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あの不思議の答え

アポロンを出発して4日が経った、途中アポロンの衛星都市グラハムに立ち寄り物資を補給する。まだまだ暑いが馬車の屋根は快適で涼しい、車との違いは柔らかいクッションが無い事と空調が無い事、後はゴツゴツした路面が容赦無くお尻を痛めつけるくらいだ。表裏の世界で大きな出来事も無く、ポセイドンへの旅は順調に進んでいた。


「そろそろ交代しましょう」


メドラウトが馬車の荷台から降りて鈴木を手招きする。鈴木はキッシュとアンナに代わり、メドラウトと馬車の護衛についた。


「お二人とも宜しくお願いしますわ」


御者を出来るのがリーゼしかいない為、二人づつ交代で周辺の警戒にあたる。この4日間で魔物と山賊からの襲撃が何度となく繰り返され、それ故に鈴木はこの馬車システムの謎を解き明かす事に成功した。と言うのも昔遊んだゲームに控えのメンバーが、馬車に乗って経験値が貰える意味が分からなかった。戦ってもいない者がレベルが上がるのが納得出来なかったのだが、現実は馬車に乗っている物資やら装備品を狙ってくる輩が多い為、体感では表で戦うメンバーよりも戦闘している様に感じる。


「確かにこれならレベルアップするな」


「リーダー、何か言いました?」


「何でも無い」


鈴木は警戒しつつ金剛鋼の兜を被り、涼みながら行軍していると。


「リーダー」


「あげないし、売らないよ」


メドラウトにアポロンを出てからずっと、金剛鋼の鎧と兜を譲って欲しいとお願いされ続けているが、強い意志を持ってNOと答えている。


「ここで一息吐きましょう」


リーゼの指示で木陰に入ると強い日差しから隠れられたので風が少し涼しく感じる。二頭の馬に水を与えメンバー全員の体調を確認した。


「ありがとうございます、大丈夫ですよ」


アンナは少し日焼けして顔が赤みを帯びているが、問題無さそうだ。アンナは馬車内で日焼け止めを塗っていた。キッシュは奧の方でグッタリしている、毛皮がある為、暑さに人一倍弱い。だが鈴木には秘策があった。


「キッシュ」


「?」


「これを使ってくれ」


鈴木が取り出したのは衝動買いした、3枚の冷たい布。属性付与されずっと冷たさを持続している。


「これ...冷たくて気持ちいい」


「だろ、絶対役立つと思って買っておいたんだ」


アンナとリーゼからは乾いた視線を貰ったが、キッシュからは有り難がられた。


「リーゼ、御者ありがとう」


「構いませんわ、それよりフレイとフレイヤの体温を下げて頂けます?暑そうにしてますわ」


フレイとフレイヤとは二頭の馬の名前だ、あの重い荷物(金剛鋼の鎧)を運んでくれる大事な大事な二頭なので、鈴木は丁寧に二頭の股を冷やして熱中症対策を講じる。メドラウトには兜を貸してやればいいだろう、兜を被って何か色々叫んでいるが楽しんで貰えて本望だ。キッシュが少し危険だが安静に身体を冷やしていれば、問題無い事を確認し休憩を切り上げ出発する。4日目の夕暮れを迎えポセイドンの衛星都市 ルミカに到着したのは夜だった。


「やっとルミカに到着しましたね」


街に到着すると馬車から御者役のリーゼ以外が降りて歩く。長旅で疲れやら足がパンパンやらで、早く宿に泊まりたいとメンバー総出で宿屋を探す。


「あそこにありますよ」


メドラウトが指刺すが。


「あそこは馬繋ぎが無いから泊まれませんわ」


リーゼが透かさず却下して、違う宿屋を探す事になった。郊外にある寂れた宿屋に宿泊する事を決めた黎明の旅人のメンバー。アンナは宿泊の手配を、キッシュとメドラウトは荷物を馬車から下ろし、リーゼは馬からハーネスを外すと、フレイとフレイヤを馬繋ぎに連れて行った。鈴木は馬車に盗難防止用のネットをセットして、宿屋へと向かった。


「いらっしゃい、素泊まり2部屋で銀貨三枚だ」


アンナが宿屋の店主に銀貨を支払っていた。男女に分かれて各部屋に荷物を置くと一息吐く。属性付与は部屋にされていない為、少し日中の残暑がこもっている。二階で少し暑いが窓を開けると涼しい風が入って来る為、寝る分には大丈夫そうだ。鈴木はベッドに腰掛けると長旅による疲れで動きたく、無くなってしまった。


「飯行こうぜ!」


「賛成ー」


この二人は長旅を感じさせない、エネルギッシュな行動力を見せてくる。鈴木は食欲よりも休みたい気持ちだったが、キッシュのしつこいお誘いに根負けして、疲労した体に鞭打ち、外食する為に宿屋を出た。女性陣もどうやら一緒に行く様だ。


郊外で静かな夜道を歩くと市街地が見えて来た。


「あっちら辺は賑やかだな」


「マーケットがあって食べ物屋の屋台が沢山出てるから行きましょう」


キッシュとメドラウトを先頭に、アンナとリーゼそして鈴木の順番で列になり、夜中に開かれる食べ物屋を見て周る。


「見た事無いものばかりですね」


「あれはウニだな、生で食べると最高に美味しいんだ」


「このフルーツは?」


「メロンと言って、とても甘い果物ですのよ」


王族は色々なものを食べているのだろう、メドラウトとアンナに色々並んでいる食材の案内をしてあげている。海が近い事もあって海産物が豊富で海路での流通が盛んなようだ。ネットリと湿度が高いものの露天商達の活気と熱気に暑さを忘れる鈴木であった。

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