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責任

鈴木はアリスに呼ばれ、びしょ濡れになりながら旗艦へと向かった。


「ありがとうございます。貴方達が今回の功労者と聞いております」


アリスが労いの言葉をかけ鈴木の顔を見た時、多少の動揺の色を見せたが、直ぐに冷静に戻り事務的に話を進めた。


「レアソウルを渡して下さい」


「?」


「太助、貴方が拾った其れですわ」


リーゼがアリスの求める物をそっと教えてくれた。鈴木はレアソウルなる物をアリスに差し出すと、アリスはレアソウルを大事そうに抱き抱え、涙を流した。


「ありがとうございます。これで私は役目を果たせます、貴方には感謝の言葉もございません。僅かばかりですが、お気持ちを報酬に加えさせて頂きます」


アリスはレアソウルを高々と掲げ討伐の終了を告げた。ポセイドンの南港に着きアンガスから、熱烈なハグをされた。次いでリップル船長からは手が痛くなる程の固い握手をして称賛された。アリスとは会えなかったが、約束の報酬よりも白金貨二枚多く包んでくれていた。南港にはミーシャが出迎えの馬車を用意して待っていた。


「お疲れ様」


「ありがとうございます。疲れて足がガクガクだったんですよ」


鈴木が大袈裟に足を大きく振るわせ戯ける。


「本当に六大魔獣をやっちまうなんて」


ミーシャは鈴木を見つめ失笑した。


「ありがとうございます、ミーシャさん。休ませて頂きますね」


アンナを皮切りに黎明の旅人が馬車に乗る。南港からホテルまでの帰路を馬車に揺られながら、鈴木は疑問をぶつけた。


「レアソウルって何だ?」


「六大魔獣の核ですわ、あれが無いと討伐の証明が出来ませんから、海に落として無くしていたらクエストの報酬が貰えませんのよ」


「クエスト報酬ってどれくらいなんだ?」


「ゴートクラーケンは確か白金貨3000枚でしたよね」


メドラウトが人差し指を顎に当て思い出す表情で答えた。


「白金貨3000枚!じゃあボロ儲けだな」


「キッシュ...」


「キッシュさん...」


「流石キッシュですわ」


鈴木を除く三人がキッシュを残念な子を見る目を向ける。


「メドまで。俺なんか変な事、言ったか?」


「はぁ〜」


リーゼが溜息を吐くとキッシュの質問に答えた。


「今回用意した船団への手配料、傭兵と冒険者への報酬。物資と武器や道具の支払いに成功報酬への税金。最後は遺族への賠償金がありますのよ、正直マイナスだと思いますわ」


同じ境遇のアリスが心配なのか、リーゼの顔は暗かった。


「でも全滅せずに成功報酬も勝ち取れたんですから、完全勝利ですよ」


屈託の無い笑顔で言い切る、この男のこう言う所が人たらしなんだと思う。いつの間にか金剛鋼の兜を被っているのも許せてしまう。いや!許さん。鈴木はメドラウトから兜をもぎ取り装着しようとしたが、頭まで塩水に浸かってベトベトなので、手に持ってホテルまで帰った。


「ありがとうございました。ミーシャさん」


「この借りは必ず返す。約束だ」


ミーシャと別れホテルのエントランスにて。


「今日はここまでだ」


鈴木の解散指示で各々の部屋へ戻る。海水が乾きベトベトで気持ち悪いので、鈴木は部屋に入ると直ぐにシャワーで海水を洗い落とし、風呂で疲れを癒した。


「疲れた」


鈴木はボソリと呟き、ベッドで大の字で寝る。鈴木はハイを選び久しぶりにあのスキルを発動させた。


「しんどいけど期日が近いから行っとくか」


鈴木は着替え、一人で勇者と魔王が鎮座する摩天楼へと向かった。


「ご要件は?」


「鈴木太助と申します。ハヤトさんかアンドーさんはいらっしゃいますでしょうか?」


ハヤトとアンドーの名前が出た途端、受付の人の顔色が変わりアポイントを取ってくれた。


「やあ、鈴木さん。お疲れ様。巷でゴートクラーケンが討伐されたと持ち切りだよ。見込んだだけの事はある」


アンドーが満足そうに鈴木の肩をバンバンと叩く。今日はハヤトは同席していない様だ。


「これで刑罰は無効だ。おめでとう」


「そうですか、では失礼します」


鈴木が挨拶して出て行こうとした時にアンドーから呼び止められた。


「そうそう。明日の昼頃にまたここに来てくれないか」


「はい?」


「いやー、刑罰は無罪放免だが民事が未だ残ってるだろ。奴隷商から訴えがあって商品を盗まれたと、届出があったので明日民事訴訟で裁判を行う」


アンドーはニヤニヤしながら。


「まさか強盗殺人紛いの事をして、只で済むと思っていたのか?お前は暴力という力を行使したんだ、大きな力には比例した責任を伴う」


「こんな世界なのに、まるで日本みたいだな」


鈴木が鼻で笑うと。


「そうだ、ここでは俺が法律だ」


アンドーは満面の恐ろしい笑顔で鈴木に釘を刺す。


「逃げるなよ。必ず来い」


鈴木は了承し摩天楼を後にした。しかしながらこのエレベーター的なあれは見事に再現されていて、どうやって動いているのか大変興味を唆られる。来るまではイタリアのシチリアをイメージしていたが、摩天楼のせいでドバイって感じの方がしっくりくる。鈴木はホテルに到着すると瞳を閉じ眠りに就いた。


不眠不休を使用したせいか、目を覚ましたのは午後を回ってお手軽クッキングが終わった後だった。寝ぼけた顔に冷水をかけ、シャキッとする。バイトに向かい6時間働いて後に晩ご飯を買って帰る。何も変わらない日常、変わってしまった日常をただ淡々とこなしていく。帰宅後はいつもの様に風呂、飯、暇潰しに医学書を読んで過ごす。後は寝るだけ鈴木は眠る前にボーッとスマホを見ながら、何か趣味を探そうと誓いながら就寝した。

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