっと、黎明の旅人ですね...」


受付さんは一度考え込むと。


「付かぬ事をお伺い致しますが、ゴートクラーケンの討伐に参加されたパーティーですか?」


「はい、大きいイカと戦いました」


「少しお待ちを...」


そう言って受付の人は奥に入ってしまった。どうやら受付時の会話が漏れていた様で、周りがガヤガヤと騒がしくなってきた。


「おい!黎明の旅人だとよ」


「あんなヒョロいのばっかりがか?噂も信用出来ねーな」


「でもよ、あれって」


「げっ!薄氷の大戦舞じゃねーか。アイツって黄金の踏破者じゃなかったっけ?」


「何にせよ。リーゼに、あれはキッシュだろ、まともなパーティーじゃねーよ」


「アポロンのユキヒョウの王子までいるのかよ、噂も嘘とは言えないかもな」


「しかも、今売り出し中のソロ専門冒険者、メドラウトまで居やがる」


「ゴートクラーケンを倒したってのも、眉唾じゃ無いかもな」


他の冒険者が口々に突如現れた有名人の評価をする。


「お待たせ致しました」


受付の人に案内されてギルドの奧の部屋に通された。


「私はギルド長のカラムと申します。黎明の旅人の高名は存じております」


カラムは軽く会釈すると座る様に勧めて来たので、各自椅子に腰掛けた。


「今日はパーティー登録ですね、ここにお越し頂いたのには理由がありまして...」


カラムが書類に目を通しながら悩んでいた。


「あの何か問題でも?」


鈴木がハラハラしながら尋ねると。


「黎明の旅人は今まで冒険者ギルドに所属していなかった為、功績記録がありません。噂でアポロンでは魔王の討伐、ポセイドンではゴートクラーケンの退治が耳に入って来ておりますが、正式な手順を踏んで報告を頂いていない為、パーティーランクをどうしたものかと考慮しているのです」


「パーティーランク?」


「そのパーティーのランキングですわ。これが低いと報酬の良くない仕事しか受けられませんの」


「冒険者はランキングを上げるのが、目的の一つだからな。本当に登録して無かったのか」


「カラムさん」


「はい」


「冒険者ランクは何でも良いですよ。1番低いランクからスタートさせて下さい」


鈴木がカラムに提案する。


「皆、良いよな?」


「おう!」


「全く、しょうがありませんわね」


「幸いお金には不自由してませんからね」


「はい!皆さんと一緒に一からスタートしましょう。今日が本当の黎明の旅人の誕生です」


鈴木が全員の承諾を得るとカラムに伝えた。


「かしこまりました!なら私の裁量でテラ級にします」


「ありがとうございます。...テラ級って?」


鈴木の疑問にメドラウトが答えた。


「上から3番目ですね。最初の登録でテラ級は破格の扱いです」


「私達がテラ級!」


「当たり前です。黄金の踏破者は一段格上のペタ級でしたから、直ぐに越えますわよ」


「まぁ、良いんじゃねーか。ありがとうな、おっさん」


キッシュがカラムに肩組みをして、馴れ馴れしく礼を言うと。


「では。テラ級の認定証紋をお渡しするので、お受け取り下さい」


パッチを人数分渡され、認定証紋を付ける様に指示された。所謂ここでの身分証なのだとか、次来るまでに付ける事を約束して、ギルド長の部屋から退室した。


「とりあえず、部屋に戻ったら私が皆さんの分を付けるので、預けて下さいね」


アンナがパッチを付けてくれるらしい、助かる。俺は裁縫は苦手で縫うとぐちゃぐちゃになってしまうのだ。


「そう言えば、あのおっさんが依頼が、どうとか言ってなかったか?」


1番覚えて無さそうなキッシュがクエストの依頼掲示板を指差して皆に思い出させた。

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