バトルロワイヤル
戦闘開始と共に激しいバトルが繰り広げられた。まず始めに先制攻撃したのは、魔導博士ジンライである。ジンライは水魔法を使い氷柱を出現させ、手当たり次第に射ちかけた。しかし敵もさることながら、殺人魔獣コルサクは片手ではね退け、黒豹のバルモスは軽やかに躱していた。キッシュは微動だにせず腕を組み目を瞑っている。
「おおっと!?魔導博士ジンライのアイシクルバレットが尽く回避されているー!ここで殺人魔獣コルサクが仕掛けたーー!!」
コルサクが巨体を活かし、ジンライに突撃をした。コルサクが走る足音に合わせて、観戦席にまで振動が伝わって来る。大振りのパンチを放つが、ジンライはスルリとコルサクの脇を抜けると、カウンターでコルサクの脇腹に、数発のアイシクルバレットをヒットさせた。
「グオオオーーン」
ダメージに堪らずコルサクが悲鳴を上げた。ジンライがニヤリとしたり顔をしていると、王者バルモスがジンライの顔を蹴り飛ばした。
「よそ見をするとは余裕だな」
黒豹の疾走は目にも留まらぬ速さで、ジンライとコルサクを圧倒している。当たらなけばなんとやら、手数や一撃の威力は及ばないものの、王者たる力を観客に見せつけている、バルモスに対してキッシュが言葉を放つ。
「雑魚共!そろそろ始めていいのか?つまらなくて眠くなりそうだ」
キッシュはこれみよがしに大あくびをして挑発する。今までの激戦が嘘みたいにピタリと止まって、観客を含め会場がシンと静寂に包まれた。
「雑魚だと?何様だお前。素人がプロの世界にのこのこ上がりやがって、死にたいなら殺してやろうか」
黒豹のバルモスが牙を剥き喉を鳴らす。
「まずは邪魔者から消えて貰いましょう、折角の闘いに水を差されるのは気分に良くないです」
ユラリと立ち上がり氷柱を無尽に従え、語気を荒げるジンライ。
「ウホ!ウフォ!」
コルサクはドラミングしてキッシュを威嚇した。
「うるせー奴らだな、いいからかかって来いよ」
キッシュは組んでいた腕を解くと、腕と手を伸ばして4本の指で来いと更に挑発を続けた。最初に動いたのはコルサク、キッシュに突進して体当たりをする。
ズシーン!
重たい砂袋が高層ビルから落ちて来た様な、肚に響く低音が会場に弾ける。
「口程にも無い、雑魚が誰か分かったかな。自分の愚かさを死んで後悔しろ」
バルモスがキッシュの死を確信したが、キッシュ側に近い観客席から、どよめきが上がり異変に気付いたジンライが回り込むと、そこには微動だにしないユキヒョウの姿があった。
「間違い無く、コイツは雑魚だな」
キッシュは高く飛び上がると、空中で回転しカカト落としをコルサクに見舞い、一撃で沈黙させた。あまりの出来事に固唾を飲み、静かにしていた観客から歓声が上がる。
「馬鹿な」
ジンライは土魔法でゴーレムを作りだし、ゴーレムを前衛に立たせながら、水魔法のアイシクルバレットで、キッシュの首を狙うが一歩一歩、ゆっくり近づいてくるユキヒョウ。前衛のゴーレムは盾役にならず足止めにもならない、キッシュに恐れをなし、ジンライはギブアップした。
「ははは、雑魚は確かにアイツらだ!お前と俺で勝負を着けよう」
バルモスが唸り声を上げると、ジグザグに走り距離を縮め、キッシュとの間合いを見極めている。キッシュはバルモスの高速移動を目で追い、不敵に笑いながら腕を組む。バルモスが背後から仕掛ける、鋭利な爪でキッシュに襲いかかるが、既の所で躱される。距離を取り直し、もう一度アタックを試みるバルモスだが、キッシュには攻撃が届かない。
「クソっ!何故当たらない」
「そろそろ勝負を始めていいか?」
キッシュの言葉に激昂したバルモスが真っ向勝負を挑む。激しい打ち合いになり拳の乱打乱打乱打。ボクシングの世界タイトルマッチを見ている、感覚に陥る程の緊張感ある熱戦。拳のぶつかり合う音が場内に響き渡り、闘いの激しさを物語っている。
「これでどうだ」
黒豹は身体を空中で捻り旋風脚をキッシュに見舞う、モロに顔面に蹴りを浴びてしまったが、攻撃を受けた反動を使いキッシュもカウンターで応戦した。
「何だ何だ!そんなもんか?王者の力は」
「ここからが本気だ」
バルモスは足払いでキッシュの態勢を崩すとマウントポジションから打撃を与える。キッシュは上手く打撃を防ぎながら、身体を右へ左へ捩りマウントを外した。2人の豹の決勝が始まって五分位経った時、見ていた観客の一部が疲れてしまい席に座り始めた。手に汗握る攻防は見ているだけで疲れてしまう、ライブ感がそれを更に加速させる。試合が始まって15分程経つ頃合いで決着が着いた。キッシュのフィニッシュブローが決まりキッシュの勝利となった。




