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再会

キッシュと一緒にしばらくポセイドン国を観光していると何やら騒々しくなってきた。どうやら街中で大立ち回りをしていて騒ぎになっているようだ。


「義兄弟、見に行こうぜ」


キッシュの目がキラキラして、カブトムシを前にした小学一年生くらいのテンションを見せた。鈴木は乗る気ではなかったが、進行方向の道すがらだったので、キッシュの提案を受け入れ、通り過ぎる際にチラッと横目で覗いた。


「このクソ女!捕まえてお前も奴隷にして売り飛ばしてやる」


「黙れ外道。あんたらみたいな奴らのせいで、この子達が悲しい思いをするのは、見過ごせないねー」


「調子に乗るなよ、チンピラ」


「その言葉、そのまま返してやるよ。揃いも揃って情け無いと思わないのかい?人身売買なんかして」


「奴隷商は立派な仕事なんだよ。俺達がいるから世界が回ってるんだ、感謝してほしいくらいだ」


「その通り」


奴隷商は下品な爆笑をすると髪はアマランサス、左目だけは紫色のオッドアイの女性に対して暴言を放った。


「お前の容姿なら一晩で金貨を稼げるだろう。今回の迷惑料で金貨100枚稼いだら許してやるよ」


「クズが!!」


鈴木は驚き過ぎて言葉を失った。今、奴隷商と喧嘩しているのは紛れも無く、ミーシャだったからだ。


「やっちまえ!」


「おお!」


大の男5人がミーシャに、にじり寄って高圧的に威嚇する。


「お姉ちゃん」


「大丈夫、私があなた達を守ってみせるから」


ミーシャは奴隷商から逃がした子ども達を安心させる様に優しく語りかけていた。


「オラーッ」


奴隷商の一人がミーシャに仕掛けるが、容易く打ちのめされる。流石はミーシャ師匠と言ったところか、二人三人と次々と剣を抜かず鞘で気絶させていく。


「お姉ちゃーん!」


ミーシャが三人目を叩きのめしたところで、子どもの悲鳴が上がる。


「そこまでだ!ネーチャン。剣を捨てろ、コイツがどうなってもいいのか?」


奴隷商の男が奴隷の子どもを人質に、短剣を子どもの首元にちらつせる。


「汚ねーぞ!」


「それでも男か!」


観衆から野次が飛ぶ。


「うっ、ウルセー!外野は黙ってろ。どうすんだ、お前のせいでコイツが死んでもいいんだな」


ミーシャはゆっくり瞳を閉じて深呼吸した。


「どうなんだよ、早く武器を捨てろ!殺すぞ」


殺すぞの、ぞの所でミーシャが高速で間合いを詰め、奴隷商から子どもを解放した。


「リピートアクセラレーション」


鈴木のみならず、その場にいた全員の時が止まり、ミーシャだけが動いた錯覚に陥る。


「怖かったよー」


「大丈夫、あとはあそこにいる悪い奴を倒したら、お父さんとお母さんの所へ帰してあげるから、待ってて」


ミーシャは人質になっていた子どもに笑顔で勇気づけ、悪党に向き直ると。


「後はアンタだけだよ、まだやるのかい?」


ミーシャが凄むが奴隷商の頭目は余裕を見せる。


「参った参った。降参だー、強いねーオネーサン。どうだろう、今なら見過ごしてやるから、商品を返してくれないか」


「断る」


ミーシャが即答すると奴隷商の頭目は首を横に振り、大声で叫んだ。


「センセー!先生ー!!お願いします」


その大声に呼応する様に一人の男がミーシャの前に立ちはだかる。


「引き際を間違えたな、オネーサン。今回のコイツらの治療費を合わせて、金貨千枚だ。死ぬまでこき使ってやるから覚悟しておけよ。まずは俺が相手をしてやるよ」


奴隷商の頭目は勝利を確信しており、ミーシャを品定しながら、やらしい目つきで脚から髪の毛に至るまでネットリと舐める様に見る。


「そこを退きな」


ミーシャが立ち塞がった男を払い退けようとするが、逆に往なされる。


「邪魔だよアンタ!死にたいのかい?」


「やれるものならやってみろ、小娘」


「怨むんじゃないよ!!」


ミーシャが習得スキルの居合で斬り込み、剣が男の首を捉えたと認識した瞬間、ミーシャの剣は無情にも折れ、折れた剣先が地面に突き刺さった。


「なっ!?」


男がニヤリと不気味に笑う。男は混乱するミーシャを捕まえると首を締め上げ、片手で軽々と持ち上げたのだ。ミーシャは折れた剣を力一杯、男の腕に向かって突くが、折れた刃が粉々に粉砕した。


「さっきまでの威勢はどうした。お前みたいな小娘が魔王である俺様に勝てると本気で思ったのか?馬鹿な奴だ」


「まお...う」


「はははっ、良いなコイツ。気の強い女を屈服させるのが、大好きなんだ俺。やべっ、興奮してきちゃった。コイツちょっと貸せよ」


「そんな!先生が使ったら、その女、廃人になっちまうじゃないですか」


「ああ?お前死にたいの」


「いえ!お好きにどうぞ」


この間も必死に男の手を振り払おうとする、ミーシャであったが徐々に酸欠によって、意識が朦朧として動けなくなってしまった。無法者の悪逆非道がまかり通るのであれば、この物語に救いは無い。しかし魔王の名を聞いても恐れず、臆する事無く歩み出でる漢が二人いた。

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