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超絶エリートの俺が異世界に行くなんて  作者: 吟遊詩人F
日常と異世界チュートリアル
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不気味な足音

洞窟に入り6階層までの道のりは、鈴木が前衛を受け持った。というよりはミーシャへの当てつけで、モンスターを精力的に倒していく。松明の火でモンスターの注意を引きつつ急所を狙い穿つ。ミーシャとの冒険のおかげで、経験値が大幅に上がったようだ。この洞窟で一番驚いた人食いコウモリでさえ、一撃で倒せる様になっていた。アリアケ草の群生地に到着すると。


「さて、私はここにいるから続きを済ませな」


ミーシャはまた前回と同じ場所で香を焚きだした。鈴木は村長から借りた鎌を用意すると。


「うおおぉぉぉーー」


雄叫びを上げながら一気に鎌でアリアケ草を刈っていく、かなりのハイペースでアリアケ草を刈りまくったが、1時間もしない内に体力の限界を迎えた。


「最初だけ飛ばしても駄目、自分のペースに持ち込まないと自滅するだけ」


ミーシャはアクビをしながら寛いでいた。


「くそっ、やってやる!」


ミーシャの態度は鈴木の闘争心に火をつけた、小休憩が終わると鎌を手に取り再度、アリアケ草を刈り始めた。


「早ければいいと言う問題じゃない、そのアリアケ草を納品するんだろ?丁寧に刈り取るんだよ」


ミーシャは、何処からともなく出した厚手の布の上で、ゴロゴロしだした。草刈りを始めて3時間くらいになろうとした時、とうとう半分のアリアケ草を刈り終えた。


「終わった...」


鈴木は達成感より疲労と腰が痛くて参った。


「じゃあアリアケ草を持って帰るよ」


アリアケ草を背負子に乗せて気づいた。


「どうやっても絶対全部持ち帰れない」


ちらっとミーシャを見るが、あっそうとソッポを向かれた。鈴木は一度背負子を背負うと、両手に持ってみるもやはり持ちきれない、ミーシャをちらっと見るも絶対気づいている筈なのに、こちらを見ようとはしなかった。しばらく無言の応酬があったが、ミーシャの初志貫徹の態度に鈴木が折れ、明日もう一度、一人で来る事にした。洞窟の一階層まで戻ってくると、いきなりミーシャが、鈴木に覆い被さるように、狭い通路に身を隠した。距離が近く吐息がかかる。あんなにガサツな女子が、すごく良い匂いがすると鈴木が思っていると、急に寒くなりだした。寒いと言っても温度では無い、何か、そう肝が冷え体感温度が下がる感覚。


「静かに」


ミーシャが息を殺しながら一言呟いた後、目をつぶり祈っているように見えた。


ひたっひたっ


「もしも見つかったら私を置いて逃げな」


不気味な湿った足音が徐々に近づいて来るのを感じる、そして素人の鈴木でさえ、近づいて来る何かが、ヤバイというのは本能で理解した。いつも気丈なミーシャが小さく震え、足音が近づくにつれ、震えが大きくなっていく。鈴木はこんなに恐ろしいと感じているのに、それでも自分を庇おうとする健気な少女に尊敬の念を感じた。緊張がピークに達した時、ヤバイものが通りかかるのを見た、それは人間の見かけだった事に鈴木は拍子抜けした。ヤバイものが違う通路に進み、少し経ってから静かに早急に退却し、洞窟を出ると全速力で、その場から離れ草原まで来ると一息ついた。


「あれは人間ですか?」


「あれは魔王だよ、昨日見ただろ」


魔王を初めて間近で見たが人の形をしているとは驚いた。もっとモンスターの親玉みたいなのを想像していた為、少しガッカリする気持ちもあった。鈴木が息を切らしていると、ミーシャは皮袋の水筒を取り出して飲ませてくれた。洞窟で出会った魔王と、ここまで走ったせいで脈が乱れ呼吸が苦しい。そのせいかミーシャを見るとドキドキしてしまう。


「これが吊り橋効果ってやつか」


「たまにおかしな事を言う奴だ、どこの出身なんだ?」


鈴木が吊り橋効果による一時的な混乱による気の迷いと思い、思案を巡らせていた為、ミーシャの問いかけに気づかなかった。


「なんだ国無しか、それとも...いやありえないな」


ミーシャが微笑を浮かべながら首を小さく横に振る


「何か言いました?」


「なんでもない、さぁ息が整ったなら村に戻ろう。追いつかれたり、他のノラにバッタリ遭遇じゃあ、冗談にもならない」

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