表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/352

魔王 高木竜星

皆様お久しぶりです。カルデア クロノスでございます。


鈴木さんの物語は如何でしょうか?


中々冒険ライフを満喫している様で私も嬉しく思います。


さて私が突然幕間に現れたのは少しばかり、主人公の視点を変えさせて頂きたいと思い、罷り越しました。


これから吟遊詩人Fが歌い語るは、数奇な運命から魔王十将軍へとなった男の物語。


では少しばかり時を遡りましょう。

僕には尊敬する先輩がいる、先輩は家柄も良くエリートとはあの人の事を指すのだろう。天才外科医で幸せな家庭を築いている。それでありながら、ガス抜きに女性とスマートに遊ぶ姿はカッコイイと思う。今日も鈴木先生と合コンに行く約束をした。今回は満足させる自信がある、何せアイドルグループを卒業したての女優と東京少女コレクションに出たモデルをセッティングしたのだから。


「鈴木せんせ、今日はどこに連れて行ってくれるんですか?」


「高木か、気持ち悪い声出すなよ」


「気持ち悪いってひどいなー。合コンの女の子用意したの、僕なんですよ」


「わかってる、わかってる。そこそこの店用意しといたから。それよりそっちはどうよ?」


「今回は期待しといて下さい、モデルに某アイドルグループの卒業生が来ます。ちゃんと僕の分の部屋とってくれてますか?」


「どこまで俺に甘えてんだ、お前なんかラブホで十分だろ!」


「ええっ!ひでーっすよ。鈴木先生の悪い遊び奥さんに言いつけちゃいますよ」


「下らない事言ってないで、早く仕事しろ!」


いつもと変わらない下らない会話。この人は人を近づけ無いオーラを放っているが、懐に入ると結構可愛がってくれる。院内では人当たりがキツくて、同僚達からは嫌われている。コネ次期医院長なんて陰口を叩いてる人もいるが、鈴木先生の手術を見た事がある人間なら、あの人の腕前にそんな事は言えないと思う。


「高木何してる、戦場が俺達を待ってるぞ」


「待って下さいよ、鈴木先生」


合コンは恙無く進む、極めて自然に鈴木先生は元アイドル女優と消えていた。


「じゃあ、僕達もそろそろ」


「あっ、解散ですね。今日はありがとうございました」


モデルさんは高木を置いてさっさと帰ってしまった。


「えっ!?あれれ」


高木は一瞬の出来事で動揺したが、気を取り直して4人で飲み食いした請求書を、レジへと持って行った。


「56800円です」


「高っか」


収穫の無い投資に対して思わず口から出てしまった。店員さんは眉を潜め、ぶっきらぼうに高木のカードを切ると、さっさとホールへ消えた。


「絶対後で鈴木先生に請求しよ」


高木はレシートを財布に入れて店を出た。街の明かりがキラキラして、なんでも無いのに少し楽しくなってきた。


ヴーヴー


スマホのバイブに気づき電話に応答した。


「お兄ちゃん」


「シンコか」


「今どこにいるの?」


「今から帰るとこだよ」


「丁度良かった、コンビニで新作のデザート買って来てね」


「えー、面倒く」


高木が言い終わる前に愛する妹は容赦無く電話を切った。高木には3歳年下のピチピチ大学生の妹がいる。シンコは愛称でおしんこ好きな妹をそう呼んでいるのは高木だけだ。シンコに使いパシリにされるのも、高木にとってはありふれた日常である。


「これかなー?」


高木はシンコから送られてきた画像を必死に見比べながら、頼まれたデザートをコーナーから探し出した。


「880円です」


「高っか」


コンビニのデザートにしては高いと言う気持ちが、思わず口から出てしまった。失礼なお客さんに店員さんは顔をしかめた。高木は恥ずかしくなり支払い終えると、すぐさま店を後にした。


「これ鈴木先生に一緒に請求してもバレないかな、今度チャレンジしてみるか」


高木はコンビニで買ったデザートのレシートを見ながら帰宅した。


「お兄ちゃん、遅いよー」


「悪い悪い、ほらよ」


高木はシンコにデザートを手渡す。


「ありがとう、愛してるー」


「俺を愛してくれるのはお前だけだよ」


高木は少し泣きそうになるのをグッと堪えた。今日の敗戦がかなり効いていた。シンコは貰うものを貰うと直ぐに自室へと入った。


「妹までこの扱い、女が嫌いになりそう」


そう言いつつも高木は妹のシンコが大好きで可愛がっていた。高木家の両親は去年交通事故で他界し、大学生である妹が身寄りを頼って同居する事になった。若手とは言え医師である高木にとって妹の一人や二人、三人四人は朝飯前で、十人位なら養ってやるつもりでいる。また頼れる兄をシンコも慕っていた。


「さて寝るか」


次の日。


「あの野郎、お持ち帰りした上に休みかよ」


高木は嫉妬でイライラしながら、56800円の領収書を見つめていた。


「高木先生ー」


「はーい」


休憩中も頻繁に呼ばれてしまう。仕事を終えて帰宅するとシンコがニコニコしてスマホをいじっていた。


「なんだいい事でもあったか?」


シンコの嬉しそうな顔につられて高木の顔も緩くなる。


「へへっ、内緒」


「何だよ、気になるだろ。教えろよ」


「えーどうしようかなー」


シンコは照れくさそうに。


「もしかしたら、彼氏出来たかも」


「マジか!」


シンコは恥ずかしそうに頷く。


「おめでとう!良かったじゃないか。だから最近お新香よりもスイーツ女子ぶってたのか」


「ぶるって何よ」


「そうかシンコにも彼氏が出来たのか...。今度ソイツ連れて来いよ、兄ちゃん彼氏と一緒に飯食いたい」


「分かった、もう少し落ち着いたらね」


「おう!」


高木はシンコの嬉しそうな顔を見て、靴下を脱いで洗濯機に入れに洗面台に向かった。

魔王誕生には序盤にショッキングでバイオレンスな内容があります。


未成年の方やショックを受け易い方の閲覧はご遠慮下さい。該当する方は144話の魔王誕生のあらすじまで読み飛ばして頂きますよう、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ